大阪市都島区にて数多くの福祉施設を運営している社会福祉法人都島友の会ひがみや児童センターが、日本保育協会第18回保育実践研究優秀賞を受賞しました。

ひがみや児童センター及びこども発達サポートステーションそれいゆでの保育・療育や連携活動を「都島友の会の療育 〜すべての子どもたちが かけがえのない存在〜」として報告しました。

幼保連携の先駆法人とも言われる大阪市の社会福祉法人都島友の会(渡久地歌子理事長)が、「療育と保育」の新たな実践を進めている。療育施設と認定こども園を隣り合わせに造り、ドア一つ開けて連携できる体制を整えて5年。その実践研究は今春、日本保育協会の優秀賞にも輝いた。発達障害のこどもたちが増える中、保育現場に療育機能を求める声は強い。都島友の会の実践は、少子化での経営の新基軸として論じられる「保育の多角化」にも一石を投じそうだ。

ドア一つで行き来できるのは、同市都島区の「幼保連携型認定こども園ひがみや児童センター」(瓜うり坂容子園長、定員210人)と「児童発達支援センター・こども発達サポートステーションそれいゆ」(櫻井雅子施設長、定員30人)。(以下省略)

https://fukushishimbun.com/series07/35368

両園の関係や連携事例等は上記リンク先に詳しく記載されています。両施設の職員が相互に連携したり、一部の時間帯は「ひがみや」から「それいゆ」に移動して療育を行う事例等が紹介されています。

両園の建物は一体化しています。下記グーグルストリートビュー画像の手前側がひがみや児童センター、奥側がこども発達サポートステーションそれいゆです。

大阪市内で保育所等を利用していると、両園を運営している「都島友の会」という名前は時折耳にします。ただ、具体的にどういった保育を行っているかまでは把握していませんでした。

療育を必要とする保護者や児童にとって、「保育と療育の連携」は非常に心強いです。

我が家がお世話になっている保育園にも療育へ通っていた園児(現在は卒園)がいたのですが、特定曜日は保育園を早めに退園して別の場所にある療育へ通っていました。保護者の負担は非常に大きい様子でした。

保育園と療育の間でどういった情報のやり取りが行われていたかは定かではありません。一般論としては文章もしくは電話、ないしは保護者の口伝えが専らだったでしょう。療育施設の職員は保育園での過ごし方を見たり、その逆は無かったと思います。

しかし、同一法人が保育と療育を一体的に運営する事により、療育を必要とする子供と朝から夕方まで、入園から卒園まで一貫して接する事が出来ます。スタッフの相互往来等も容易です。

福祉新聞も取り上げられている通り、保育所等に通っていながらも療育が必要かも知れない児童や保護者に「同じ建物にいる療育の先生と話してみませんか?」と声を掛ける事も可能です。保育士が判断するのは難しくても、療育の専門家と一緒に判断できます。保護者も「ではお迎えのついでに」と応じやすいです。

各種事例を報告

報告内容及び講評等は同協会ウェブサイト(第18回保育実践研究 報告集(令和6年3月)22ページ~)に掲載されています。

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当初は大阪市が運営する「都島東保育園(現ひがみや)」と同法人が運営する「都島こども園(現それいゆ)」がドッキングして建設されました。所管部署や組織等は全く別でしたが、それぞれの職員が創意工夫を行う事によって交流を積み重ねてきました。現在はほぼ一体化され、共に都島友の会によって運営されています。

研究報告には特別支援が必要な子供の人数が記載されています。年によって変動はありますが、ここ7年間では在園児の約4.5%に特別支援が必要でした。約20人に1人の割合です。小学校で特別支援学級に属している児童の割合と大きな違いはありません。

ひがみやとそれいゆの連携により、様々な支援に繋がった事例も紹介されています。

(1)家庭での様子を心配した保護者からの相談を受けた保育士が、それいゆと共に対応した。
(2)外国出身の児童に区役所への相談を勧めた後、並行通園で療育を受ける様になった。
(3)成長を心配した保護者がひがみやへ相談し、児童に合った対応が出来る様になった。
(4)園児の様子を心配した保育士がそれいゆに相談し、何度もエピソードを保護者へ伝えて信頼関係を構築し、区役所を通じて発達検査や療育に繋がった。

保育園児の保護者という立場から、一足飛びに発達検査や療育へ繋がるのは難しいです。子供の様子は問題は無いのか、段階に応じた相談先が分からない、療育施設がどこにあるか分からない等、ハードルが本当に高いです。

私も同様の経験があります。思い切って区役所で相談した事もありましたが、門前払いの様な対応をされて憤慨した事を今でも覚えています。

しかし、毎朝夕に保護者と話をし、日中の長い時間に渡って児童と接している保育士であれば、子供や保護者の様子や考え方も理解しています。どういった対応を行うのが望ましいか、そして保護者にどうやって伝えて行動に移ってお貰うのかがベストかを慎重に見極められます。

そして隣接した場所に療育施設があれば、気軽に足を伸ばしたり相談したりできます。保護者にとっても保育士によっても非常に心強いでしょう。

ひがみやは認定こども園なので、入所するには大阪市による入所調整を経る必要があります。ここ数年は一斉入所での0歳児の第1希望倍率が1.5倍前後、1歳児は2.6倍~0.67倍となっています。ひがみやへの入所には一定以上の点数が必要となりますが、療育施設へ通園しながらフルタイムで勤務するのは難しいのではないかと感じます。

反対にそれいゆに入園した後にひがみやへ転園した事例も紹介されています。研究報告には「同法人内に【それいゆ】がある為、他施設から入園するよりも同法人内だからこそ入園しやすいことなど様々なメリットがある」との記載があります。保護者・園児・職員にとってもメリットが大きい転園措置です。

大阪市内で保育と療育の両方を必要とする(もしくはその可能性がある)園児や保護者にとって、両園への通園は有力な選択肢となります。気になる方は研究報告に目を通した上(数分で読めます)、両園へご相談下さい。