5月28日に大阪府が教職員の懲戒処分を発表しました。

教職員の処分について
https://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/fumin/o180110/prs_51036.html

泉大津市立小学校の教諭は児童への体罰によって停職1月、八尾高校教諭は窃盗による現行犯逮捕によって懲戒免職、高校教諭は女子生徒に対する性的・私的なやりとり等によって停職6月の処分を受けました。体罰・窃盗・私的交流という、教職員の懲戒処分事由として頻繁に見掛ける種類です。

その一方で前代未聞の懲戒事由も公表されました。和泉市の義務教育学校に勤務する教頭が生徒会役員演説での生徒の発言に激高して生徒及びその保護者を糾弾したとして、停職3月の懲戒処分を受けました。


https://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/fumin/o180110/prs_51036.html

「義務教育学校」とは聞き慣れない言葉です。これ小学校から中学校までの義務教育を一貫して行う学校です。つまり「小中一貫校」です。

和泉市に義務教育学校は一校しかありません。南松尾はつが野学園です。報道等から一連の経緯を時系列でまとめました。

年月日出来事
2023年10月5日同学校の後期課程(中学校に相当)での生徒会役員演説にて、立候補者(8年生/中学2年生)が無断で教頭のしぐさやしゃべり方を真似た内容を盛り込んで演説した。
10月6日激怒した教頭が生徒を廊下等に呼び出した(計3回)。「(怒りで)寝られなかった」「この件で(自分が)休んだら休業損害を払ってもらう」「鑑別所に行く場合もある。高校に行けなくなる場合もある」等と糾弾した。
生徒は涙ながらに何度も謝罪し、教頭は一度「許したる」と述べた。が、教頭は生徒がその演説で他の教員を揶揄する様な発言をした事を思い出し、再び生徒を呼び出してその教員に謝罪させた。
別件で来校していた生徒の母親が教頭に演説の感想を聞いた際に「不愉快でした」と述べた。母親も一緒に演説内容を考えた事を知り、「大人がすることではない」「休業損害を請求することもある。訴えることもある。そうなったら結局お金で解決することになったりする」等と怒りをぶつけた。
男子生徒は役員に当選したが、教頭は男子生徒を役員から退かせようと考えた。校長が出張中に生徒会役員として当選した事を伝える結果表を独断で剥がし、生徒の名前を消して張り替えた。更に終礼で教職員に対して、男子生徒が生徒会から退く旨を周知しました。
10月7日?ショックを受けた生徒は学校を1日欠席した。「教頭がいるので学校に行くのが怖い」などと話している。
後日母親が教頭から受けた言動をまとめた手紙を校長に渡した。驚いた校長と前副校長が母親から直接話を聞き取り、教頭の一連の言動が発覚した。
大阪府教委の聞き取りに対し、教頭は「私への侮辱だと思い、必要以上に叱責をしてしまった」「(保護者に対しては)大人がすることではないと思い、怒りがこみ上げ、冷静な対処ができなかった」等と話した。
教頭は現職のまま自宅待機、和泉市教育センターで勤務している。
2024年4日副校長・教頭が他校へ離任、代わって副校長・教頭2名が着任した。
2024年5月28日一連の行為により教頭が停職3月、校長及び前副校長が訓告処分を受けた。

事の発端は当該男子生徒が行った演説でした。中学校での演説は真面目な内容では無く、面白おかしく笑いを取る内容の方が聴衆に好まれやすいです。特に吉本等のお笑い文化が根付いた大阪では尚更でしょう。皆がよく知っている先生の特徴的な仕草等をモノマネすれば、笑いが取れると考えたのは自然です。

しかし、その内容によっては真似された方は不快に思う事もあります。具体的な演説内容が定かでは無いので、教頭が不快に感じたのも致し方ないかは判断できません。ただ、生徒は演説で他の教員を揶揄する様な発言もしていた事から、教頭に対しても同趣旨の真似を行った可能性が拭いきれません。

ただ、演説を聴いていた教頭は演説後に注意等を行いませんでした。生徒を呼び出したのは校長が出張していた翌日でした。計3度も呼び出し、生徒に対して金銭的要求や進路を閉ざす様な強い発言を行いました。

自身の演説がこうした事態を引き起こすとは、生徒は全く考えていなかったでしょう。笑いが取れるという軽い気持ちだったと推測されます。激怒した教頭によって未来が無くなりかけ、生徒は号泣して謝罪しました。

たまたま別件で来校した母親が一緒に演説内容を作成したと知り、教頭は同じ様に糾弾しました。教頭が生徒や保護者に対して金銭的要求を示唆した行為は、恐喝に相当する行為です。そもそも教員の休業損害を保護者が負担する話は全く聞いた事がありません。

更に教頭は校長不在の間に独断で投票結果を書き換え、生徒を役員から辞めさせました。生徒による投票結果が学校によって改竄された事に対して、他の生徒は強い不信感を有したでしょう。演説内容や生徒の異変から、教頭が激怒しているとの噂が流れたと容易に想像できます。

保護者は怒ります。当然です。教頭の言動等をまとめた手紙を校長に渡し、口頭でも事情を説明しました。一連の経緯は和泉市教委や大阪府教委にも伝わり、教頭は自宅待機となりました。

同校は2017年に開校した、泉州地域では初となる義務教育学校です。新しい学校なので、特に管理職には力量のある教員が集められた筈です。にも関わらずこうした「体罰」が発生したショックは少なくありません。

2024年4月人事異動では同校の副校長・教頭が他校へ離任し、代わって副校長・教頭2名が着任しました。管理職4名(校長・副校長・教頭2名)の内、何と3人が代わりました。一連の行為への対応等が問題視され、人事を一新したかったのでしょう。

まだ未熟な生徒が他人の言動を揶揄するかの様な趣旨で真似たりするのは、決して珍しい事ではありません。我が家の子供も特徴を真似たり、あだ名で呼んだりするそうです。子供には「先生の前ではやめなさい。相手や周囲が不快に思う(思いかねない)行為はやめなさい。」と伝えています。

生徒会役員に立候補する生徒ですから、普段の素行等に問題がある生徒では無いでしょう。教頭は指導主事等に相談し、複数の教員で「皆の前で真似されて、良い気分はしなかった。仲間内でやりあうのとは違う、あなたはどう思いますか?」等と冷静に指導等を行えば済む話でした。