毎月1回ほどの頻度で子供が学校から「大阪市PTAだより」を持ち帰ってきます。市PTAや学校園PTAの様子等が4ページに渡って掲載されています。
日頃は簡単に目を通して古紙回収箱に投げ入れてしまうのですが、2024年1月号には目を留めた記事がありました。築港中学校(港区)PTA広報委員が寄せた文章です。
通っている中学校が無くなるかもしれない。生徒数が減り、学校の統廃合が決まり、これまで伸び伸びと学んできた学校が無くなり、改修工事したばかりの理科室も使われなくなる。
一方、地下鉄の4、5駅先の地域では、タワーマンションができ、子どもが急に増え、教室にぎゅうぎゅうに詰め込まれ、校舎を建て増している。減ったら壊し、増えたら作る。いつまでこれを繰り返すのでしょうか?(中略)
無くなるかもしれない全校生徒60人弱の大阪市一少人数な中学校は、今日も伸び伸び子どもたちが学んでいます。
築港中学校は大阪市の湾岸エリアの一角にあります。学区内には海遊館があります。
令和5年度学校現況調査によると、同中学校の全校生徒はわずか58人です。PTA新聞にある通り、大阪市で最も小さな中学校となっています。
背景には様々な要因が指摘されています。主な要因は「少子化(港区に中学生は40年で1/3に)」「港区西部エリアの生徒減(40年で1/5に)」「学校選択制による生徒流出」が指摘されています。
大阪市の多くの地域が抱えている悩みが「子供の偏在」でしょう。PTA新聞にある通り、築港中学校の最寄駅たる地下鉄大阪港駅から4駅先にある阿波座駅周辺にはタワーマンションが乱立しています。
こうした地域の小中学校は深刻な過密化が生じています。全校生徒が約1500人に達している堀江小学校は、2024年4月から単一小学校のままで西学区と東学区に分割されます。
円滑な学校教育より地域住民の声を優先した極めて不合理な制度なので、数年中に見直さざるを得ないと推測しています。
一方で子育て世帯に選択されにくいエリアの少子化は深刻です。出生数が年4-5%で減少している区もあります。更に同一区内でも利便性が高いエリアと低いエリアで明確な差が生じています。
築港中学校区は大阪市内中心部へ通勤しやすいエリアです。が、湾岸沿いの工業地域に近く、更には南海トラフ巨大地震による津波への警戒感が必要な地域です。子育て世帯が積極的に選択しづらいエリアです。
https://www.city.osaka.lg.jp/minato/cmsfiles/contents/0000605/605779/gakkousaihensetumeikaihonpen8-19.pdf
実は港区は大阪市内で保育所等へ入所するのが最も難しい区の一つです。実は港区東部の出生数に大きな変動はなく、むしろ保育を必要とする世帯が増加し、保育所等の不足感が深刻です。
少子化に囚われる余り、保育所等の新設が後手後手となってしまっています。
更に中学校ならではの深刻な問題もあります。「部活動」です。団体競技も含んだ様々な部活動を実施するには、一定規模の生徒数が必要です。全校生徒60人では団体競技を行うのは困難です。
男女比の偏りもあります。築港中学校の男女比は概ね2:1です。特に2年生の女子生徒は4人しかいません。
こうした中学校に子供を進学させるのは躊躇います。たとえ運河を越えてでも、隣接する港中学校へ進学させる動きが生じるのは当然です。
今年4月に港中学校へ入学する新入生の内、約1/3が校区外から通学します。
https://www.city.osaka.lg.jp/minato/cmsfiles/contents/0000613/613609/HP.pdf
また、港南中学校や市岡中学校への校区外進学者も多いです。決して少なくない人数が築港中学校区から通学するのでしょう。生徒数減が更なる生徒数減を引き起こしています。
子育て世帯の偏在及び学校選択制により、大阪市内の小中学校は二極化が進んでいます。規模が大きな学校はより大規模もしくは維持、そして規模が小さな学校は更に小さくなっていきます。
その先に待っているのは「統廃合」です。学校選択制は「学校の魅力を高める」という趣旨で始まりましたが、今や制度に内在された「統廃合の促進」という側面が色濃くなっています。
築港中学校は令和9年度に港中学校と統合する見通しです。
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