昨年9月、静岡県牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」にて園児が園バス内に置き去りにされて死亡しました。
【ニュース・10/3追記】川崎幼稚園(静岡県牧之原市)で3歳園児が死亡 園バス内放置で熱中症か

こうした事件を受け、各自治体では置き去り事案の報告・集計・指導等を強化しています。大阪府内の保育施設にて発生・報告された置き去り事案が公表されています。

置き去り事案について(認定こども園(幼保連携型、保育所型)、保育所、認可外保育施設)
https://www.pref.osaka.lg.jp/kosodateshien2/neglect_ninh/index.html

直近3か月強の間に少なくとも9件が発生・報告されています。

事故の概要(令和4年10月以降発生分)

発生年月/施設種別/発生状況/置き去り時間

令和4年10月/保育所/公園からの帰園時に他の児童に気を取られ、人数確認が不十分になり、当該児童が置き去りとなった事案。帰園後に行方不明となっていることが判明。なお、同園の他クラスが同じ公園から帰園時に発見され、保護された。/2分

令和4年11月/保育所/死角の多い団地内の公園において、児童とともに水分補給をしている時に当該児童から目を離した間に行方不明となった事案。すぐに公園周辺を探したところ、公園から約250m離れた路上において近隣の方に保護された児童を発見。/6分

令和4年12月/認定こども園/屋上にある園庭で遊びをした後に保育室へ戻る際、職員が目視により屋上に児童がいないことを確認。全員が保育室に戻ったと思い込み、屋上の出入口付近にある靴箱間の死角にいた当該児童に気づかず、出入口を施錠し保育室に戻ったため当該児童が屋上に置き去りとなった事案。保育室に戻り当該児童がいないことに気づき、園内を探したところ屋上で発見。/10分

令和4年12月/保育所/公園から帰園するため、職員が児童に帰園準備を呼びかけた際に、当該児童を確認していたものの、帰園する時に再度確認した際、職員が当該児童がいなくなっていることに気づく。公園内を捜索していたところ、園あてに当該児童を保護した方から連絡が入り、その後に職員が児童を引き取る。/5分

令和4年12月/保育所/屋上にある園庭で遊びをした後に保育室へ戻る際、人数確認を怠り、また、その時当該児童が屋上のトイレに行っていることを失念し、出入口を施錠し保育室に戻ったことから、当該児童が屋上に置き去りになった事案。その後、子どもの泣く声が聞こえたため、職員が確認したところ屋上で児童を発見。/10分

令和4年12月/保育所/公園からの帰園時に他の児童に気を取られ、人数確認が不十分になり、当該児童が置き去りとなった事案。近隣の住民に保護された後、連絡を受け判明。/ 12分

令和4年12月/認可外保育施設/公園から帰園する際に職員が点呼を行い、当該児童を確認したが、その後、人数を確認することなく帰園した。帰園後に職員が当該児童が行方不明であることに気づき、職員らが捜索したところ、公園内にて、作業していた方に保護されていた児童を発見。/14分

令和4年12月/保育所/園児らを保育室から別の棟の保育室へ移動させる際、職員が人数確認をせず外側からドアが開かないようにするための棒を差し込み、移動したことから、当該児童が、移動前の保育室に置き去りとなった事案。子どもの泣く声が聞こえたため、他の保護者が移動前の保育室の戸締り用の棒を外し、確認したところ保育室内で児童を発見。/10分

令和5年1月/認定こども園/コロナウイルス感染防止対策として、登園した3歳から5歳児は2階の保育室に荷物を置いた後、同階の合同保育室(3名の職員が配置)へ向かうこととなっていたところ、当該児童が、登園が多い時間帯で電気錠が開錠され、かつ安全推進員の配置されていなかった門扉より外出した事案。当該児童の兄妹を受け入れた職員が当該児童に挨拶しようと合同保育室へ行ったが、当該児童がいないことに気づき、探していたところ、近隣の住民から引き渡された警察から連絡を受けたもの。/32分

https://www.pref.osaka.lg.jp/kosodateshien2/neglect_ninh/index.htmlより編集

いずれも健康被害はありませんでした。しかしながら結果論に過ぎません。中には32分も所在を確認できなかった事案もありました。

これらに事案に共通する点を大阪府が指摘しています。「他の児童に気を取られた」「公園からの帰園時」「死角のある場所」です。

主に共通する事項について
・他の児童に気を取られた際などに人数確認が不十分になり置き去りが発生している。
・公園から園に帰る時など、場面転換時に人数確認が不十分となっている。
・死角のある所で、少し目を離した際に児童が見当たらなくなっている。

公園からの帰園時の見落としは本当に多いです。半分以上の9件中5件を占めています。公園での外遊びは、見落としやすい要素を全て含んでいます。園内に園庭がない保育所等では、近隣の児童公園等を利用する頻度が高いでしょう。

公園で置き去りとなった場合の問題点は他にもあります。園児を発見したのは、いずれも園児を公園へ連れて行った職員以外の人間でした。たまたま居合わせた他クラスの職員が発見したのが1件、そして残り4件は近隣住民等が発見・保護しています。

すなわち、「もしも置き去り事案が発生した場合、当初付き添った職員だけで発見するのは極めて困難」と言えます。そもそも公園等での外遊びに付き添う職員数に余裕がないから置き去りが発生しやすいのであり、目の前にいる多数の園児への対応も必要です。こうした事態が生じた際、公園にいる職員で即座に対応するのは不可能です。公園等での外遊びに付き添う職員数が不足しています。

2件は屋上園庭での置き去りです。園外と違って、安心感があったのでしょう。保育室へ戻る際に人数確認等を怠り、トイレや物陰等に置き去りにしてしまいました。もしも柵によじ登って助けを求めたりしたら、そのまま転落する危険がありました。

屋上園庭への出入口は普段は施錠している筈です。いわば「密室」です。出入りする際には人数確認及び見回りを徹底する必要があるでしょう。

保育室から別の保育室への移動も屋上園庭と類似しています。これも人数確認や保育室内の確認を怠っていました。

合同保育での見落としは保護者にも責任の一端があるかもしれません。この園では園児が少ない時間帯は本来の保育室に荷物を置き、異年齢の児童をまとめて保育している部屋へ移動する運用が為されていました(我が家がお世話になっている保育所も同様の運用です)。

「当該児童の兄妹を受け入れた」とあるので、下の子(0-2歳児)も同時に登園したのでしょう。子供が3-5歳ともなると保護者も気を緩めてしまいます。0-2歳児の登園準備(保育室での荷物置きや検温・オムツ交換等)に専念し、上の子は「合同保育室に1人で行ってね」と声を掛けた光景が想像できます。

しかし上の子は合同保育室へ向かわず、たまたま開錠されていた門扉から1人で外出してしまいました。たとえこの光景を他の保護者が目撃しても、「何か忘れ物を取りに行ったのだろう」と受け止めるのが専らでしょう。話し掛けて様子を聞く事まではしません。

気付いたのは職員でした。下の子を受け入れた(0-2歳児用の合同保育室?)がいるのに、何故か上の子がいません。普段は同時に登園している筈です。職員室に欠席連絡の有無等を確認しても、その旨の連絡はありません。すぐに保護者に連絡し、登園していた事実を把握した筈です。

こうした手続を踏むと、どうしても出足は遅れます。32分間も所在が掴めず、最終的には近隣住民から連絡を受けた警察から引き渡されました。

行うべきだった対応としては、保護者が確実に保育士へ子供を引き渡し、そして登園する保護者が門扉の施錠を厳格に行う事でしょう。我が家がお世話になっている保育所でも、門扉に「しっかり施錠して下さい」「子供が1人で出入りしない様にして下さい」「すぐに施錠して下さい」という張り紙が日に日に増えています。

上記事案はいずれも大事に至りませんでした。が、この結果はたまたまです。特に大阪府内はどのエリアで自動車交通量が多く、公園等で見失った後に交通事故に巻き込まれる危険は非常に高かったです。真夏の屋上園庭で見失ったら、熱中症となってしまいます。

ここ数日、様々な子育て支援策が公表されています。ただ、子育て世帯への経済的な支援ではなく、保育や教育の場への支援(特に人的拡充)が必要ではないでしょうか。