緊急事態宣言中に独自のオンライン授業を導入していた大阪市立の小・中学校に対し、市教育委員会が「50時間程度」の授業時間を補うよう通知していたことがわかりました。

 大阪市立の小中学校では、緊急事態宣言が発令された4月26日以降、自宅でのオンライン授業と学校での対面授業を組み合わせた独自の対応を実施し、24日から通常授業を再開しています。

 これについて大阪市教育委員会は24日、土曜授業を行うことや、1週間あたりの授業時間を1時間追加することなどの方法で、できる限り授業時間数を補うよう各学校に通知していたことが新たにわかりました。

 市教委によりますと、今回のオンライン授業で最大「50時間程度」の授業時間を補う必要があるということです。

 市教委は「1年間で決められた教育課程が終わるように、各学校で計画を見直し、対応してほしい」としています。

https://www.asahi.co.jp/webnews/pages/abc_10826.html

学年によって違いはありますが、通常時の1日当たりの授業時数は5時間前後です。50時間は概ね2週間程度の授業日数に相当します。

オンライン授業が実施されたのは4月26日から28日及び30日の4日間、5月6日から7日の2日間、5月10日から14日の5日間、5月17日から21日の5日間、合計16日間でした。

この間、学校では毎日2時間の授業(学活が中心?)が行われていました。1日当たり3時間の授業時数が欠けてしまいました。3時間x16日間=48時間となります。概ね50時間となります。

なお、ここでは松井市長が何度も文科省へ問い合わせた「オンライン授業の時数算入」は含んでいません。5月25日の記者会見では、松井市長と市教委担当者の認識の違いが浮き彫りになりました。仮に算入できたとしても、十分な授業が行えたとは言い難いでしょう(特に小学校)。

最大50時間程度というのは、6時間授業が多い学年(小学校5~6年生や中学生)を念頭に置いているのでしょう。

50時間を補うのは決して容易ではありません。6月から2月末までの間に授業が行われるのは7か月・32週間です。

毎月1回の土曜授業及び週1時間の授業を追加する事により、ようやく50時間を補える計算です。たかが50時間、されど50時間です。

これだけの授業時間が増えてしまうと、子供・家庭・教職員には大きな負担がのし掛かります。復習がままならない児童生徒、土曜日の予定変更を余儀なくされる家庭、教材研究や休暇に充てたい時間を削られる教職員、仕方が無いとは言え酷な話です。

「夏期休業を短縮して授業時間を確保する」という案も検討された筈です。

ただ、この案は夏期休業中に実施を予定している様々な大会や家族旅行等に及ぼす影響が余りに大きいです。大阪市立学校の為だけに、大阪府全体のスケジュール(例えば府大会)を変更するわけにはいかないでしょう。

また、一部には朝から通常授業を実施した学校もあります。メディアで何度も取り上げられたのは、大国小学校・住吉川小学校・木川南小学校です。

本校は約9割が朝から登校しており、今後は通常の授業を進めていきたいと考えています。オンラインで参加していただく場合は、どんな制約が生まれてくるのかを見極めながら、子どもたちの学びをとめないことを第一に考えていきます。

どうか、ご理解、ご協力をお願いいたします。

【お知らせ】 2021-05-10 17:20 up!

http://swa.city-osaka.ed.jp/swas/index.php?id=e611303

 住之江区の市立住吉川小は通常の対面授業をした。福崎真広校長(60)は「児童が端末操作に慣れていないことや、生活リズムを突然変えることへの懸念があった」と話す。感染リスクが高い体育や音楽の授業はやめ、端末操作の練習に充てる。慣れてから、オンラインに切り替えるという。

https://digital.asahi.com/articles/ASP4W368LP4VPTIL012.html

 久保校長の木川南小学校は独自の運用を続けてきた。緊急事態宣言が出る2日前の4月23日、「通常通りの時間で集団登校をし、オンライン学習の練習もしながら午前に4時間の学習をし、給食後の午後2時ごろ帰宅」との方針を決めた。市教委の方針では、預かりを希望するか否かで登校時間が異なるため集団登校ができなくなり「交通安全や不審者へのリスクが高まる」と考えたからだ。

 運用を始めた4月26日にアンケートしたところ、回答した保護者128人の約9割が「いつも通りの集団登校」に「賛成」と答えた。「家庭でのオンライン学習が始まったらお子さんは1人で学習できるか」との問いには「できない」が約51%、「わからない」が約24%だった。

https://digital.asahi.com/articles/ASP5N6HGBP5NPTIL00F.html

一律で夏期休業を延長してしまうと、通常授業を行った学校がいわば「手持ち無沙汰」となってしまいます。授業速度を遅らせるにも限度があります。

こうした事情を踏まえ、平日や土曜に追加授業を実施する事となったのでしょう。

そもそも大阪市が「オンライン授業」を実施した切っ掛けは、松井市長が「子供たちの学ぶ権利もあるので、授業はオンラインで実施する」と要請したからとされています。

宣言時の学ぶ権利保障 大阪市教委がオンライン授業
https://www.nnn.co.jp/dainichi/news/210423/20210423023.html

しかし、学ぶ権利は保障されたのでしょうか。大阪市のみが16日間で約50時間の授業時間数が消滅し、今後1年間を掛けて補填せざるを得なくなりました。

この間に一部の児童生徒の学習・生活リズムは大いに乱れたでしょう。元に戻るには一定の時間が必要です。

家庭に掛かった負担も極めて大きかったです。我が家も生活リズムが著しく狂い、仕事に打ち込める時間や睡眠時間等にも影響しました。大阪市は何らかの補償等を行ってくれるのでしょうか?

今後の学校生活では「行事の精選」も予定されています。「精選」とは聞こえは良い物の、実態は「削減」です。授業時間数を確保する為に、子供が楽しみにしている行事を削る選択肢もあると市教委は発言しています。

「子供達を新型コロナウイルスの感染拡大から守り、命を守る」という目的は極めて重要です。この期間中は確かに校内感染の発生は更に減少しました。

されど、準備不足のオンライン授業の強行実施により、子供が先生から学ぶ時間が大いに失われました。

政策判断の後始末に追われるのは、児童生徒・家庭・学校です。

奇しくも明日5月27日には全国学力テストが実施されます。全国最低水準に低迷している大阪市ですが、残念ながら今年は更に落ち込んでしまうでしょう。政令市中、ワースト1位になるのが濃厚です。

この結果に対して、市長が「学校の指導がまずかった、学校改革を進める。」と発言する未来を予感しています。責任転嫁ですね。