京都市南区の認可保育所「唐橋保育園」が保育士を水増しして委託費等を不正受給していたとして、前代未聞の「1年間の園児募集停止」処分が行われました。

委託費不正受給の認可保育園を1年間新規利用者受け入れ停止 京都市が行政処分

京都市は30日、南区の認可保育所「唐橋保育園」が委託費や助成金を不正に受け取っていたとして、2021年1月から1年間、新規利用者の受け入れを停止する行政処分を行ったと発表した。市は不正請求額に加算金を上乗せした約455万円の返還も求める。

 唐橋保育園は宗教法人天理教姫京分教会(同区)が運営し、1歳~5歳の園児25人が在籍する。市は不適正な運営に関する複数の通報を受け、20年2月から監査を行ってきた。

 市によると、唐橋保育園は19年5月~今年2月、保育士が必要数を満たしていなかったにもかかわらず、保育士の加配に対する国の委託費や市の助成金を不正に請求、受領していた。監査に対し、勤務実態のない保育士の派遣契約書類を提出する虚偽報告もあった。

 唐橋保育園は取材に対し、返還に応じる考えを示した上で「必要な保育士数が確保できず、市からのプレシャーもあって虚偽報告をしてしまった。不正請求をしようという意図はなかった」としている。

https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/429123

認可保育園で不正受給 行政処分

京都市内で認可保育園を運営する宗教法人が保育士の数を水増しする虚偽の報告などを行い、委託費などおよそ455万円を不正に受給していたとして、京都市は委託費などの返還を求めるとともに、新たな利用者の受け入れを1年間停止する行政処分を行いました。

処分を受けたのは、京都市南区にある認可保育園「唐橋保育園」を運営する宗教法人、天理教姫京分教会です。

市によりますと、この法人は去年9月からことし2月にかけて、実際には勤務していなかった保育士を派遣会社から派遣されていると虚偽の報告したほか、調理員の業務を兼務していた保育士を常勤の保育士として算定するなど、市が定める保育士の配置基準を満たしていないにもかかわらず、委託費や助成金あわせて445万円を不正に受給したということです。

このため市は、この宗教法人に対して委託費などの返還を求めるとともに、1年間、新たな利用者の受け入れを停止する行政処分を行いました。

天理教姫京分教会の松尾一宏代表役員は「保育士が次々に辞めていく中、基準を満たさなければならないというプレッシャーがあった一方、調理との兼務がいけないことを知らないまま報告してしまった」と話しています。

https://www3.nhk.or.jp/lnews/kyoto/20201130/2010008631.html

唐橋保育園は京都市南区唐橋琵琶町に設置されています。東寺の南西に広がる住宅街の一角にあります。数多くの仏教寺院がある京都市ですが、様々な宗派の関連施設もあります。

目を引いたのは「1歳~5歳の園児25人が在籍する」(京都新聞)という記載です。保育所としては少なすぎる在籍園児数です。

京都市ウェブサイトにある令和2年9月保育施設・事業所別児童数を調べたところ、意外な事実が浮かび上がってきました。

京都市南区にある保育所等の内、在籍園児数が定員の半分を下回っているのは唐橋保育園のみでした。

https://www.city.kyoto.lg.jp/hagukumi/cmsfiles/contents/0000227/227761/0209syonichi.pdf

同区は殆どの保育所が定員を満たしており、中には定員を越える園児が在籍している園もあります。

この地域は京都駅周辺や京都市南部に広がる工業地域へ通勤しやすく、市北部ほど地価も高くありません。子育てしている中間所得層でも住みやすい地域です(滋賀県内はより人気ですね)。

一覧表を見る限りでは保育需要は強く、決して少なくない待機児童・入所保留児童が発生しているでしょう。

しかしながら、何故か唐橋保育園だけは定員を大きく下回る園児しか在籍していません。何か理由がある、と言わざるを得ません。

水増し請求をした理由に付き、代表者は「必要な保育士数が確保できず、市からのプレシャーもあって虚偽報告をしてしまった。」と話しています。保育士採用に苦労している様子は、同園が京都市へ提出している情報公開シート(平成30年度)からもうかがえます。


https://www.city.kyoto.lg.jp/hagukumi/cmsfiles/contents/0000054/54118/2631.pdf

保育士免許を有しているのは園長・保育士の計6人しか記載されていません。園児60人に対してはギリギリの人数です。休暇や外出等を考慮すると配置基準を満たさない可能性が濃厚です。

但し園児が25人しかいなかったので、辛うじて保育を行いえたのでしょう。

しかし、実態はより深刻でした。派遣保育士や調理員を架空計上し、保育士を水増ししていました。恐らくは情報公開シートを作成した後に退職等で保育士が不足し、これを補う為に架空計上したのではないでしょうか。

同園は保育士不足と園児不足が同時に発生していました。保育士不足→園児が集まらない→保育士が集まらない→・・・という、ループに陥っていたのでしょう。

これに対して京都市は「1年間の園児募集停止」という行政処分を行いました。これに加え、刑事上の有印私文書偽造も問われかねない事態です。

同園は現時点で定員の半数未満しか園児がいません。今後は更に減少する事が予想されます。園にとっては死活問題です。

同園に限らず、今後は各地の少なくない保育所が保育士不足に加えて園児不足に陥ると予想されています。既に大阪市は来春入所を希望する0歳児申込数が約10%も減少しました。

【2021保育所等一斉入所申込分析】(1)大阪市全体/0・2-3歳児は申込1割減、幼保無償化の反動&コロナ禍が影響?

保護者目線としては「在籍している園児が極端に少ない保育所は注意する」のが重要ですね。穴場かもしれませんが、多くは何か理由がある筈です。こういう場合は周囲の口コミ情報が頼りになります。