大阪都構想に係る住民投票は11月1日が投票日です!

「大阪都構想」賛否問う住民投票が告示 投票は来月1日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201012/k10012659331000.html

この土日は街宣車からの叫びが鳴り響いていました。ローカルニュースでも真っ先に報じられていましたね。

保育と同じ、都構想と子育てが密接に関連する分野の一つは「教育」でしょう。

 9月中旬の休日。大阪市内の中学校で、市立学校の教員になるための保健体育の実技試験があった。受験生たちが水泳のクロールやマット運動をする姿に、採点者が目を凝らしていた。

 大阪市教育委員会は毎年、市立小中高校の教員を700人程度、一括採用している。赴任校は、欠員状況などで市教委が決めている。

 住民投票で都構想が可決されて大阪市が廃止されれば、4特別区に区教委ができる。松井一郎市長らは「きめ細かな教育現場態勢を作れる」と説明する。採用も特別区ごとになり、異動も特別区内に限ることを想定している。市教委は「英語の有資格者を採用試験で優遇するなど、特別区ごとに必要な人材を採用できるようになる」と説明する。

 一方、懸念も出ている。市議会の8月の教育こども委員会で、自民党のある市議は、「この区は好き」「あの区は嫌い」という感情を抱く人も少なくないことを指摘した上で、こう訴えた。「(教員採用試験の)受験者数に偏りが出るのではないか。各区の教育水準に大きな偏りが生じる恐れがある」

 市教委は、各特別区が特色をPRするなどして「募集人員の確保に努めていく」と答弁。その一方で、いずれは4特別区で協議会を作って、現在の一括採用に似た「共同採用」も検討していく考えを示した。

 この市議は言う。「この時期になっても具体的な姿が見えない。市民が都構想に賛成するか反対するかの判断材料がないのは問題だ」(以下省略)

https://digital.asahi.com/articles/ASNB75T4HN9SPTIL01D.html

学校運営や教職員に関する人事権等は「特別区」が担うとされています。

http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/34351/00358699/siryo5-5.pdf

「人事権」には採用も含まれています。特別区毎で採用し、特別区内で異動すると想定されています。

ここで一つの疑問が湧き起こりました。「大阪府の他市町村等は、どの様に小中学校の教員を採用しているのだろうか」です。

全国では原則として都道府県や政令指定都市が小中学校教員を採用し、人事異動は都道府県の各ブロック内で転勤しているケースが専らでした。

大阪府内では大阪市・堺市・大阪府に加え、豊能地区が独自に採用を行っています。

大阪府豊能地区教職員人事協議会は、大阪府豊能地区の3市2町(豊中市、池田市、箕面市、豊能町、能勢町)が平成24年(2012年)4月1日に大阪府から教職員の人事権の移譲を受けて発足した組織であり、政令指定都市以外では全国で初めてとなる市町による教員採用選考などを行っています。

https://toyono-jinjikyo.com/index.html

大阪市分割後の各特別区が独自に教員採用を行うとすると、都道府県・政令市以外で採用を行う全国2番目のケースとなり得ます。

応募の偏り、人事異動の硬直性?

各特別区に根ざした採用や人事異動が期待できる反面、不安も残ります。「応募の偏り」や「人事異動の硬直性」です。

教員志望者は4特別区やその他の自治体等の採用条件等を比較検討して願書を出願するでしょう。

4特別区の採用条件等が異なれば、出願者数に違いが生じるのは当然です。

勤務候補地も影響しそうです。現在の住居地から近い自治体を希望するのは自然でしょう。大学生(特に教員養成系)が数多く居住する地区への出願者が増えそうです。

また、大阪市内には地域毎に学力(=学力テストの点数)や世帯所得の偏りがあるのも事実です。ある地区は世帯所得や学力が高い児童が多い一方、別の地区では世帯所得や学力が低い児童が多いのは否定できません。

後者が多い地区を避け、前者が多い地区を希望する傾向が生じる恐れはあるでしょう。

区割りでは住民1人当たりの納税額(=所得額)等に偏りが生じない様に配慮されています。ただ、学力水準はそこまで配慮されていないと感じています。

これ以上に懸念されるのは「人事異動の硬直化」です。

大阪市教育委員会の令和3年度採用では、小学校400人・中学校230人が予定されています。単純に4で割ると、小学校100人・中学校60人の採用となります。

こうした小さい採用規模で、果たして各学校毎の教員配置は滞りなく行われるのでしょうか。特に各科目毎に採用者を決定している中学校は心配です。

美術や家庭と言った教員数が少ない科目では、採用者数が「若干名(=1名)」という事態が起こりえます。現に令和2年度の最終合格者数は中学美術が5人、中学家庭が4人でした。

それ以外の科目でも、特別区毎の教員数は少なくなります。この様な小規模の教員組織において、果たして各学校毎に必要な教員を配属できるのでしょうか。

大阪市教育委員会の担当者は「英語の有資格者を採用試験で優遇するなど、特別区ごとに必要な人材を採用できるようになる」と説明しています。

しかし、むしろ「学校ごとに必要な人材を配属できなくなる」という心配の方が強く感じます。

東京都は一括採用

なお、同じ特別区がある東京都では、市区町村ではなく東京都が一括して採用を行っています。配属先も小笠原諸島等を含む都内全域です。

https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/static/kyoinsenko/saiyo/data/r03/r03youkou_1.pdf

一方、一定の条件を満たせば希望する配属地域を申請できるそうです。広域異動で一定の経験を積んだ後は、希望する地域で勤務できるそうです。

「5校経験するまでに、3地域を経験する。3地域を経験した者は同一地域内での異動ができる。」
https://tokyokyouso.org/life/%E4%BA%BA%E4%BA%8B%E7%95%B0%E5%8B%95%E3%81%8C%E5%A4%89%E3%82%8F%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F

お世話になっている小学校の教員異動のお知らせを確認したところ、隣接区との異動が多い一方、離れた区との異動も行われていました。

担任の先生は「前任校は遠い区で通勤が大変だったけど、現任校は近くて楽になった。」と話していました。

近いに越した事はありませんが、遠方への異動も何らかの狙いがあって行われたのでしょう。狭い大阪市ですが、地域色は大きく違います。

大阪都構想、いったいどうなるのでしょうか。期日外投票を利用せず、直前まで考えてから投票しようと思います。