大阪都構想に係る住民投票が告示されました。

「大阪都構想」賛否問う住民投票が告示 投票は来月1日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201012/k10012659331000.html

当ウェブサイトをご覧頂いている方にとって、大阪都構想で最も気になる分野の一つが「保育所」でしょう。特に「継続在園」や「入所調整」が気掛かりです。

これについては産経新聞が取り上げています。

 --保育所にはこれまで通り通えるの?

 「大阪市民は区内どの保育所でも入所できるが、特別区設置(令和7年元日)後にどうなるかはまだ決まっていない。ただ、大阪府市は協定書で保育に限らず『住民サービスを維持し、住民の皆さんに支障がないように調整する』としており、設置準備期間中にこれまでと同様の運用になる可能性がある」

 --保育所の入所基準は特別区ごとに違うの?

 「特別区が設置されると、保育所の入所基準は各特別区がそれぞれ設定する。特別区間の入所調整が必要な事項(区をまたぐ入所)については、特別区間で協定を結ぶなどの手法を検討することとしている」

 --具体的な仕組みはほとんど決まっていない、ということだね

 「そういうことになる。特別区設置後の具体的な制度について、現段階で決めることはできない」

 --保育の内容が変わらないか心配

 「これまでは市立保育所であれば市内一律で、行政区で異なることはなかった。特別区設置後は、待機児童解消などの取り組みについて特別区長の方針が反映され、地域の実情に応じた保育サービスの提供につながるとされる。もちろん、各区で一定の保育水準が保たれることが前提だ」

https://news.yahoo.co.jp/articles/9c17a56c56bccea481f262cd25afa092b55cbd4a

8月27日に開催された大阪市会教育こども委員会では、太田晶也委員(自民)が取り上げました。要旨をご紹介します。

(大田委員)
・特別区移行後の入所調整等は?
・待機児童が多い地域の区から入りやすい区へ申しこむ等、大阪市全域で絶妙なバランスが保たれていた

(大阪市職員)
・特別区間の保育所等の入所調整につき、在籍者はそのまま
・現在、大阪市在住者が他市の保育所へ申しこむ場合は、本市を経由して他市へ申し込む
・特別区新入所者は居住区に申込み、居住区から他特別区へ入所調整を依頼する

(大田委員)
・自治体が変わるので保育事務が増える
・特別区移行後は特別区長が各々のニーズに合わせた行政を行う
・特別区移行後は当該区在住者の入所を優先するのは自然(少し聞き逃し)、他区へ入りにくくなる。
・此花区に本園、福島区に分園がある保育施設(=異なる特別区に跨がる)は、どうやって入所調整を行うのか。分かりにくい。
・二重行政でも何でも無い、無駄な作業

http://osaka.gijiroku.com/g07_Video2_View.asp?SrchID=1035(1時間7分頃から)

産経新聞と大阪市会での質疑から読み取れるのは、「特別区移行後の入所調整について、現段階で決まっていることはない」という残念な内容です。

特別区移行後も他区の保育所等に継続して在園できるのは当たり前の話です。

一方、市会で職員が他市へ申し込む手続を説明したのは、「あくまで一般論を説明しただけ(=大阪特別区の話をしたわけではない)」として逃げる余地があります。

と言うことで、制度的な担保は何もありません。「大阪市、特別区長、特別区内での話し合い等で決められる」としか言い様がありません。

現時点で気をつけて欲しいのは、「特別区移行後、別特別区の保育所等には入所しにくくなる可能性がある」という点です。

大きな影響を受ける可能性があるのは、別特別区の保育所等へ2025年1月以降に入所したいと考えている子供です(先の話ですが)。

現行の大阪市の保育所等入所調整制度では、別自治体からの入所申込は基本点が「100点」となります。大阪市民と比べて非常に低く、実質的に「大阪市民の入所調整後に空きがあったら入所できる」となっています。

また、以前には「1年ごとに入所申込を行う必要がある」とも聞いた事があります(現在の運用はどうなっているのでしょうか?)。

移行後の各特別区では、少なくとも当面は現大阪市と同じ入所調整制度を利用すると予想されます。移行事務と同時に入所調整制度を変更するのは非現実的です。

現大阪市で利用しているシステムは、一部事務組合を設けて共同処理するとされています。

http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/34351/00343763/kyouteisho06.pdf

この中に保育所等関連のシステムは明示されていませんが、恐らくは総合福祉システムが該当するのでしょう。

各特別区で同じシステムを利用する限り、特別区毎に異なる入所調整制度を導入するのは困難です。

「新北区だけがきょうだい加点を20点にする」「新天王寺区は認可外加点を廃止する」等とした制度変更にシステムが対応するには、多岐に渡る改修が必要です。1箇所だけなら兎も角、各区毎に改修を行うのは辛いです。

しかしながら、同一システムを共同利用しても「異なる特別区への入所申込は基本点を減らす」という措置は容易です。居住区と希望する保育所所在区が不一致なら点数を減ずる改修は容易です。

と言うわけで、特別区移行後でも別特別区の保育所等へこれまでと同じ様に入所できるかは不透明です。

あくまで推測となりますが、特別区移行後の混乱を避ける為、当面は別区の保育所等でも従来通りに入所調整が行われるのではないでしょうか。

ただ、仮に同様の入所措置が行われたとしても、未来永劫続くわけではありません。新しい総合福祉システムを各区で導入する際には、こうした措置は解消されるでしょう。

特別区以降の趣旨を徹底すると、「各区の入所調整制度は区長や区議会で決定する」となります。異なる特別区への保育所等入所は、いつかは困難となっても何ら不思議ではありません。

来春の一斉入所で別特別区の保育所等を第1希望としている方は、「5年後・10年後は入所しにくいかもしれない」という可能性を念頭に置いて下さい。

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(10/13追記)
昨年以前に寄せられたメール等をベースに、異なる特別区にある保育所等への入所が難しくなった場合の影響を検討してみました。

特別区を跨いだ登園等が行われている地域として思い浮かぶのは、西九条駅周辺(福島区と此花区)、西天満から北浜(北区と中央区)、森之宮から玉造(中央区と城東区と東成区と天王寺区)、天神ノ森から天下茶屋(阿倍野区と西成区)です。

これらの地域は行き来が活発であり、現に少なくない児童が区境を越えて登園しています。

また、これ以外にも自動車等を利用し、居住地から離れた地域にある保育所等へ登園している児童もいます。

典型的なのは保育送迎バスを利用して離れた保育所へ登園しているケースです。

例えば「なにわのもり保育園」は地域型保育兼送迎ステーションが西区に、そして送迎先となる保育園が中央区にあります。

なにわのもり保育園 保育送迎ステーション
http://koichifukushi.jp/15266465602137

同一法人が運営する親子園が異なる特別区に配属されてしまいます。送迎事業が根本から否定されかねません。

日本有数の大都市である大阪市の待機児童問題を緩和する一つとして、「市内での広域登園」が一定の効果を発揮していたでしょう。

本来は居住地近くの保育所へ登園するのがベストですが、広域登園によって選択肢が広がっていました。

特別区に分割されてしまうと、こうした広域登園による調整が行われなくなる懸念があります。

何らかの協定等を結ばない限り、特別区分割は待機児童問題等を深刻化させる恐れがあります。

ただ、5年後の待機児童問題が全く分かりません。多くの地域では少子化が進み、保育所等へ容易に入りやすくなっていると予想されます。

異なる特別区の保育所等へ入所する必要性が大きく低下しているかもしれませんね。