小学校の統廃合を迅速に進めるべく、大阪市は条例改正を検討しています。権限を区役所から市教委に戻し、市教委が主体的に進める内容です。

大阪 小学校統廃合を市教委で

少子化によって小学校のクラスが少なくなり、子どもたちの教育に悪影響が出ています。大阪市は小学校の統廃合を迅速に進めるため、市の教育委員会が一元的に学校の再編に取り組めるようにする条例をつくることになりました。

大阪では少子化によって一部の小学校ではクラスが少なくなっており、クラス替えができなかったり、友人関係が固定化してしまうなど教育に悪影響が出ています。大阪市教育委員会では小学校の統廃合を進めたい考えですが、今の制度ではそれぞれの区がとりまとめを任されていて地域住民やPTAとの合意形成に時間がかかり、統廃合ははかどっていません。

このため大阪市は15日、それぞれの区に代わって教育委員会が一元的に学校の再編に取り組めるようにする条例をつくることになりました。市としては地域ごとのばらつきをなくすとともに教育委員会がスケジュールを含めた計画を示すことで地域の合意形成を早め、迅速に統廃合を進めることができるとしています。

会議の中で、大阪市の松井市長は、「コミュニケーション力の基礎を小学校で培ってもらうには、1学年3クラス程度の環境がないと、身につけることができない。一日も早く、良い環境を作れるように総力を挙げて取り組んでもらいたい」と述べました。

https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20200116/2000024233.html

生野区の統廃合難航が切っ掛けか、各学年単学級は39小学校も

令和元年度学校現況調査(令和元年5月1日現在)によると、各学年1クラスずつしかない大阪市立小学校は39校ありました(特別支援学級等を除く)。具体的には下記の通りです。

単学級のみで構成される小学校
豊崎(北区)・内代(都島区)・海老江西(福島区)・四貫島(此花区)・高津/南(中央区)・九条東(西区)・八幡屋/築港/港晴/池島(港区)・三軒家西(大正区)・大国/敷津(浪速区)・福(西淀川区)・十三/西中島/木川南(淀川区)・東小橋/今里(東成区)・北鶴橋/御幸森/鶴橋/林寺/生野/生野南/西生野(生野区)・生江(旭区)・今福/中浜/森之宮(城東区)・金塚(阿倍野区)・平林(住之江区)・矢田/矢田北/長原(東住吉区)・松之宮/長橋/北津守(西成区)

この中では特に生野区の7小学校が目立ちます。条例改正のきっかけの一つだと考えられます。

同区では数年前から統廃合案の策定等が進められていましたが、地元調整が難航して膠着状態となっていました。

 大阪市では少子化の影響で、児童数がここ40年間で半分にまで激減した。全ての学年について、1クラスずつしかない学校が市内289校のうち33校で、全体の1割を超えていて深刻な現状となっている。

 クラス替えやクラス対抗競技ができないため、1学年に2クラス以上あることが望ましいとする市は6年前、市内の学校の統廃合を進める方針を示していた。

 生野区で統廃合が進められていて、小学校を12校から4校にする計画がたてられ、保護者らとの話し合いが続けられているという。

 生野区西部にある12の小学校では、いずれも1クラスしかない学年を抱えていて、そのうち7校では全学年が1クラス。4年前に市は、これら12校を4校へと統廃合する方針を打ち出した。

 この方針に対し、地元住民たちは…。

 【反対】未就学児の母親「長く歩いて登校させるのが心配。別に少人数でもいいんかな。先生の目が行き届いていい」

 【反対】「学校を統廃合すると若い世代がよりいいところに引っ越すので、町が年寄りだらけでバランスが悪くなってしまう」

 【賛成】「別にええんちゃう。色んな子に出会えていいんじゃないかと」

 このように、保護者や地元住民の了承が得られていない地域もあり、統廃合は進んでいない。例えば、生野中学校区にある4つの小学校は、 統合して1つにする計画。「賛成」2校に対し、他の2校は「反対」と、地域によって意見が異なり、難航している。

 当初、地域住民や保護者の承認を得て計画を進める市と教育委員会だったが、膠着状態を打開しようと、15日、条例によって統廃合を進める方針を打ち出した。

https://www.ytv.co.jp/press/kansai/52924.html

生野区における小学校統廃合の経緯や理由等を、同区長がツイッターに投稿しています。

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(1/17追記)
やはり生野区の統廃合を念頭に置いた改正案でした。

本改正案が話し合われた大阪市総合教育会議にて、生野区西部地域学校再編整備計画に関する資料が配付されました。

Download (PDF, 744KB)

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ここ10年で7件の統廃合が実施

ここ10年間の間に大阪市では少なくとも7件の小学校統廃合が行われました。

難波小学校と元町小学校の統合 → 難波元町小学校(昭和60年4月)
堂島小学校と曽根崎小学校の統合 → 曽根崎小学校(昭和61年4月)
大宝小学校・芦池小学校・道仁小学校の統合 → 南小学校(昭和62年4月)
曽根崎小学校と梅田東小学校の統合 → 大阪北小学校(平成元年4月)
長原小学校と大和川小学校の統合 → 長原小学校(平成元年4月)
愛日小学校と集英小学校の統合 → 開平小学校(平成2年4月)
桃谷小学校・桃園小学校・東平小学校・金甌小学校の統合 → 中央小学校(平成3年4月)
精華小学校・南小学校の統合 → 南小学校(平成7年4月)
済美小学校と北天満小学校の統合 → 扇町小学校(平成16年4月)
扇町小学校と大阪北小学校の統合 → 扇町小学校(平成19年4月)
中津南小学校と中津小学校(一部大淀小学校)の統合 → 中津小学校(平成22年4月)
塩草小学校と立葉小学校の統合 → 塩草立葉小学校(平成26年4月)
津守小学校と梅南小学校の統合 → 梅南津守小学校(平成27年4月)
弘治小学校と萩之茶屋小学校と今宮小学校の統合 → 新今宮小学校(平成27年4月)
淡路小学校と西淡路小学校の統合 → 西淡路小学校(平成28年4月)
長吉六反小学校と長吉東小学校の統合 → 長吉東小学校(平成28年4月)
日本橋小学校と恵美小学校と日東小学校の統合 → 浪速小学校(平成29年4月)
佃南小学校と佃西小学校の統合 → 佃西小学校(令和2年4月予定)

http://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/page/0000267190.html等より作成

統廃合されたケースの殆どでは、小学校の児童数が複式学級水準にまで減少していました。

今年4月に佃西小学校へ統合される佃南小学校(西淀川区)では、今年4月の児童数(見込み)が40人となっていました。複式学級の編成を検討せざるを得ない児童数です。

西淀川区における学校配置の適正化について
https://www.city.osaka.lg.jp/nishiyodogawa/page/0000439415.html
https://www.city.osaka.lg.jp/nishiyodogawa/cmsfiles/contents/0000439/439415/002.pdf

一方、この水準まで児童数が減少しなければ、学校統廃合が進行しづらいという側面があるのでしょう。

敬遠される小規模校

大阪市で子育てする家庭の多くが小学校と直面するのは、保育所や幼稚園等から進学する時です。大阪市の大半の区では、一定の範囲内から進学先小学校を選択できる「学校選択制」を導入しています。

「学校選択制」・・・学校選びの基準は?

この時期になると、お世話になっている保育所では「小学校、どうしますか?」という会話が飛び交います。

居住学区の小学校へそのまま進学する家庭もあれば、「単学級の小学校はちょっと・・・」と感じて他の学校を選ぶ家庭もありました。中には大阪市立学校の教育環境を敬遠し、私立小学校へ進学する児童や卒園と同時に市外へ転出する家庭もありました。

学校選択制での希望結果を見ている限り、単学級の小学校への入学予定者が減少し、同じ地域にある中~大規模校の入学予定者が増加しています。大半の保護者は「単学級よりも複数学級の方が良い」と感じ、その様に行動しているのでしょう。

統廃合の障壁は「地域合意の難しさ」

大阪市のスタンスは以前から「小学校統廃合を積極的に推進したい」とするものでした。「大阪市立小学校学校配置の適正化の推進のための指針」を作成し、様々な働きかけを行ってきました。

しかし、様々な地域で生野区の様に難航しているのが実情です。

大きな理由の一つは「地域合意の難しさ」です。具体的には連合振興町会やPTAと合意を得るのが著しく難しいと聞きます。

生野区の地元町会は、統廃合計画に反対する陳情書を大阪市会へ提出しています。

「生野区西部地域学校再編整備計画(案)」は元に戻し、生野区の教育、魅力あるまちづくりを地域の力を合わせてすすめることを求める陳情書

(陳情趣旨)
ー昨年、「広報いくの」3月号で「生野区西部地域学校再編整備計画(案)」が発表されました6この案は現在ある12小学校を8校減らし、4小学校に、5中学校を1校減らし4中学校にする大幅な学校統廃合計画案です。これに対し、PTAや地城の人たちから、子どもたちのことでは、「通学に40分以上かかる、安全は守れない」「数合わせで、ゆきとどいた教育はどうなるのか」、地域のことでは、「いつ起こるかわからない災害、避難場所の小学校なくしたらアカン」「盆踊り、生涯教室など地域の拠り所がなくなる」一ーなど、生野区の教育、まちづくりに疑問や不安、反対が続出。学校は地域の宝であり、地域の核です。その元に地域は一致団結してきたことは論を待ちません。だから現在に至っても、小学校校区ごとの基本合意が進んでいないのは当然のことであります;

「小中一貫と学校統廃合を考えるつどい実行委員会」

通学時間・少人数で行き届いた教育・避難場所・地域の拠点等、反対する理由はこの陳情書に集約されています。

また、他区では「不動産価値が下がるから、新設校ではなく分校を設置して欲しい」という主張が通ってしまったという実例があります。

「不動産価値が下がる、学校より地域が大切、校区分割は絶対反対、地域分校賛成」 堀江小学校の教育環境改善が迷走中

一方、この陳情書には小学校における教育環境という視点が弱いと感じます。各学年が単学級で学校規模が小さい学校は教職員の割合が高く、児童や家庭の細かな所にまで目が行き届きやすいでしょう。

その反面、クラス替えができないので児童間の人間関係は固定しやすいです。閉鎖空間での同じ関係が6年間続きます。何らかの問題が生じて異クラスにしたくてもできません。

単学級と言えども、全クラスが30人前後いるとは限りません。30人近くも在籍している学年もあれば、10人前後しか在籍していない学年もあるでしょう。男女の偏りも生じます。

教員にも負担が掛かります。クラス担任=学級担当です。学級運営だけでなく学年運営も兼ねる事になります。生野区長が指摘する「校務分掌の難しさ」です。

授業も融通や効率化を効かせづらいです。複数クラスがあれば合同授業等を効率的に行う事も可能ですが、単学級ではできません。クラス対抗競技もできません。

小学校の統廃合に際しては、大阪市は地域住民(地域団体)やPTA等と丁寧に合意形成を重ねようとしています。しかし、地域団体やPTA等にとり、地域の小学校がなくなるメリットは皆無です。

大阪市に住んで改めて分かってのですが、その地域で生まれ育ち、その小学校を卒業し、その地域で何らかの商売(特に地主)を行っている方(いわゆる地域有力者)の発言力が地域団体やPTA等で非常に強いと感じています。

区役所は町会運営・地域行事・各種会議等を通じ、地域有力者と密接な関係を気づいています。区役所は地域有力者の意向に反する統廃合を積極的に進めるのは難しいのが実情なのでしょう。

置き去りにされているのは、当事者たる子育て家庭です。区役所が差配する学校統廃合において、小学校での教育を必要としている子供や保護者の意見は軽く扱われているのではないでしょうか。

子育て中の家庭は意外とドライです。小規模校に敬遠し、中・大規模校や市外の学校等に進学させる家庭が少なくありません。

「小学校が無くなると子供がますます減る」という意見もあります。しかし、そうした地域では、小学校があっても既に子供が減少しているでしょう。その地域が子育て世帯から敬遠されています。

小学校の目的は「子供の教育」

小学校の主たる目的は「子供の教育」です。あくまでその観点から統廃合の是非を検討し、「地域シンボル性」「卒業生の愛校心」「盆踊り」は二の次とすべきです。

小学校のプレーヤーは教育委員会と教職員、そして子供と保護者です。「良好な教育環境を願う」という両者の観点から、小学校の統廃合を進めるべきでしょう。