「それは違うのでは無いか?」と直感した記事がありました。「夏休みの自由研究」です。

夏休み自由研究、なぜ子供達の間で「かぶり」が頻発するのか

 小学生の夏休みの宿題のなかでも、最も手間がかかる自由研究。昭和世代の大人は、アリの巣を作ったり、アサガオの観察日記をつけたり、電池とモーター、豆電球などを使った工作をしたりと、苦心した記憶が思い起こされるが、今やそうした場面はまったく様変わりしている。(中略)

 2学期の最初の日に学校に行き、周りの子の自由研究を見て、“そんなやり方があったのか”と驚く──そうした場面も、年々減っているという。都内公立小学校の教諭はこういう。

「昨年はクラスの中で3人が、『水だんご』を提出してきた。これは水にアルギン酸ナトリウムと乳酸カルシウムを混ぜることで膜を作り、水を玉状にしたものです。中に入れるビーズやフィギュアなどの装飾こそ違いましたが……他にもまったく同じ木製工作を提出してきた生徒2人がいました」

 こうした“かぶり”が起きるのは、自由研究の“対策キット”が売られているからだ。(中略)

「こうしたキットが流行るのは、親に“手っ取り早く済ませたい”という気持ちがあるのだと思います。公園で見つけたダンゴムシを虫眼鏡で観察しながら1枚のスケッチにすれば、十分に立派な自由研究ですが、それに親が付き合うのは面倒ですし、成果物も地味に見えてしまう。それよりは説明書通りにできるキットを与えておけば、“カッコいい研究”をしたように見える」(教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏)

 流行の背景には、「親世代の変化」もあるようだ。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190821-00000008-pseven-life

一から企画を作り上げ、実験観察や工作をし、作品を完成させるのは本当に大変です。

自由研究キットを利用する家庭が増えている理由は明白です。

見栄えが良い自由研究を手軽に、一定の水準で間違いなく、完成させられるからです。

上記記事は『流行の背景には、「親世代の変化」もあるようだ』との文言で閉めています。しかし、これは極めて不十分であり、かつ間違いも有しています。

正しくは「自由研究に時間を掛けられない親世代」と言うべきです。

とても忙しい親世代

昭和の時代と比べ、共働きの世帯が大きく増えています。こうした家庭は土日も忙しく、子供の自由研究を一緒に進められる時間・体力・気力が足りません。

公園で見つけたダンゴムシを観察するだけでも一苦労です。疲れている土日、炎天下の下、何時間も子供と過ごすのは体力を大いに消耗します。

そして自宅では溜まった家事が待っています。土日の内、半日も屋外で時間を取られてしまうと、他の作業に深刻な影響を及ぼします。

「手っ取り早く済ませたい」のではなく、「そうせざるを得ない」のが実情です。

子供も忙しい

忙しいのは親だけではありません。子供も忙しいです。

しばしば聞くのは「習い事の大会」ですね。水泳、ピアノ、空手、クラシックバレエ等、様々な大会や発表会が夏休み中に行われると聞いています。

また、サマーキャンプ・実家への帰省等で自宅を空ける期間が長い子供もいます。

勿論、学校から課される宿題もあります。国語や算数といった学習プリント、読書感想文、絵日記、絵画等、非常に多いです。8月下旬になっても山積みです。

以前と比べ、自由工作に充てられる時間が物理的に短くなっています。

以前より短い夏休み、でも課題はそのまま

これに拍車を掛けているのは、「夏休みの短縮」です。

大阪市立小学校は全校に冷房設備が導入されたのに合わせ、2017年から夏休みを1週間短縮しました。

 大阪市立のほとんどの小中学校で25日、始業式があった。大阪市教委は、授業時間を増やし学力向上を図るため、今年から全小学校で夏休みを1週間短くした。全校で空調設備が整ったためで、3年前から短縮している中学校と足並みがそろった。(以下省略)

https://mainichi.jp/articles/20170825/ddf/041/100/007000c

しかし、夏休みが1週間短くなったにも関わらず、読書感想文・絵画・自由工作(以下「3点セット」と言います)は課され続けています。

特に短縮前を知っている高学年の保護者からは「夏休みが短くなったのはありがたいけど、宿題量が変わっていないので余裕が無くなった」という話を聞いています。

親の自由工作

そもそも3点セットは子供が独力で完成させられる物なのでしょうか。課題の内容や提出物の分量を見る限り、小学生(特に低学年)が1人で完成させるのは極めて困難です。

例えば低学年の子供が原稿用紙2~3枚の読書感想文を書けるのでしょうか。

学校の授業等でこうしたトレーニングは行われていません。にも関わらず夏休みに課され、家庭の指導に委ねるのは無責任です。

自由工作も同じです。ある程度のフォーマットがあればともかく、全ての一から企画して構成するのは至難の業です。

結局、多くの家庭では「親の自由工作」になってしまうのではないでしょうか。

読書感想文とレポートは違う

こうした3点セットは何の目的で課されているのでしょうか。先生に訊ねたところ、「各種コンクールに応募する為」との返事が返ってきました。

「子供の能力を引き出す」「長期休暇中に普段はできない完成物に取り組む」という目的なら理解できたのですが、この答えには閉口しました。

様々な目的意識や問題意識を持ち、前向きに取り組む児童なら素晴らしい作品を完成させられるでしょう。

しかし、そうした子供は少数派です。多くは四苦八苦しています(苦労して取り組むプロセスも重要ですが)。

特に問題視しているのは「読書感想文」です。

様々な書籍を読んで感想を有するのは大切でしょう。しかし、読書感想文で「○○だと思いました」と文章化する事に慣れてしまうと問題です。

高校や大学等でのレポート作成にて「感想」を書いてしまい、支障を来している聞いています。

以前に大学生のレポート等を指導した経験がありますが、「何が言いたいのか分からない」レポートが多くて唖然とした覚えがあります。

教育委員会や学校は夏休みの宿題を再考すべきでは?

7月末に発表された全国学力・学習状況調査等(全国学力テスト)によると、大阪市の学力は依然として最下位近辺を漂っています。

【学力テスト2019】秋田・北陸3県・さいたま市が好成績、大阪府は下位、大阪市の小6は全国最下位

意見が分かれるところですが、3点セットを削減(例えば1-2点の自由選択制)し、代わりに国語や算数等の学習課題を手厚くするのは一つの考え方でしょう。

また、全ての児童に同じ課題を課す必要はありません。勉強に躓いている児童には1学年下の、得意な児童には1学年上の課題を出すのも一つの方法です。

先生との会話や子供の様子から、子供の学力が大きく二極化していると感じています。

小学校で学習に躓くと、後でリカバリーするのは容易ではありません。下手をすると、小学生で人生が決まってしまいます。

小4で人生が決まってしまう話
https://note.mu/yontengop/n/n8d68fbddb1e8

夏休み中の小学生に何を求めるか、学校や教育委員会には真剣に考えて欲しいです。

まさか数十年前の課題と今の課題が同じだとは思いもしませんでした。

夏休みは残り数日。頑張って子供と夏休みの宿題を仕上げます。