真冬の様な寒さが続いています。子供には厚手のコートを着せて登園させています。一方、登園時にすれ違う近所の小学生は、この寒さでもコートを羽織らずに制服(標準服)で登校しています。

「寒い時期に可哀想だなあ」と思うのと同時に、「どうして大阪の小学生は制服なのか、私が通っていた小学校には制服はなかった」と疑問に感じました。

少し調べたところ、私の疑問にストレートに答えている記事が見つかりました。

夏休みシーズンに入り、制服姿の小学生が街中からめっきり減った。そこではたと気付いたのは、そもそも大阪は制服を着る小学生が多いことだ。大阪府の公立小学校に通う子どもの3人に1人は制服を着ているらしい。しかも地域によって着用には格差があるという。

日本経済新聞大阪夕刊いまドキ関西2013年7月24日付

記事で気になるポイントを挙げていきます。

繊維産業の普及・技術革新

 結果は大阪府で34.5%。全国平均の15.6%より高く、東京都(2.5%)、愛知県(5.6%)などを大きく上回る。単純計算では大阪では15万人強の小学生が制服を着ており、2位の広島の約10万人をぐっと引き離す。ちなみに導入率でみると関西では奈良が59.7%、滋賀が47.3%と割に高い。

導入率が高いのは「繊維産業の盛んな地域」(衣料繊維事業本部の金田至保・販売第1部長)。岡山(98.5%)、福井(89.7%)、石川(86.7%)がそうだ。繊維問屋の多かった大阪も、この文脈でなら合点がいく。

繊維産業が盛んだったのは、関西地方や瀬戸内沿岸地域が思い浮かびます。大阪市内には痕跡が余り残っていませんが、泉南地域や尼崎市内にはまだ大規模な工場が残っていると聞きます。

転機は技術革新。帝人と東レが1958年に合成繊維のポリエステルの量産化に成功した。これで破れにくく、洗濯できる制服を安くつくれるようになる。市場として小学校に目を付けた両社は65年ごろから普及に取り組んだ。

ポリエステルは丈夫・簡単に洗える・すぐに乾くのが特徴的です。

学校で汚して帰宅しても、夕方に洗って干せば翌朝には乾きそうですね。親目線としてはありがたい素材です。

商店街は賛成、転勤族は反対

セールスポイントは私服を毎日着替えるよりお金がかからない、学校の一体感が出る、などだった。「商店街のある地域では受けがよかったね」と小里さん。店の朝は早く、その日の準備で忙しい。子どもに何を着せるか悩まなくて済む制服は、母親らに歓迎された。着用を強制しない「標準服」という名称で広がり、転勤などによる人の移動の少ない商店街では地域のシンボルとして住民に親しまれてきた。

お世話になっている保育所でも自営業を営んでいる方が少なくありません。たまたま入ったお店でバッタリ会ってしまい、少し気恥ずかしい思いをした事が幾度となくありました。

記事には「着用を強制しない標準服」とありますが、標準服を着用している小学生の中で私服を着ている子供は見た事がありません。事実上「制服」として扱われているのでしょうか。

今も天神橋筋商店街のある北区、九条商店街のある西区では制服の小学校が多い。大阪府南部の泉佐野市などでは50%を超えている。逆に北部の豊中市や吹田市での導入はゼロ。保護者に提案した校長もいたが「子どものファッションを楽しみたい」という母親の反対で見送られた。

昭和40~50年代に一気に広がった小学校の制服。最近は私服に押されがちだ。没個性教育の象徴として取り上げられたり、転勤族の児童から反対の声が出たりして、廃止する学校も増えてきた。

古くから地元に住んでいる方や商売を営んでいる方からは歓迎されやすい標準服ですが、転勤族の家庭からは反発の声があったそうです。

以前に居住していた地域では標準服という制度が無かった、会社の都合で転居したら標準服は無駄となるという理由が考えられます。

また、標準服の値段の高さを指摘する声もありそうです。標準服がある小学校へ通う子供がいる方に訊ねたところ、「標準服一式で3万円ぐらいした、卒業するまでに1-2回は買い換えると思う」と聞いた事があります。安くありません。

寒そうな標準服

標準服の問題点として、それが絶対視されてしまい、寒暖に適切に対応するという服装の役割が軽視されている懸念があります。

2004年に大阪市小学校教育研究会生活指導部が作成した、「防寒着についてのお知らせ」という資料があります。

1.防寒のための服装に関して
①登下校時は、マフラー、手袋を着用してもかまわない。
②体調が悪い時は、連絡帳で連絡の上、長ズボンや防寒着を着用してもかまわない。なお、防寒着は、校内では原則として脱ぎ(体温調節のため)、体育学習は見学等となります。
③登下校時は「ブラウスと紺上着」や「ブラウスのみ」「ブラウスとベスト(紺か黒)」「ブラウスと紺上着、中にセーター(紺か黒)」のいずれかとなります。

2.備考
○標準服の着用は、子どもたちが安全で落ち着いた学校生活(登下校を含む)を送れるようにするという考え方に基づいています。上記のことがらは、標準服の着用に適合するような服装という観点で指定しています。
○すでに購入されていて、昨年から着用されているベストやセーターについては、華美でない淡色の物(グレーなど)については着用されてもかまいませんが、今後、学校での着用のために購入される際は、紺色または黒色をお選びくださいますよう、よろしくお願いします。

「防寒着についてのお知らせ」

冬場でも長ズボンや防寒着を着用するには、「体調が悪いときに連絡帳で連絡する」必要があるそうです。安全で落ち着いた学校生活という目的は理解できますが、これが防寒対策を上回るとは思えません。

標準服へ戻す学校も

一方、女子を中心に服装が派手になり、標準服に戻した学校もあるそうです。

寝屋川市立東小学校は12年に制服を復活した。女子児童を中心に服装が派手になり、保護者や地域住民から復活を求める声が高まったためだ。「嫌がる子も一部にいたが、制服にしてよかったという児童のほうが多い」と校長は話す。

服装や持ち物を競争する形で派手になり、経済的な負担が重くなったりトラブルを引き起こす話を聞いた事があります。近頃は「小学校の卒業式の袴」が問題視されているそうです。

料金は着物のレンタルと着付けがセットになったもので3万円~6万円だということだ。晴れ舞台を前にはかま姿で写真撮影する子供も増えている。神奈川・横浜市にある撮影スタジオでは着物の貸し出しも行っていて小学校の卒業式シーズンは成人式よりも忙しいという。

一方では「ちょっとお金がかかりそうだと思った」「はかまを着るのはすごく良いと思うけど、過剰になりすぎて違う方向に行くのは残念かなと」いう声も聞かれた。

http://www.news24.jp/articles/2017/03/17/07356770.html

小学校の卒業式で袴を着用するという感覚が信じられません。今はそれが当たり前なのでしょうか。子供が言い出したら親としては断りにくいですが、家庭毎の経済事情が明白に現れてしまいますね。

標準服と私服、それぞれに一長一短があるでしょう。どちらが良いとは一概に言えません。ただ、「ずっと標準服を続けてきた、伝統がある、無くしたら販売店の死活問題だ。」という意見だけは賛同できません。

小学生や未就学児を育てている保護者の声を大切に、小学生の意見を尊重していくのが重要でしょう。