続報です。逮捕された元施設経営者・園長が保育資格を有し、スマイルキッズ園が認可保育所だと詐称したと指摘されています。

【ニュース・9/14有罪判決】1歳園児が食塩中毒死、認可外保育「スマイルキッズ」元経営者を逮捕

【園児食塩中毒死・9/14有罪判決】事件直後は全身・服に塩の結晶が付着、容疑者を送検→処分保留で釈放

認可保育所→実は認可外保育施設

 盛岡市菜園の認可外保育施設で2015年8月17日、同市の生後12カ月の下坂彩心(あこ)ちゃんに食塩を摂取させ翌18日に死亡させたとして、同市北飯岡、同施設の元経営者でパート従業員(33)が傷害致死容疑で盛岡東署などに逮捕された事件で、彩心ちゃんの両親は、同施設のホームページ(HP)を閲覧し正式に認可された保育所と思い預けていたことが13日、両親の弁護士への取材で分かった。

弁護士によると、HPには「当託児所は保育施設として児童福祉法59条の2に基づき岩手県への設置届け出を義務付けられた施設」と記載されていた。

弁護士は「両親は2人とも飲食店で働き、夜間保育をしているところが必要だった。HPの巧みな記載で若い保護者らの誤解を誘っていた」と批判した。

https://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20170714_2

同園のウェブサイトは事故後まもなく消去されており、キャッシュ・ウェブアーカイブ等でも見つかりません。ただ、両親や弁護士がプリントアウト等を行って保存していたのでしょう。

弁護士によると、ウェブサイトには「当託児所は保育施設として児童福祉法59条の2に基づき岩手県への設置届け出を義務付けられた施設」と記載されていたそうです。

実は同条は「認可外保育施設の届け出」について定められた条文です。

認可外保育施設
・ 児童福祉法第59条の2により、認可外保育施設については、都道府県知事・指定都市市長・中核市市長(以
下、「都道府県知事等」という。)に対して届出を行う義務がある

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000053400.pdf

同園は認可外保育施設なので、ウェブサイトに掲載した内容は正しい内容です。しかし、夜遅くまで飲食店等で必死に働いている両親が「認可保育所」だと誤解しても不思議ではありません。

分かる人は分かります。保育所は届け出ではなく許認可制であり、入所するには原則として自治体等の入所審査を経る必要があります。どこかで矛盾に気づくでしょう(私的契約児として受け入れる話があったかもしれませんが)。

されど、皆がこうした知識を有しているわけではありません。覚えている限り、妊娠・出産等に関する手続きにおいて保育所等の案内や説明を受けた記憶はありません。区役所で保育所探しを相談した際に、初めて制度の概略を知ったぐらいです。

亡くなった女児の両親も、どこかで市役所等に相談していたら「話がおかしい」と気づいたでしょう。しかし、夜遅くまで働いていると市役所で相談するのは困難です。吉田容疑者の口八丁手八丁に騙されてしまったのかもしれません。

保育士→実は無資格者

更に吉田直子容疑者は「保育士資格を有している」と両親へ伝えていたそうです。

 盛岡市菜園の認可外保育施設で2015年8月17日、同市の生後12カ月の下坂彩心(あこ)ちゃんに食塩を溶かした液体を摂取させ翌18日に死亡させたとして、同施設の元経営者でパート従業員(33)=同市=が逮捕された事件で、容疑者は事件前、彩心ちゃんの親に「自分は保育士の資格を持っている」と伝えていたことが14日、両親の弁護士への取材で分かった。県警によると、吉田容疑者は資格を持っていない。

児童福祉法などは、認可外でも1人を預かり保育する時は最低でも保育士が1人いなければならないと定める。事件が発生した15年8月17日午前10時半~翌18日午前0時5分に施設内にいたのは容疑者と彩心ちゃんだけで、事件当時は本来いるべき保育士は不在だったことになる。

市によると、同施設は同年7月13日、保育士と保育補助が各1人在籍していると届け出たが、いずれも容疑者以外の人物だった。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20170715_3

実は保育施設を利用している保護者が、保育士資格の有無を確認する手段はありません。誰でも使える「保育士資格検索システム」は存在しません。

認可保育所であれば、原則として全ての職員が保育士資格を有しています。しかし、実は園長は保育士資格が求められていません。流石に「園長先生は保育士資格を持っていますか?」と訊くわけにはいきません。

容疑者の様に「保育士資格を持っています」と話されたら、ほぼ全ての保護者は信じてしまうでしょう。裏を取る方法が全くありません。そもそも、「保育士を詐称する人間がいる」とは思いもしません。

認可保育所・保育士有資格者、両親は二重に騙されていました。認可保育所ではないと気づけるかもしれませんが、無資格者だと気づくのは無理です。