保育所の新設に必要不可欠な「保育士の確保」に関する記事です。
大阪市内の例を取り上げています。

保育士が足りない…本当は就業したい若者を阻む「低賃金」「責任重い」の“罪”
2013.11.23 18:00 [westライフ]

 保育士が足りない。安倍政権が打ち出した待機児童の早期解消プランに沿って、全国の自治体が保育所の整備と保育士の確保に動いているためだ。責任の重さや待遇面での「ミスマッチ」により、保育士の資格をもちながら保育士以外の求職をしている人は全国で1万6千人に上るとみられ、厚生労働省は就業支援を強化する。

 大阪市西区南堀江。落ち着きのあるおしゃれ感がある街として近年、若者の居住が増えている地域だ。地下鉄四ツ橋駅に近いなにわ筋に面した角地の更地に、私立保育所が建設される。

 保育所は定員70人。大阪府茨木市の社会福祉法人、智恩福祉会が平成26年4月から運営する予定だ。587平方メートルの敷地は財務省が今年9月、国有地を智恩福祉会に随意契約で売却した。近畿財務局の担当者は「本来は商業向けの土地だが、入札より前に、管内すべての社会福祉法人向けに情報を提供した」と話す。

 知恩福祉会は国有地の取得を前提に、大阪市の認可保育所の事業者募集に応募し、選定された。近畿財務局は25年度内に待機児童が多い大阪の北摂地域で同様の国有地処分を予定している。

 大阪市内の待機児童数は25年4月現在で287人。前年度の664人からは大きく減少した。しかし、25年度の新規入所申込者数は前年度比71人増の1万3642人で、24年度に入所枠を1080分拡大したにもかかわらず、287人の待機児童が発生した。

 市は25年度当初予算ベースで2260人分の入所枠拡大を計画しており、社会福祉法人以外にも認可保育所の門戸を開いたり、保育ママを増やしたりして待機児童の解消を急いでいる。

 ここでネックになるのが保育士の確保だ。保育士をめぐっては例年、採用のピークを迎える1月ごろに有効求人倍率が1倍を超え、5、6月ごろに底を打つ。

 しかし大阪府内では、今年度は5月の時点で前年同月より0.29ポイント高い0.95倍。6月が0.37ポイント高の1・01倍、7月は0.45ポイント高の1.14倍まで上がった。25年2、3月の有効求人倍率は1.73倍だったが、来年1~3月はこれを大きく上回るのは確実だ。

 同様の現象は待機児童が多い東京都や神奈川県でも起こっている。今年8月は東京が3.21倍、神奈川は1.39倍。都心での保育士不足は深刻な状況だ。

 背景には、安倍政権が掲げる「待機児童解消加速化プラン」がある。25、26年度の2年間で約20万人分の入所枠を整備できるよう、国が自治体を財政的に支援するものだ。入所枠の拡大はまかなえても、肝心の保育士不足解消には追いつけていない現状が浮き彫りになっている。

 国では同時に、認可外保育所で働く人に保育士資格を取得するための受講費用を支援▽私立保育所を対象に保育士の賃金上乗せ分を交付▽保育士の離職を防ぐための雇用管理に関する研修を所長向けに実施-といった取り組みも実施中。最終的に保育ニーズがピークを迎える29年度末までに、全国で待機児童を解消するとしている。

「本当はなりたい」6割超

 だが、待遇面でのミスマッチもある。厚労省が5月に全国で実施した調査によると、保育士の資格をもつハローワークでの求職者3万2千人のうち、半数の1万6千人が保育士としての就業を希望していなかった。

 希望しない理由として最も多かったのは、「賃金が希望と合わない」で、47.5%。「他業種への興味」(43.1%)のほか、子供を預かる仕事ならではの「責任の重さ・事故への不安」が40.0%、また「健康・体力面での不安」も39.1%と多かった。

 一方で、これらの原因が解消された場合、保育士としての勤務を希望すると答えた割合は63.6%にも上った。なりたい職業と思い描いて努力して資格を取得した若者は、本心としてはやはり保育士として働きたいと考えているようだ。

 保育所は、日本経済の成長戦略においても重要な社会インフラだといえる。次代を担う子供を世話する保育士の就業環境の改善や意欲向上の促進は、待ったなしだ。

http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/131123/wec13112318000002-n1.htm

以前に取り上げた、大阪市で保育士の求人倍率急上昇 アベノミクス効果の続報記事です。
産経新聞はこうした大阪ローカルネタをこまめに取り上げています。
記事中で触れている智恩福祉会が南堀江に新設する保育所(仮称なにわ筋敬愛保育園)はもと労働基準監督署の跡地に建設されます。

新設保育所は平成26年4月開所へ向けて準備している真っ最中ですが、既に4月に間に合わない事が判明している保育所が数園あります。
また、保育士の確保が思うとおりにいかず、開所を延期する保育所が出てきても不思議ではありません。

保育士の就業環境の改善は必要不可欠である一方、その財源は原則として国・自治体や受益者たる保護者が負担する事になります。
受益と負担、幼稚園の利用者等とのバランスを考えつつ、子供を信頼して預けられる保育所を運営するのに十分な保育士を確保できて欲しいものです。