職員の待遇・パワハラ・悲惨な保育現場

・職員を創業者一族の従者と意識していた
・法人で応援している候補の選挙応援や投票を強制させられた(投票画面を撮影して送信!)
・他園の行事をボランティアとして手伝わされた
・理事長の身内の通院に付き添わされた
・職員の体や机を叩いたり、ファイルを投げつけた
・業務上明らかに不要な事項や遂行不可能な内容を強制された
・言葉によるパワハラが酷い
・LINEへの加入やスマホへの買い換えを強制した
・サービス残業
・体調不良で有給休暇を取得する場合も、いったん出勤させられた
・新卒保育士確保の為、保育士を母校に派遣してリクルート活動をさせた
・絵本はブックオフの中古品
・おもちゃは100円均一店で購入
・水遊びプールは職員が自宅から持ち込み
・厨房職員のマスクやシューズは自腹
・鉄の給与量が基準値を下回っていた

優雅な生活を送る創業者一族と引き替え、保育園で働く職員や保育現場は悲惨な状況に置かれていました。まさしく「ブラック保育園」です。東大阪市のみるく保育園京都市の春日野園も同じ状態でした。

職員は法人職員ではなく、あたかも「一族の従者」として扱われていました。勤務中はパワハラの嵐でした。ちょっとしたブラック企業では太刀打ちできないブラックです。セクハラも行われていた可能性が高いです。

従者にはプライベートの時間もありません。強制ボランティアは序の口、政治活動・投票の強制は政治的中立に反し、人権を著しく侵害する極めて大きな問題です。「保育内容の向上を図る署名運動」とは別次元の話です。

次々に新しい保育所を設置している法人の命綱は「新卒保育士の採用」です。本音では「こんな保育園には来ない方が良いよ」と後輩に伝えたかったのかもしれませんが、理事長等の前では言えません。しぶしぶリクルート活動をさせられ、ノルマを達成しない職員に畏怖的な言動もあったのでしょう。

保育士と同様に疲弊しているのが保育現場です。創業者一族が私的に流用していれば、保育現場に回る金銭が少なくなるのは当然です。備品や食材の購入費用等を切り詰め、場合によっては自己負担していました。絵本をブックオフで購入するなんて涙が出てきます。

理事長等による調査妨害

・当初から調査妨害を見越し、第三者委員会設置要綱に調査妨害等を防ぐ規定を置いていた
・第三者委員からの質問事項や回答を報告せよと指示された
・発送する資料を事前に報告する様に指示された
・第三者委員会が調査の為に施錠して利用している応接室に、合い鍵を利用して理事長が入室した
・理事長不在のヒアリングや園長会の内容を話す様にと執拗に訊かれた
・ヒアリング直後に調査対象の職員を集め、無言の圧力を掛けた
・不適正経理によって購入した家電を保育園へ持ち込み、以前から存在したという口裏合わせを行った
・第三者委員会は理事長の出勤停止を検討するに至った
・職員間のLINEに加入し続けた
・金銭借り入れ等に関する理事会議事録を偽造した
・承認事項の遡及適用や旅程表の偽装を指示した
・勤務シフトや出退勤時刻記録の改ざんを職員へ指示した

兵庫県・姫路市・第三者委員会による監査・調査が行われても、理事長は必死の抵抗を試みています。

自治体の指示、夢工房からの委任を受け、第三者委員会が設置されました。しかし、委員会の調査に対し、理事長が執拗な妨害工作を行いました。まるでドラマを見ているかの様な内容です。

妨害工作は稚拙です。しかし、長年に渡って理事長等に支配され、抵抗する気力を無くしている職員には効果的です。何か下手なことをしたら嫌がらせをされ、適当な理由を付けて解雇されてしまうという恐怖を抱いてしまいます。

しかし、全ての職員が口をつぐんだわけではありませんでした。専用メールアドレスを設置したところ、職員から多数の不満が寄せられました。調査妨害の実態も伝えられた様子です。

ガバナンス・原因分析・再発防止策

・夢工房は現理事長の祖父が初代理事長、叔父が第2代理事長、父が第3代理事長を務めた
・現理事長の妻Bが理事兼統括園長、実母Eや長男Iが評議員に就任している
・同法人は創業家の家業として運営されている
・法人とプライベートの財布が一緒にされ、法人の資産=一族の資産という価値観があった
・事業を拡大させてきた理事長に絶対的な発言力があり、逆らうと失職する恐怖があった
・創業家の身内が特別扱いされているが、理事会構成メンバーや職員は面と向かって批判できない状況だった
・理事の多くは別の社福法人の理事長であり、同業者を批判しにくかった
・不適正な事実を隠蔽し、理事長の存命等を図った理事がいた
・創業家の理事長、理事、統括園長等の地位は解任、剥奪されるべき

創業者一族が社会福祉法人夢工房を私物化するに至ったのには、主要役員の多くを一族で占め、かつそれ以外の役員等も多くを同業者で固めていた背景があります。創業者が好き勝手なことをしても、誰も批判できない状況がありました。まさしく「ガバナンスの欠如」です。

同法人の会計・決算等には会計事務所が関与していた旨も報告書で指摘されています。これだけ大規模な私的流用を行っていたら、会計事務所が気づかない訳がありません。しかし、何らかの理由で表立った指摘を控えていたのでしょう。

保育園の目的の一つに「子供の利益」があります。しかし、同法人が運営する保育園は「創業者一族の利益」が最大の目的でした。

今後の動き

第三者委員会は再発防止策として「理事長,統括園長の退陣,創業者一族の関与の排除」を提言しています。理事長等は長年に渡って社会福祉法人・保育園を私物化し、調査妨害まで行っていました。悔い改めて正常な運営に立ち返る期待は全く持てません。

株式会社と異なり、社会福祉法人は寄付金の拠出者等が持分等の権利を有する物ではありません。創業者一族が役員の選任等に関わる法的な権限は何らありません。

提言にある通り、創業者一族のみならず理事・監事・評議員等を全て入れ替えるべきでしょう。一例として傷害事件を起こした京都市の春日野園では創業者一族が総退陣し、京都市役所OBを中心とする新たな体制が構築されました。

懸念されるのは理事長等が辞任せず、居座り続ける事態です。自治体は社会福祉法人に対して役員の解職を勧告できますが、強制的に解職させる事はできないそうです(何か手があるかもしれませんが)。保育園運営に関する許認可の取り消し・法人への解散命令という方法もありますが、園児への影響の大きさを考えると実行できないでしょう。

あくまで自発的な辞職等を勧告しつつ、刑事責任・民事責任も踏まえ、創業者一族の動きを見守ることになるのではないでしょうか。

丁寧な対応が必要なのは、在園している園児への保育でしょう。こうした報告書が公表されれば、保育士や保護者の動揺は避けられません。保護者の間ではこの話が持ちきりになるでしょう。

必要なのは正しい情報です。自治体が説明会を実施して情報発信を行うと共に、場合によっては自治体が保育職員を派遣して対応に当たるべきでしょう。保育士の大量離職で現場が回らなくなった東京都文京区の保育所では、区が区役所OBを毎日の様に巡回させ、保育現場の指導にも当たったそうです。

今までは比較的緩かった社会福祉法人の監査ですが、今後は厳しくなります。一定規模を越える社会福祉法人は、監査法人・公認会計士による監査が必要とされます。内部統制の構築等も求められるでしょう。

報告書は理事長等に対する横領・背任等の刑事責任も指摘しています。刑事告発が行われ、捜査が行われる可能性も大きいでしょう。