くれない保育所(大阪市城東区)副園長が3.7億円私的流用 刑事告訴への続報です。この度、調査委員会が作成した調査報告書が同法人のウェブサイトに掲載されました。同法人の内部構造・不正の手口・原因等が詳細に記載されています。

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同報告書から趣旨を抜粋し、要点をお伝えします。

なお、同報告書の存在は。同保育所へお子様が通っている方からコメント欄より教えて頂きました。ありがとうございます。今後、同保育所の運営が早期に正常化されるのを願っています。

一族で牛耳る理事会

不祥事が発生した多くの法人と同じく、くれない学園の理事も理事長一族が多くを占めていました。理事6人の内、3人が一族です。具体的には元副園長の母(元理事長・園長)・妻の弟(会社員)・妹(主任保育士)です。

理事長一族で法人・保育所を思うがままに運営できる体制となっていました。それは、お手元とも言うべき待遇にも現れています。元理事長・元副園長は共に、少なくとも平成17年度以降は年間約1000万円程度の収入を得ていました。

大阪市が市内にある保育所を調査したところ、施設長(園長)の月額平均給与が441,710円(年間約700万円)、副施設長は342,302円(年間約550万円)でした。

園長は平均額の1.5倍(しかも80代)、副園長は倍近い給与を得ていました。理事・主任保育士たる妹も似た水準だったと推測されます。園長・副園長・主任保育士という保育園のトップ3も一族でした。お手盛りと言わざるを得ません。

不適正会計の内容・手口

・元副園長は平成6年4月に法人に就職し、平成9年に副園長に就任した。
・平成12年度から経理業務に携わり、前任者が死去した平成13年1月以降は一手に担っている。
・預金通帳や印鑑等の管理も独占していた。
・平成14年度以降、法人の預金口座から現金で出金・個人口座へ送金・先物取引会社へ直接送金した。
・元副園長個人名義で償金先物取引を繰り返し、結果、同法人の財産約3億7,000万円を着服した。
・元副園長及び園長が5,500万円を法人へ弁済しており、現在の損害額は約3億1,500万円となっている。
・平成26年10月に行われた大阪市福祉局による法人指導監査が契機となり、不正が明らかになった。
・法人口座からの社外流出を、架空の定期預金口座に計上して発覚を免れていた。
・一部の架空口座を売却損や評価損等へ計上し、損失処理していた。
・年次決算等で架空口座の残高証明書・通帳を確認していれば簡単に露呈していた。
・先物取引会社の損益証明書によると、平成27年までの10年間で計3億3,170万円の損失を生じている。

背景と原因

・元副園長が単独で会計を処理し、法人内で誰かが確認・チェック等を行う体制が無かった。
・会計知識を有する職員がおらず、仮に帳簿を入手しても内容を理解できなかった。
・顧問税理士は元副園長の父の弟(叔父)だった。
・年間62万円の報酬で会計や決算の補助業務を行っていた(税務申告や会計監査は受任していない)。
・元副園長が作成した会計帳簿を頼り、通帳や残高証明書等を照合していなかった。
・理事は一族、同業者、近隣住民ばかり
・理事の入れ替わりが殆ど無く、報酬も支払われておらず、法人の運営に関心が無かった
・不正経理の発覚を避ける為か、会計資料は理事会当日に席上で配布された
・監事による監査も資料を一通り見るだけの物だった
・通常は2年に1度行う監査を大阪市は毎年行っており、要注意法人と認識していたと推測される。
・法人は10年以上に渡って預金通帳の提出を拒否していたが、大阪市は強く指導していなかった

責任追及

・元副園長は懲戒免職、その上で損害賠償を求め、かつ刑事告訴(背任/横領)を行う
・園長(元理事長)は元副園長と連帯して賠償し、年度末で退職勧奨を行う
・理事も善管注意義務や任務懈怠責任を負うが、付き合いで理事に就任して報酬も支払われていないので、損害賠償責任の追及は慎重に行う
・監事が預金通帳や事業外損失等を調査していれば早期に発覚した、理事と同様、責任追及は慎重に行う
・顧問税理士が通帳等を確認していれば早期に発覚したが、税理士に会計監査や税務申告を依頼しておらず、責任を問うのは困難である
・大阪市が指導監査で通帳の提示を強く求め、強力な指導監査を行うべきであり、重大な責任があったと言わざるを得ない。

過去最大級の流出額 保育現場にも影響か

約15年間でおよそ3億7,000万円が流出していました。年間にならすと約2,500万円、月200万円に上ります。これだけの資金があれば、保育士の雇用・保育用品の購入・設備の改装等による保育の充実が行えたでしょう。

調査報告書では触れられていませんが、これだけの資金が流出していれば、保育現場に大きな影響が生じていたのは間違いないでしょう。低い人件費・自腹を切って購入する保育用具や絵本、古いままの建物・・・・。

一部の保護者や保育士は、こうした実態を区役所等へ相談していたのではないでしょうか。こうした一次情報に敏感に反応し、適切な監査を行わなかった大阪市・区役所にも大きな責任があったのは間違いないでしょう。

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(12/27追記)
コメント欄より「先生方の待遇は悪くなかったのでは無いか?」という指摘を頂きました。

実は職員の給与に関する資料が同報告書11ページに掲載されています。
平成17年~平成26年の10年間、とある月の職員給与と諸手当が記載されています。

これより職員1人あたりの平均月給(諸手当込み)を試算したところ、おおよそ18万7,000円~236,000円程度となりました。
正職員が平均月給25万円前後、短時間勤務職員が10万円前後というイメージです。

大阪市による調査によると、市内の民間保育所で働く保育士の平均月給が219,105円とされています。
限られた資料に基づく推計ですが、市内平均と同程度もしくはやや上回っていると推定されます。
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また、同法人に関する情報提供が議会へ行われていたのかも疑わしいです。ここ数年の大阪市会こども教育委員会において、同法人や保育所全般の不適正経理に関する話題が取り上げられた覚えがありません。1-2月の大阪市会で集中的に取り上げられるのではないでしょうか。

流出額3億7,000万円は、保育所での不正経理としては過去最大級でしょう。夢工房の1億7,000万円の倍以上です。流出目的は先物取引という地味な内容ですが、金額は空前絶後です。ワイドショー等でも徐々に取り上げられていくでしょう。