2025年8月18日に開催された令和7年度第1回大阪府総合教育会議(資料)にて、2040年における大阪府公立高校数は104校が適正だとする試算が示されました。
大阪府は18日、少子化による生徒数の減少を背景に、2040年の府立高校の数(通信制などを除く)は現在より32校少ない104校程度が適正だとする試算を公表した。この日府庁で行われた吉村知事と教育委員会の会議で示された。
府によると、40年に府内の公立中学校を卒業する子どもの数は、15年間で約25%減り、4万9490人になる見込み。築年数40年以上の高校は7割超を占めており、老朽化も進んでいる。
府は府立高の再編整備を進めており、試算を踏まえ、さらに具体的な再編を検討する。工業を専門にした学校や学び直しに力を入れる学校などそれぞれの特色を考慮した上で、学校の配置を決めていくという。
会議で吉村洋文知事は「人口減少は再編への良いきっかけでもある。学校の個性や公立高校の役割を考えて、再編を進めることが重要だ」と話した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/018e52441cc908a1b29c317013539ba6f12b99cc
議事要旨はこちらです。
令和7年度第1回大阪府総合教育会議が開催され、吉村知事と教育委員が出席し、今年秋に策定される「府立高校改革アクションプラン」について議論しました。
アクションプランの主な内容
内藤副教育長より、アクションプランの概要が説明されました。この計画は、少子化や高校授業料の完全無償化といった社会変化に対応するため、2025年3月に策定された「府立高校改革グランドデザイン」を具体化するものです。改革の柱となるのは以下の5点です。
探究的な学びの推進: 大学や企業との連携を強化し、生徒が自ら課題を見つけて解決する力を育む学びを充実させます。
英語力の向上: 全府立高校で海外姉妹校提携を進め、生徒に国際的なコミュニケーション能力を身につけるマインドを育てます。
産業人材の育成: 2028年度に工業系の新設校を開校し、AIなどの最先端技術に対応した実践的な教育を提供します。
不登校生徒の支援: 少人数で生徒一人ひとりに合わせた柔軟な学びを提供する「学びの多様化学校」を2026年度に設置します。
日本語指導が必要な生徒への支援: 拠点校を中心に、支援体制を強化します。
また、将来の生徒数減少を見据え、2040年には府立高校が現在の約130校から104校程度になるという試算が示されました。これまでの再編が刷新感に欠けていた反省から、今後は「地域の拠点校」や「複数の学科を持つ学校」を新設するなど、魅力が明確な学校づくりを進める方針です。
活発な意見交換
教育委員からは、様々な視点から意見が出されました。AIと教育: 井上委員(書面)は、AIを使いこなすには、質問力や判断力といった基礎学力と教養が不可欠だと指摘。中井委員は、先生方の負担軽減のため、公務作業にAIを活用すべきだと提案しました。
教育のあり方: 森口委員は、学校は「教える場」から「生徒が自ら学ぶ場」へと変わるべきだと訴え、少人数制や多様な人材によるマンパワーの充実を求めました。小崎委員は、探究的な学びが「学び方で学校を選ぶ」という新たな価値観を生み出すと述べ、学校と地域、企業が連携する「共同的な学び」の重要性を強調しました。
グローバル教育: 竹内委員は、全高校での海外姉妹校提携を高く評価しつつ、国際関係学科の学校は他言語教育など独自の特色を出す必要性を指摘しました。
知事からの総括
吉村知事は、人口減少を「ピンチではなく、個性ある学校づくりを進めるチャンス」と捉えていると述べました。AI時代に求められる「自ら考え、行動できる人材」を育てるため、各学校が特色を持つべきだと強調しました。具体的な取り組みとして、2028年度からの入試改革(複数校出願の実現)や、教育環境の改善を挙げました。特に、老朽化した校舎の建て替えや内装リニューアルを積極的に進める意向を示し、早期の実現に向けて現地視察を行う考えを表明しました。また、全府立高校での海外姉妹校提携を3年で完了させる計画を改めて確認し、府として全面的に支援していくと述べました。
試算の基礎となったのは、令和6年度中の出生数です。これより2040年の中卒数は約4.9万人となる見通しです。現在の約75%です。
https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/15603/202501_zentai.pdf
過去の出生数は変わりようがない数字です。社会増減(転出入)や私立中進学者の増減によって若干の上下はありますが、4.9万人は堅い数字です。
中卒者の人数が現在の約75%になるのに合わせると、公立高校の数は現在の136校から104校へと減少する計算となります。
ただ、あくまでこれは機械的な試算に過ぎません。地域毎に一定数の公立高校は必要でしょうし、学校数を減らす前にクラス数を減らします。
報道等では学校数の減少が強調されていますが、同会議では幅広い論点が「府立高校改革アクションプラン」として示されています。
特に議論したいポイントとして、資料では下記の論点が提示されました。
1.探究的な学びの推進(文理学科・文理探求科)
2.英語力の向上(国際関係学科)
3.時代に即した産業人材の育成(工業科・商業科・農業科)
4.不登校生徒の学びへのアクセス(不登校特例校)
5.日本語指導が必要な生徒への支援の充実
これらの「学び」を実施する高校は極力維持する一方、それ以外の高校は中学生の志望動向等によっては統合再編の対象となると読み取りました。吉村知事が強調した「個性」の生むが学校の行方を左右する格好です。
対象として取り上げられていないのは、いわゆる普通科高校です。現行の再編基準である3年連続して募集定員を割っている高校や、春日丘高校や狭山高校の様に文理探求科へ移行しない・できない高校が集約再編の候補となり得るでしょう。
上記資料で取り上げられている論点をそのまま完遂すると、最終的に普通科系公立高校が文理学科・文理探求科・国際関係学科へ集約される可能性すらあります。
なお、同会議では私立高校のあり方には触れませんでした。一般的な私立高校は普通科クラス・特進クラス・国際クラス・スポーツクラスが併存する形で構成されています。公立高校とは異なり、1つの高校に様々なクラスがあるのが特徴の一つです。
人口減少によって公立高校の数を減らすのであれば、それと同程度に私立高校の数や生徒数も減少するのが当然でしょう。生徒が集まりにくい実業系公立高校や周縁部の普通科高校ばかりが減らされ、生徒が集まりやすい都心部や鉄道沿線の私立高校が同規模のまま存続するのは、大阪の中学生(特に旧第3・第4学区)の選択肢を減らしてしまいます。
急激な少子化に伴って公立高校の数が減少するのはやむを得ません。どの様に減らしていくか、そして存続する公立高校での教育をどうやって高めていくかが重要でしょう。
過去に公立高校の説明会に参加しました。幾つかの高校では授業(模擬授業を含む)を参観する機会もありました。テンポ良く進む授業は充実しており、私自身の知的好奇心にも刺激を与えるものでした。
その一方で校舎の老朽化は深刻でした。特に水回りは酷く、目も当てられない学校もありました。高校生が日常生活を過ごす場所として決して適切ではありません。
学習内容等が充実していても、その発信は苦手だと感じました。特に学校説明会の案内やパンフレット等は貧弱な学校が多く、その学校の魅力・特性・学習内容・進路等がなかなか伝わりません。4ページ程度のリーフレットでは不十分です。

