大阪市立中央図書館の業務が大きく停滞しています。特に予約図書の貸し出しや返却された図書等を元の場所へ戻す業務が大幅に遅延しています。
中央図書館窓口等委託事業者の交代に伴う業務の停滞について
大阪市立中央図書館において、令和7年4月1日から、窓口等業務委託の受託事業者が交代したことに伴い、予約された図書等をお渡しするまで長期間お待たせしているとともに、返却された図書等を所定の位置に戻せていない状況が続いております。
これらの業務は委託の範囲であり、代わって市職員が当該業務を行うことができないため、図書館といたしましては、受託事業者に対し、遅滞なく業務を行うよう強く指導しております。
大阪市立図書館をご利用のみなさまには、必要とされる図書等を迅速にご提供できておらず、大変ご迷惑をおかけしておりますことをお詫び申しあげますとともに、ご理解いただきますようお願いいたします。
https://www.oml.city.osaka.lg.jp/key/2025/1020_2025050202.html
我が家も中央図書館を利用しています。子供は1階にあるこどもの本コーナーで本を探したり読んだりし、親はその周囲で別の本を読んでいます。館内は明るく、空間にもゆとりがあります。
大阪市に関する専門的な資料を探すのにも重宝しています。特に市政や市域に関する古い資料は真っ先にここで調べています。明治初期や江戸時代の資料も見つかります。
業務が大幅に遅延している原因は、窓口等業務の受託事業者が(株)図書館流通センターから(株)バックスグループ(博報堂グループ)へ代わった為です。
受託業者が作業に慣れておらず、人員も足りていないそうです。利用者目線でも中央図書館の職員は忙しいと感じています。図書の貸出窓口に長蛇の列が出来ている事もしばしばでした。
どうしてこの様な事態に陥ったのでしょうか。事実関係を整理します。
大阪市は図書館に関する様々な業務を外部に委託しています。エヌ・サーチよりここ5年間ほどの図書館窓口等業務委託に関する入札・落札情報を抽出しました。
これによると、各館の図書館窓口等業務はナカバヤシ(株)・(株)図書館流通センター・シダックス大新東ヒューマンサービス(株)の3社が受託していました。一度落札した図書館に関する窓口等業務は、概ね3年後に行われる次回入札でも各社が継続して落札していました。
しかし、これまで(株)図書館流通センターが受託していた中央図書館窓口等業務は(株)バックスグループが落札しました。(株)図書館流通センターも入札に参加しましたが、落札できませんでした。
(株)バックスグループは営業支援・販売促進・セールスプロモーションに特化した、質の高い人材アウトソーシング事業を展開している企業です。官公庁や地方公共団体向けの委託・派遣事業も積極的に受注しています。
(株)バックスグループが落札できた最大の理由は入札額です。
3年前の入札における予定価格は522,800,000円、落札した(株)図書館流通センターの入札額は479,880,000円、落札率は91.8%でした。
今回は予定価格を572,040,000円へと大幅に引き上げたにも関わらず、前回入札よりも大幅に安い422,385,120円で(株)バックスグループが落札しました。落札率は73.8%でした。ここ5年間における大阪市図書館窓口等業務の平均落札率は90.4%(最高98.5%~最低85.2%)を大きく下回っています。
更に各図書館の窓口等業務委託に関する予定価格は、前回入札よりいずれも引き上げられています。しかし、前回入札より低い価格で落札されたのは中央図書館のみでした。他の図書館では予定価格が引き上げに伴って落札額も見合って上昇しており、中央図書館だけが例外となっています。
予定価格の引き上げ及び平均的な落札率から推測すると、(株)バックスグループの入札額は(株)図書館流通センターより1億円程度低い金額だったと推測されます。
予定価格を大きく下回る落札額は、図書館窓口等の運営に要する様々な費用に影響が生じます。最たる物は人件費です。
(株)図書館流通センターは図書館業務のプロフェッショナルです。大阪市立図書館の窓口業務に慣れているとは言えない(株)バックスグループへと受託業者が代わり、職員は全員もしくは相当数が入れ替わったでしょう。
大阪市は「これらの業務は委託の範囲であり、代わって市職員が当該業務を行うことができない」と弁解していますが、責任は軽視できません。
関係職員は落札額の低さに驚いた筈です。これだけの低コストで図書館業務を遂行できるかと疑問に感じなかったのでしょうか。
様々な物価が上昇し、予定価格も引き上げられました。にも関わらず、落札額が前回より大幅に低かったのは異常です。公共建設事業へのダンピング入札や1円入札を思い出しました。
今後の行く末は見通せません。何らかのテコ入れを行わない限り、業務遅滞等を解消するのは難しいです。密接に関係する他図書館の業務にも支障が出ています。業務停滞が解決する目途が立たなければ、大阪市が業務委託契約を解除して違約金を請求する可能性も考えられます。
本当に困っているのは図書館の利用者です。必要な資料にアクセスできず、日常的な学習や調査に支障をきたしています。早急な対応を求めます。
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