(4/26追記)
大阪市の横山市長が「魅力的な街作りが人口流入に繋がっている」「子育てしやすい政策をやっていく」「出生率は国家レベルで投資すべきだ」との旨をコメントしました。

大阪市の横山市長は25日の記者会見で、「外から人が移り住むのは、魅力的な街づくりが進められているからなのかな、と思う一方で出生数が伸びていないのは大変な問題だと思う」と述べました。
また、「0歳から2歳までの子どもの保育料の無償化など、とにかく子育てしやすい街だと感じてもらえる政策をすべてやっていきたい」と述べたうえで、出生率の問題については「大阪だけじゃなくて、国家が直面している課題だ。国家レベルでもっと真剣に考えて徹底投資すべきだ」と指摘していました。

https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20240425/2000083931.html

一部の自治体だけで子育て支援や出生率に繋がる政策を行っても、他の自治体から子育て世帯が移住する結果となっているのが現状です。まさしく「子育て世帯の奪い合い」です。

若年層の流入が盛んな大阪市ですが、周辺ではワンルームマンションが急増している実態があります。不動産業者に事情をうかがったところ、「ワンルームマンションが著しく不足している。作ってもすぐに入居者で埋まる。」と話していました。

子育て世帯の定着を願うならば、より良い住環境の整備が必要です。狭くて高い住居しか得られないならば、子育て世帯が他自治体へ流出しても仕方ありません。保育料の無償化等は評価しますが、住居費や学校外教育費で消し飛んでしまいます。

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人口戦略会議から「令和6年・地方自治体「持続可能性」分析レポート」が公表されました。

「令和6年・地方自治体「持続可能性」分析レポート」「持続可能性分析結果リスト」が公表

大阪市はブラックホール型自治体とされるB-2(減少率20%~50%、かつ封鎖人口による減少率50%以上)に分類されています。人口の増加分を他地域からの人口流入に依存し、当該地域の出生率が非常に低い状態を示しています。まるで江戸時代の江戸ですね。

2020年の大阪市の人口は約275万人です。上記分析によると、想定される人口移動に基づく大阪市人口(2050年)は約243万人、移動がない封鎖人口の場合は約213万人に減少する見通しです。

この分類は肌感覚とも一致します。西日本最大の都市たる大阪市には、主に西日本各地から教育機会や仕事を求めて多くの若年層が流入しています。

しかし、大阪市の出生率は低迷しています。平成30年~令和4年人口動態保健所・市区町村別統計によると、大阪市全体の合計特殊出生率は1.16でした。最も高いのは鶴見区の1.50、低いのは浪速区の0.80でした。全国平均1.33を大きく下回っています。

我が家は大阪市でしか子育てした経験がありませんが、市内の子育て環境等には概ね満足しています。一方で数は少ないながら強い不満もあります。

子供の遊び場が少ない大阪市

未就学児を育てている期間の不満は「子供の遊び場」でした。地域にある公園は非常に狭く、ボール遊びや遊具遊びは満足に出来ません。何度も何度も区役所等に相談したのですが、満足できる回答はありませんでした。

一時は土日の度に大きくて遊びやすい公園を求め、市内外を転々としていました。北部は服部緑地公園(豊中))、南部は浜寺公園(堺市)がお気に入りです。どちらも鉄道アクセスは良好です。

住居費が高い大阪市

小学生の子育てにおける最大の不満は「住居費」です。とにかく住居費が高いです。ただでさえ高かった賃貸物件の賃料が上昇傾向、そしてマンションや一戸建ては言わずもがなです。

子供の人数を制約する大きな要因は「自宅の広さ」です。十分な広さと部屋数があればもう1人か2人か子供が欲しいが、狭くて諦めたと言う話は頻繁に聞きます。

反対に住居費以外の基本的な生活コストは安いと感じています。食料品を扱っている量販店は非常に多く、少し足を伸ばせば激安系のスーパーマーケットや商店街で買い物ができます。電気代も安く(原発再稼働が大きい)、水道料金も安いです。

公共交通機関も充実しています。自家用車が無くても生活には困りません。周囲には複数台の自家用車を保有している家もありますが、どういった場面で使っているかが不思議なぐらいです。

学校外教育費が高い大阪市

小学校高学年から中学生に掛けては「学校外教育費」が重荷となります。給食無償化により、学校内教育費はコロナ禍前より劇的に安くなっています。が、いわゆる「塾代」が辛いのです。

進学校への進学を意識している高学力層の多くは、進学塾等に通っています。年間数十万円、受験学年ともなると年間で100万円近くを要する塾もあります。子育て世帯の家計を著しく圧迫します。通塾期間が延びるほど、塾代が重くなります。

大阪府立高校入試は2016年度から高難易度問題(C問題)を導入しました。公立中学校の授業だけで対策するのは非常に難しく、塾通いを前提とする受験制度となりました。

大阪府の「C問題」:その難易度が府民を惑わす
https://note.com/asamorikdb/n/n25f5f57eb786

学力中間層や下位層にとっては、学校の授業についていくのが大変です。親世代によりも学習内容が広く深くなりました。「この分野は学習した覚えがない」「高校で学習した表現が中学英語で利用されている」のもしばしばです。

以前ながら授業だけで理解できていた学力層であっても、現在は学習塾等で補う生徒が増えています。肌感覚としては、大阪市内の中学生の通塾率は50%を越えています。

大阪市は毎月1万円を上限とする「塾代助成制度」を導入しています。現在は所得制限が設けられていますが、令和6年10月からは制限が撤廃されます。しかし、月1万円では焼け石に水です。

子育て支援と少子化対策は別

子供の遊び場や住居環境を重視する家庭の一部は、小学校へ入学する前に大阪市外へ転出する動きもあります。現にお世話になっている保育園でもそうした家庭が少なくありません。

住居費や学校外教育費はお金の問題です。子育て世帯が共働きで働き続けやすくなる環境整備(労働法制の強化や保育施設の充実)、そして子育て費用を賄えるだけの給与を得る必要があります。

気掛かりなのは支援策の偏りです。子育て支援策ばかりが打ち出されています。少子化対策として重要なのは婚姻率の上昇ですが、その前提としての結婚や交際等を支援する内容が皆無なのです。自力で結婚に辿り着けない若年層は、政府の支援対象から外されている様に見えます。