(1/17追記)
輪島市の中学生約250人が白山市へ向けて出発しました。
能登半島地震で大きな被害を受けた石川県輪島市の中学生が17日、保護者の元を離れ、約100キロ南に位置する同県白山市の宿泊研修施設への集団避難を始めた。学校再開の見通しが立たない中、整った環境での学びの機会を確保するためで、対象は輪島市立中全3校の約400人中、希望した約250人。珠洲市と能登町も同様の取り組みを検討している。
避難する中学生のうち、規模が大きい輪島中の生徒は17日午前、スーツケースやかばんを持って地元の道の駅に集まり、それぞれのバスに乗り込んだ。家族らは「メールしてね」「野菜食べてね」「勉強もするんだよ」と声をかけて見送り、生徒はバスの窓を開けて手を振った。
バスは、ほかの2校の生徒を道中で乗せて、白山市の「県立白山ろく少年自然の家」と「県立白山青年の家」に入る。金沢市付近に避難している生徒は、金沢駅発のバス2台で向かう。
輪島市は期間について、年度末を念頭に最大約2カ月間と見込む。授業については「本来のカリキュラムにできるだけ沿いたい」とするが、詳細は決まっていない。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d109ca48ed707b422b1f663b0affd99714e115b5
ポイントは「金沢市付近に避難している生徒」「最大約2カ月」「授業(の)詳細は決まっていない」です。
震災後、既に少なくない子育て世帯が輪島市を離れていました。学校を再開した珠洲市の小学校へ登校した児童が約半数だったので、残り約半数が現地を離れていたと推測できます。輪島市も同様の傾向でしょう。
また、金沢駅には2台のバスが手配されました。約70人がここから乗車すると見込まれます。
これらの情報から、輪島市内の中学生の避難行動を表(1/18修正)に落とし込みます。
1月16日まで / 1月17日以降 の予定 | 輪島市で避難生活 | 輪島市外で避難生活 | 白山市へ集団避難 |
輪島市で避難生活 | 約10人 | – | 約190人 |
輪島市外で避難生活 | – | 約130人 | 約70人 |
計 | 約10人 | 約130人 | 約260人 |
行動は3つに割れています。半分以上の中学生が白山市へ集団避難、次いで輪島市外で避難生活(現地の中学校への転校等を含む)、そして少数の中学生が輪島市に残りました。
集団避難は「最大で約2カ月」とされています。が、果たして2カ月後(具体的には新年度)から輪島市にて学校が再開できるのでしょうか。
学校が再開するには施設の安全確認・インフラ(水道・電気等)の復旧・児童生徒や教職員の住居確保が必要です。
石川県は「七尾市までの水道復旧に2カ月以上」としましたが、輪島市や珠洲市の復旧見通しは示しませんでした。
最大震度7を観測した能登半島地震で、石川県は16日、地震発生から続いている断水について、一部地域の復旧見通しを明らかにした。半島の中央部に位置する七尾市(断水約1万8700戸)で「2カ月以上」かかるとし、半島の先端にある輪島市や珠洲(すず)市などの復旧のめどは示されなかった。
https://news.yahoo.co.jp/articles/c8210e8efe0bdce78e05285b8091edbd006f1d66
輪島市等で水道が復旧するには更に長い月日が掛かるでしょう。多くの児童生徒が集う学校を再開するには水道が不可欠です。手洗いやトイレに不可欠です。
また、応急仮設住宅は「4月やGWがメド」としています。
石川県・馳浩知事「春の声が聞こえる4月、ゴールデンウイークを一つのめどにして、建設を急いで、まず入っていただける流れをつくりたい」
https://news.yahoo.co.jp/articles/74794718cdc7d1d3facbc2f0019758f9a1497503
これまでの災害復旧の事例を見る限り、先に入居するのは高齢者世帯となるでしょう。子育て世帯は後回しにされがちです。たとえ学校が再開しても、住居が無ければ児童生徒は戻れません。
仮設住宅の多くは学校の運動場に建設されます。学校が再開しても、運動場は殆ど使えません。
加えて白山市での授業内容等は未だ決まっていません。3年生は受験対策のみでしょうが、1-2年生が正規のカリキュラムに近い授業を行うには様々な準備が必要です。県教委や近隣学校の協力を求めるでしょうが、通常通りの授業を行うには時間が掛かります。
また、集団生活に伴う様々なトラブルにも先生方は対応しなければなりません。修学旅行や林間学校の際、先生方は殆ど寝られなかったと聞きます。これが2カ月も続いたら、身体が保ちません。先生方の交代要員も必要です。
(1/15追記)
希望調査の結果、輪島市の中学生約250人が白山市へ避難します。
輪島市は13日、能登半島地震を受けて調整している全3市立中の生徒約400人の集団避難に関し、保護者への意向調査の結果、半数超の250人が避難に同意したと明らかにした。移動時期など調整を本格化させる。同様に集団避難を検討する珠洲市と能登町も意向調査などを進めた。
輪島市によると、避難期間は最大2カ月程度を見込む。具体的な移動日程は未定で、県と協議する。県が受け入れを想定しているのは白山市の白山青年の家と白山ろく少年自然の家で、2施設では13日、生徒の食事を作る態勢確保や設備点検などが実施された。
https://news.yahoo.co.jp/articles/cd573495803dcf7e1c5efb6291fd952256359bfb
苦渋の決断ですが、少なくとも避難によって中学生の学習及び生活環境が向上するのは間違いありません。
詳しく報道されていませんが、この250人には既に輪島市外へ避難した中学生も含まれているでしょう。市外から白山市へ再合流する形です。
被害が大きかった珠洲市や能登町も追従します。
珠洲市は中学生が199人で、輪島市と同じ2施設での滞在を想定。15日ごろまでに保護者の意向を取りまとめる。能登町は約250人の生徒の保護者らに対し、避難方針をメールなどで周知。15日を期限として意向を集約する。
https://news.yahoo.co.jp/articles/cd573495803dcf7e1c5efb6291fd952256359bfb
現状は現地で学校が再開できる見通しは全く立っていません。4月なのか数ヶ月先なのか数年先なのか、未だ分かりません。
輪島市教委の担当者は「最長で2カ月」と話していますが、「1年も2年もインフラが完全復旧しない」と話している市民もいます。
「水も電気も出ないところにおっても、ひと月ふた月なら我慢できるけど、1年も2年も我慢できない。“避難が正しい”と思ったから従いました。20歳で嫁に来たからね。50年いました。離れるのはつらいけど、仕方ないです」
https://news.yahoo.co.jp/articles/7ea9d31ab0fdc79292f2b1ca9129470466346ff7
現地で学校を再開するには、学校の安全確認に加えて児童生徒や教職員の住居を確保する必要があります。応急仮設住宅の建設が始まっていますが、子育て世帯が入居できる時期は全く分かりません。
また、一部の仮設住宅は学校運動場に建設されています。年単位で学校活動が制限されるのは間違いありません。
避難生活の長期化を見越し、そのまま避難先の学校等へ転校する児童生徒もいるでしょう。バラバラになっていく様は東日本大震災で経験しました。
(1/12追記)
輪島市は市内の中学生(希望者)を、同県白山市にある「白山青年の家」「白山ろく少年自然の家」へ避難させる方針です。事実上の疎開です。
対象は市内3校に通う全ての生徒。12日までに保護者の同意を得られれば、教職員とともに「白山青年の家」か「白山ろく少年自然の家」に避難してもらう。いずれも宿泊ができる県の施設で、市教育委員会によると、これらの施設や周辺の中学などで授業を行うことを検討するという。
輪島市から避難先へは道なりで約150キロも離れています。
能登半島北部からの移動には相当の時間を有するでしょう。子供の様子が気になっても、日帰りで会いに行くのは難しい距離です。
また、多くの子供が避難したであろう金沢市から離れているので、避難先から通学する選択肢は選びにくいです。寝食を共にする形で合流するしかありません。
しかしながら大勢の中学生が生活をし、かつ学習に集中できる施設は限られています。特に県教委が所管する施設ともなると、こうした宿泊施設ぐらいなのでしょう。
意向調査の締切は本日12日13時までとされています。急な話ですが、それだけ急いで移動させたい事の裏返しです。早ければ日曜日ないし月曜日に移動できます。
保護者や子供は迷っています。意見は割れています。
「離れがたい気持ちもよく分かるが、少しでも暖かいところで過ごしてほしい」
「もう少しで道は通れるようになると思う。ここで辛抱したい」
「食料や水も十分じゃない。子どもを生活させるには不安で、白山市に行けば勉強はできるし助かる」
「両親も、私たち夫婦も、そばに子どもがいるから『頑張ろう』という気力が湧いてくる」
「中学生の授業内容はどんどん進むので、一度置いていかれると高校入試にも影響が出る。学習機会を提供してもらえるのはありがたい」
「親としては行ってくれたほうがいい」
「友だちが行かないと言っているから、自分は輪島に残りたい」
「先が見えない状況。学習が遅れないよう、安定した環境で生活したほうがいい」
「親しい人が周囲にいないことによる精神面への影響も心配です」
「集団で避難することは仕方ないと思うが、ちょっと急すぎる」
「小学生への支援を含め、市教委は早く方針を固めてほしい」
学習機会の提供や落ち着いた生活環境というメリットがある一方、地元に残る保護者や友人と離れ離れになるデメリットがあります。
我が家が当事者だったら、恐らくは子供だけで行かせます。子供が避難所で避難生活を送るメリットは皆無です。実家へ疎開させる事も含め、子供が落ち着いて生活や学習できる環境を第一に考えます。
市教委は2カ月後に戻りたいとしています。少なくとも3学期は疎開先で生活・学習し、次年度の方針を春休みに改めて検討するのでしょう。
外部から被災地の状況を見る限り、新年度に全ての学校が再開できるとは考えにくいです。損壊が軽くてライフラインが復旧し、かつ避難所としての役割を終えた学校に限って授業等を再開するのが精一杯だと見ています。
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石川県輪島市は市内の中学生約400人を集団避難させようと検討しています。
【令和6年1月9日 14時00分現在】
〇中学生の集団的避難
輪島市から中学生の集団的避難についての打診があり、受け入れに向けて調整中
https://www.pref.ishikawa.lg.jp/saigai/documents/0109kyoui.pdf
より具体的な内容がNHKニュースに記載されています。
石川県教育委員会は、地震で大きな被害を受けた輪島市内の中学生約400人について、希望する生徒全員が、県内のほかの自治体に避難できるよう調整を進めています。
輪島市内にある3つの中学校は、今回の地震で避難所として使用されていて、授業を再開するめどが立っていません。
3校ではあわせて約400人の生徒が通っていましたが、石川県教育委員会によりますと、輪島市から、希望する生徒全員を県内のほかの自治体に避難させてほしいと、打診を受けたということです。
県教育委員会は、これを受け、避難先の調整を進めているほか、被害の大きかった珠洲市や能登町、穴水町などからも打診があれば同様の調整を行うとしています。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kanazawa/20240110/3020017972.html
輪島市内には輪島中学校・東陽中学校・門前中学校の3中学校がありますが、いずれも避難所として利用されています。校舎の安全確認や生徒や教職員の安否確認も十分に行われておらず、現地で再開する見通しは全く立っていません。
また、既に中学生を含む多くの子供は、既に金沢市へ避難しているそうです。
市立輪島中学校に避難する中学1年の男子生徒(13)は、新学期の開始遅れに、「さみしいし、友達にも早く会いたい」と話す。友人とはラインで連絡を取っているが、多くは金沢市に避難していて会えないという。同じく避難してきた友人とは再会を果たし、「顔を見て安心した」と表情を緩めた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/54cde574bcaf22d83644267781e3f8e435cd1c9d
東日本大震災でも津波や原子力発電所から逃れる為、多くの被災者が県内の中心都市(仙台市・福島市・郡山市等)へ逃れました。これと同じ事態が起きているのでしょう。
様々な事情を勘案すると、恐らくは金沢市内の公共宿泊施設へ集団避難し、廃校になった学校(金沢城に近い旧小将町中学校など)を利用して教育活動を再開する可能性が考えられます。既に金沢市内へ避難している中学生も通学できます。
能登半島北部の被害は甚大です。地域によっては東日本大震災と同程度に避難生活が長期化する恐れが高まっています。
子供の教育は待ったなしです。十分な学習機会が得られない窮屈な避難所生活よりも、親元を離れてでも同じ中学校の友人達と共に学習する生活の方が望ましいのは言うまでもありません。
今後は他自治体や高校生・小学生でも同じ様な動きが生じるでしょう。
問題は移動手段です。平時の修学旅行等とは異なり、大勢の中学生を移動させるのに適切な交通手段は極めて限られています。当然ながら大型バスは現地に入れません。
自衛隊等の車両に分散乗車して適当な場所へ移動し、そこから大型バス等で金沢市等へ移動するのが無難だと感じています。1日で400人が移動するのは難しいかもしれません。
また、希望者を募るとしていますが、そもそも確認作業も困難です。
一方、大阪で同じ事態が発生したケースも考えてみました。市内の中学生約1万人弱を一括して受け入れられる近隣自治体はありません。幾つかの自治体や地方に分散せざるを得ないでしょう。
ただ、そうした動きが本格化するには相当の時間が必要な筈です。我が家は待っていられません。両親どちらの実家へ小中学生だけでも避難させ、現地の学校へ転入させようと想定しています。