悪しき前例が長野市で生じています。

特定の近隣住民から長年に渡って「遊園地(大型の公園)で遊ぶ子供の声がうるさい」という苦情が続き、時には子供の手を引っ張って注意した事もありました。

萎縮した利用者の足が遠ざかり、草刈り活動等も取りやめられ、存続を望んでいた地元区町会が「利用者がいない公園を存続させる必要が無い」と主張するまでに追い込まれました。

「子どもの声がうるさいからって公園を廃止してしまって良いのでしょうか?」。本紙「声のチカラ」(コエチカ)取材班に長野市民から疑問の声が寄せられた。都会では子どもの声を嫌って保育園などの用地が確保できない事例があると聞く。いったい何があったのか。現地を訪ね、関係者に話を聞いた。(牧野容光)

■「長い間ご利用いただき、ありがとうございました」と張り紙

 公園は長野市青木島町大塚にある青木島遊園地。小学校の体育館一つ半ぐらいの広さで閑静な住宅街にある。記者が初めて訪れた11月中旬はツツジやケヤキが見事に紅葉していたが、遊び回る子の姿はなかった。

 ふとフェンスの張り紙を見ると「青木島遊園地は、令和5年3月31日をもって廃止いたします」とあった。市役所が作った張り紙だ。原状復旧工事のため今月ごろから閉鎖するとし「長い間ご利用いただき、ありがとうございました」と結んでいた。

■多くの子どもたちにが遊ぶ公園、地元の要望を受けて開設

 管理する市公園緑地課を訪ねた。平沢智課長は「多数の子どもが訪れ、かなりの音が出ていたことが、廃止の一因であることは事実」と説明。隣には児童センターや保育園があり、子どもたちの格好の遊び場。それだけに平沢課長も「断腸の思い」とした。

 同課によると、青木島遊園地は2004年4月に地元から要望を受けて開設された。放課後には児童センターで過ごす大勢の子どもたちが遊びに来た。夕方の遅い時間帯には保護者たちのお迎えの車が相次いで出入りした。

 だが、まもなく一部の近隣住民から「うるさい」「子どもたちが走り回ってほこりが舞い、車が汚れる」などと苦情が出るようになったという。

■対策を講じたものの

 そこで市は数年かけて対策を講じた。苦情を寄せた住民の家に子どもがなるべく近づかないよう、園内に最大8メートル幅の帯状にツツジを植えた。出入り口の位置も変更。児童センターでは、子どもを迎えにきた保護者にエンジンを止めるよう呼びかけた。だが、苦情は収まらなかった。

 遊園地廃止は昨年3月、苦情を寄せる住民が児童センターを直接訪れ、遊園地で子どもが静かに遊ぶ方法を考えるよう求めたことが直接の決め手になったという。(中略)

■市は「一部住民に負担強いた」と重く受け止め

 子どもの声がうるさいと苦情を寄せた住民の家を訪ね、取材を申し込むと「これまで市役所に伝えてきた通りだ」と硬い表情で答えた。

 市公園緑地課の平沢課長は「開設から18年もの間、一部住民に負担を強いてきたことを重く受け止めた」。地元区長会の宮沢弘明会長も「廃止はやむを得ないと考える」と話す。

■よく遊ぶ子どもの親「新築の決め手だったのに…」

 一方、「残念でならない」と嘆くのは長女(3)と長男(1)を連れて遊園地でよく遊んでいた会社員女性(32)。昨年3月、近くに自宅を新築。「遊園地の存在が決め手の一つだったのに」と明かす。(以下省略)

https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2022120200129

青木島遊園地は長野市南部にあります。川中島古戦場の近くです。千曲川や犀川に挟まれ、古くは小島や中洲が点在していた地域だったのでしょう。

遊園地は青木島小学校や青木島保育園に隣接しています。多くの子供達がこの地区で過ごしています。保護者にとっても


言うまでも無く子供の遊び場は非常に大切です。特にこうした広い公園は身体をしっかりと動かせるので、貴重な存在です。大阪市内視点では羨ましい限りです。

一方、子供の声は騒がしいのも事実です。甲高い声、無秩序に騒ぐ声、更には時に大人の大声も重なります。余りのうるささに耳を塞いでしまう事も有ります。

ただ、「うるさい」からと言って公園の閉鎖を要求し、それが通ってしまうのは異常です。こうした事例は他に聞いた覚えがありません。

経緯や背後事情等は、長野市会議員である小泉一真氏が自身のツイッター等に掲載しています。

同議員が情報公開制度で入手した資料が詳しいです。

廃止を強硬に主張している近隣住民は、「開設する説明が無かった」「騒音に苦しんでいる」「ボール飛び込みや植栽荒しが重なった」「指導者の拡声器の下、40人以上の児童が一斉に遊ぶ事も有った」「常識外れの使い方」「100台の送迎車」「遊園地の廃止には大賛成」と主張しています。

これに対し、利用者や関係者は「ここでは遊べない」としています。

本当はこの公園で遊びたいにも関わらず、「苦情により自由に遊べない(こども政策課)」「苦情を言われたので一切遊ばせていない(児童センター)」「会話をしない0歳~1歳児のみが遊んでいる(保育園)」「苦情があったので利用していない(小学校)」「どんと焼きは1回で止めた、子供に声を出すのを止めてくれというのは理不尽(区長会)」としています。

皆が特定の近隣住民による抗議活動を恐れ、萎縮しています。それもその筈、近隣住民(苦情者)がボール遊びをしていた子供の手を引き、「ボール遊びは禁止だ」と言った事例もありました。

https://www.slideshare.net/kazumakoizumi1/2-254460162

親の視点からは恐怖そのものです。誰か分からない近隣住民が子供の手を勝手に引いていくなんて。誘拐紛いの行為です。子供に「近所の人が怖いから、あの公園で遊ばないで」と言ってしまいそうです。

区長会も当初は「苦情で遊園地を無くすのはおかしい」「理不尽な話に簡単に屈するような姿勢がおかしい」と主張していまいた。

が、度重なる苦情に誰しもが付かれてしまいました。「(草刈りなどの)愛護会はできない」「利用出来ない遊園地を残しても仕方ない(区長会)」という意見で集約され、廃止するに至りました。近隣住民の度重なるクレームに長野市が屈した格好です。本当に残念です。

近隣住民に対して、長野市も最大限の配慮を行ってきました。住宅との間に幅広の草地を整備し、駐車場や出入口の場所も変更しました。更に道路にカラーコーンを置いて路上駐車を抑制する、防音壁を設置する、利用者に車での送迎禁止を呼びかける、といった対策も考えられます。

度を超した苦情に長野市が毅然として対峙すれば、遊園地を廃止するという結論にはならなかったでしょう。

近隣住民が法的措置に訴えても認められることはないでしょう。特定の近隣住民以外は全員が遊園地の存続を望んでいました。

確かに子供の声は五月蠅いです。が、子供はうるさいものです。それが成長にとって不可欠です。誰しもがそうした時代を経て、大人になっていきます。

近隣住民は理不尽な苦情が通ってしまいました。次は「児童センター・保育園・小学校がうるさい、移転しろ!」と言い出しかねません。

他の地域でも同様の苦情が生じる恐れがあります。「青木島遊園地を廃止したのだから、目の前にある○○遊園地も廃止できるだろ」と。

様々な意味で悪しき前例となる結論でした。