官邸で行われる首相会見に参加できるのは限られた記者(1社1人、フリーランス等は抽選)、そして質問は1人1問に限られています。

一方、首相が歩みを止めて行うぶら下がりでは、こうした制限はない(緩い)そうです。

首相会見に参加できなかった記者が、首相に追及を繰り返し(更問)、首相がイライラする場面がありました。

首相、記者団の取材にいら立ち 立て続け質問、注意促す

 菅義偉首相は21日、官邸で記者団の取材に応じた際、社名を名乗らず立て続けに質問しようとした記者を「ルールを守ってください」と遮り、後方で控えていた小野日子内閣広報官らに「はっきり言ってください」と注意を促すなど、いら立ちをあらわにした。

 首相が就任して以降、質問のたびに社名と氏名を名乗るのが通例となっている。記者は来日した東京五輪・パラリンピック関係者と、一般国民の動線が混在していると指摘し、「命を守る」との首相の主張とは実態が異なっているのではないかと繰り返した。

 首相は取材を終えて官邸を出る際、秘書官に向かって叱責するなど怒りが収まらない様子だった。

https://news.yahoo.co.jp/articles/76e8a92204f2ef3bc37c5adccc192b29edd018ed

動画がアップロードされています。

共同通信の記事には「社名を名乗らず」とありますが、記者は1問目の質問を行う際に「総理、TBSラジオの澤田です」と名乗っていました。

以下、澤田記者との質疑部分を書き起こしました。正確な内容は動画(2分40秒頃から4分過ぎまで)を見て下さい。

澤田
総理、TBSラジオの澤田です。今日の東京の1日の感染者数は1832人になりました。総理はこの間会見等でですね、国民の命、生命を守るのが総理の責任だとおっしゃっていましたが、
これだけ感染者が増える中でオリンピックパラリンピックを開催することで国民の生命は本当に守れるのでしょうか?

総理
そこは守れると思っています。ぜひ分析をして欲しいです。今日も1000人を超えていますが、65歳を超える、重症化の一番多いと言われる高齢者の感染者は4パーセントを切っています、数字がしっかりと表してくれている、ワクチン接種は大きな効果が出ていると考えています。

澤田
総理、引き続き澤田です。この会見の中でこれまでオリパラ関係者は一般国民とは動線が異なるから安心なのだとおっしゃっていたが、今バブルが機能していない、動線が一緒になっているところが見られるとの報道がある、言っている事と異なっているのではないでしょうか。

総理
ここについてはIOCにもしっかり対応して欲しい。組織委と連携してしっかり守っていく。

澤田
異なっていたという事はお認めになるのでしょうか。

総理
(手を上から下へ下げる動作をしながら)ちょっとルールを守って下さい(いらついた表情)。

小野広報官?
社名を・・・・

総理
はっきり言って下さい(睨む様な表情)。

小野広報官?
社名をはっきり言って下さい。

澤田
TBSラジオの澤田です。あの動線が別になっていると言う事をおっしゃっていたのですが、一緒になっていると言う事はお認めになるのでしょうか。

総理
私も視察をして徹底する様に言ってますので、それはIOCのルールの中にもありますから、しっかり徹底できる様にしたいと思います。(以下省略)

感染者が急増する中でのオリパラ開催によって国民の生命は守られるのか、動線分離やバブルの有効性、これらに対する総理の認識は国民が知りたい情報です。

1問目の質問に対しては「守れる、ワクチンが効果を挙げて高齢者感染割合が減少してる」と回答しています。内容は別として、質問とは噛み合っています。

一方、2問目の「言っている事と異なっているのではないでしょうか」という質問に対し、総理は「しっかり対応して欲しい、しっかり守っていく。」と答えました。質問と噛み合っていません。

ここで澤田記者が同じ質問を更問をするのは自然な流れです。総理の決意表明を聞きたいのでは無く、現状に対する認識を訊ねているわけですから。

しかし、総理がイライラした表情をするのは意外でした。質問を繰り返されるのがそれだけイヤだったのでしょうか。

また、名乗らないのは当然です。目線を合わせたままで質問を続けているわけですから。

総理が「ちょっとルールを守って下さい」を指摘したのは、「更問をしないで欲しい」というルールなのかもしれません。ただ、ここは首相会見ではなく、ぶら下がりです。更問禁止というルールはありません。

最後には「徹底できる様にしたい」と答え、「異なっているのでは無いか」との質問を事実上認めた形となりました。

この部分のやりとりの一部を夜のNHKニュースで見ていたのですが、質問する声を聞いて「澤田記者ではないか」と思ったら、案の定当たりでした。

TBSラジオの澤田大樹記者は、オリパラ関係で本質に迫る質問を繰り返す事で(一部で)有名です。

女性蔑視発言に関する森会長からの逆質問に対して「私は適任ではないと思います」と返したのも、山田広報官の接待問題が報じられた直後に総理へ質問を繰り返して逆ギレさせたのも、IOCのバッハ会長に「プレーブックが守られていないという報道がある。すでにリスクが持ち込まれているのでは。約束違反では」と迫ったのも、全て澤田記者でした(逆ギレは他の記者数人と合同)。

本日の総理への質問には伏線がありました。7月16日に放送された「アシタノカレッジ(TBSラジオ)」で澤田記者が担当している「ニュースエトセトラ・アフタートーク」にて、「そもそも記者の仕事とはなんぞや」と振り返っていました。

伏線の一つはバッハ会長への「プレーブックが守られていない、リスクが持ち込まれている、約束違反ではないか?」という質問でした。同じ内容を菅首相にも投げかけました。2人の回答を対比させたい意図もあったのでしょう。

番組内では若手ばかりの首相番・セクショナリズム・記者の振る舞い(ネットで見られて批評されている)に対する問題意識を指摘し、バッハ会長への質問内容に関する意図にも触れています。

本日の菅首相とのやりとりは今週金曜日(7月23日)の同コーナーにて取り上げられる筈です。五輪の開会式が終わろうとする時間です。

なお、本日のぶら下がり後、澤田記者は怒られたそうです。

今後もめげずに訊ねて欲しいです。sessionとアシタノカレッジいは遠い大阪からラジコで聞いています。

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