大阪市廃止・特別区設置住民投票は、賛成675,829票、反対692,996票という結果になりました。

反対票が17,167票上回りました。反対多数で否決です。


https://www.city.osaka.lg.jp/contents/wdu240/sokuho/kaihyo_data_10.html

住民投票に関して感じた事を幾つか書きます。

前回に続いて南北問題が

前回の住民投票に引き続き、今回の住民投票でも地域差が如実に表れました。

湾岸部や南部の区は反対一色、北部の区はほぼ賛成という構図です。「南北問題」とも言えそうです。


https://digital.asahi.com/articles/photo/AS20201102000096.html

色分けは5年前の住民投票とほぼ同じでした(東成区を除く)。区割りの変更と投票行動との関係は薄かったと推測されます。

大阪市内で生活していると、この色分けは「やっぱりそうだなあ」と感じてしまいます。

賛成多数(青色)の地域は経済活動や再開発が盛んです。オフィスビルや大型マンションの供給が多く、様々な物・人・金がやってきます。

子供の数が増え、保育所等が不足している地域も多いです。利便性が高くて経済活動が盛ん→共働きする子育て世帯が転入→保育需要の増加、という図式です。

住民投票では年代が低いほどに賛成票が多い結果となりました。

こうした地域は平均年齢が低く、経済成長を重視する人間が多く、賛成が多かったのでしょう。

反面、反対多数の地域は経済活動が停滞気味で、再開発も一部地域に留まっています。

人口の流動性も決して高くありません。子供の数が急減している地域も多いです。平均年齢も高めです。

こうした地域では住民サービス低下を恐れる声が強く、そして大阪市廃止によって取り残されるのを心配したのでしょう。また、「大阪市」が無くなる事への心理的抵抗感もあったと考えられます。

動かなかった公明党

住民投票の告示以来、街中では様々な政党や組織の活動を目にしました。しばしば目にしたのは、維新・自民・共産・れいわ新撰組の動きでした。

その反面、全く見かけなかった政党があります。公明党です。

議員選挙等では公明党の支持組織は活発的に活動しているのですが、今回の住民投票ではどこでも見かけませんでした。、

組織が動いていないのか、それとも末端で活動する人間がそっぽを向いたのかは分かりません。

前回の住民投票とは異なり、公明党は「賛成」としました。が、出口調査では支持層の約6割が反対に投じたそうです。

支持層の反発も強かったそうです。大阪では維新と公明が激しく反発しつつ、全面対決を辛うじて避ける動きが続いていました。

今回は維新の脅しに屈したとも報じられており、公明支持層が反発するのも仕方ありません。ましてや公明党は福祉を重視する政党です。

「維新に尻尾振るなんて」 都構想、反発した公明支持層
https://digital.asahi.com/articles/ASNC17FPTNBZPTIL027.html

また、無党派層の反対も前回より増加しています。「れいわ新撰組の山本太郎の演説が効果を上げたのではないか」と指摘する声が出ています。

コロナ禍での住民投票

解せないのはこれです。

新型コロナウイルスへの感染予防が最重視される時期に、住民投票を行った事への反発をしばしば耳にしました。

「今は大阪都構想よりコロナ対策が重要では?」とは正論そのものです。

この時期に住民投票を強行したのは、恐らくは2025年の万博開催までに大阪市を廃止して大阪府へ一本化したかったのでしょう。

また、衆議院議員選挙で公明党の現職議員が存在する選挙区へ維新が候補者を立てない代わりに公明党が住民投票に賛成するとの約束を果たす為、衆議院議員選挙より先に住民投票を行う必要があったとの指摘もありました。

住民投票の告示前後から、大阪府の吉村知事からコロナ予防に対する積極的なコメントは聞こえなくなっていました。

住民投票に前のめりになっている間に、大阪府内のコロナ陽性者は急増しています。

投票当日たる11月1日の新規陽性者は、全国で最も多い123人となってしまいました。

この週の陽性者は前週より1.5倍以上へと急増しました。コロナ対策を軽視していたのは否めません。

大阪コロナカレンダー
月  火  水  木  金  土  日  週計 平均 合計
06/22~ **0 **0 **2 **1 **2 **2 **5  **12 **2 *1,821
06/29~ **7 **5 *10 **8 *11 *17 **6  **64 **9 *1,885
07/06~ **8 *12 *10 *30 *22 *28 *32  *142 *20 *2,027
07/13~ *18 *20 *61 *66 *53 *86 *89  *393 *56 *2,420
07/20~ *49 *72 121 104 149 132 141  *768 110 *3,188
07/27~ *87 155 221 190 216 195 194  1258 180 *4,446
08/03~ *81 193 196 225 255 178 195  1323 189 *5,769
08/10~ 123 102 184 177 192 151 147  1076 154 *6,845
08/17~ *71 185 187 132 166 134 121  *996 142 *7,841
08/24~ *60 119 119 *94 106 *90 *62  *650 *93 *8,491
08/31~ *53 114 *96 *74 *74 *76 *67  *554 *79 *9,045
09/07~ *45 *81 *63 *92 120 *83 *77  *561 *80 *9,606
09/14~ *32 *89 *78 *57 *60 *81 *59  *456 *65 10,062
09/21~ *39 *67 *39 *66 *62 *66 *48  *387 *55 10,449
09/28~ *36 *51 *59 *76 *50 *51 *48  *362 *52 10,811
10/05~ *31 *59 *51 *49 *58 *52 *45  *345 *49 11,156
10/12~ *26 *69 *61 *51 *53 *50 *50  *360 *51 11,516
10/19~ *41 *65 *82 *78 100 *96 *70  *532 *76 12,048
10/26~ *43 142 117 125 137 143 123  *832 119 12,878

また、コロナ対策としての特別定額金(10万円)の支給の遅れへの反発、そして未就学児を育てている世帯向けの臨時給付金(5万円)の支給対象から公務員が外れた事への抵抗感も感じられました。

目先の行政課題よりも住民投票が優先されてしまった事への反発です。

住民投票は終了し、大阪市廃止・特別区設置は否決されました。

この話はこれで終わりにして、早急にコロナ対策や経済・福祉政策を進めてもらいたいです。大阪市民の疲弊感は酷くなっています。

松井市長のレームダック化?

気掛かりなのは、松井市長が「残り2年半の任期を務めて政界を引退する」との主張です。

裏返すと、まだ多くの任期が残っている段階でレームダック化してしまいかねません。

教育や保育と言った分野でさえ、様々な課題が残ったままです。保育所は未だに不足している地域が多く、教育は学力低迷や学校統廃合問題は積み残されています。

最大の政治課題が否定され、任期満了後の引退を早々に発表した市長が、果たして熱意を持って大阪市の舵取りを行えるのでしょうか。心配です。