大阪市立田中小学校の首席教諭(38歳)、22時に飲酒家庭訪問・児童に暴行の続報です。
大阪市から大阪市立田中小学校に勤務する当該首席教諭、及び直前まで共に飲酒していた吹上達夫校長に対して懲戒処分を行った旨が発表されました。
大阪市教育委員会は、所管する小学校の首席及び校長の2名に対して、本日付けで次のとおり懲戒処分を行いました。
1 被処分者
(1) 大阪市立小学校 首席(38歳)
(2) 大阪市立小学校 校長(59歳)2 処分年月日
平成29年6月8日3 処分内容
(1)の懲戒処分として、停職3月
(2)の懲戒処分として、(1)の上司であった校長に対し、管理監督責任として、戒告4 処分事由概要
(1)の被処分者は、平成29年5月12日(金曜日)、午後6時頃から同僚教諭らと飲酒した後、同日午後10時頃、被害児童宅を訪問し、家庭用太鼓ゲームに使用する撥で当該児童の背中や肩を30回程度叩くなどし、打撲による全治1週間程度の怪我を負わせた。
また、当該児童がトイレに逃げ込んだ後も、大声を出し、トイレの扉を叩くなどし、扉の一部を破損させた。
なお、当該児童の保護者から退去させられた後も、15分程度、玄関扉を叩く、インターホンを鳴らす等の行為を行った。
一方、(2)の被処分者は、平成29年5月13日(土曜日)、当該首席の暴力行為を把握したにもかかわらず、同日授業を行わせる等、管理、監督を怠った。http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/kyoiku/0000401930.html
飲酒後の深夜家庭訪問・児童への長時間の暴行・児童宅の器物の損壊は、許される行為ではありません。教員・社会人として決して許されない行為でしょう。
なお、当該首席教諭の氏名等は把握しております。様々な事情を踏まえ、現時点では掲載しません。
懲戒処分は妥当?
では、「停職3月」とは懲戒処分として妥当なのでしょうか。大阪市職員基本条例に「非違行為の類型」と「懲戒処分の種類」が掲載されています。
当該教諭の行為は下記の類型・処分に該当しそうです。
項番号 | 非違行為の類型 | 懲戒処分の種類 |
65 | 暴行を加えて人の身体を傷害すること | 停職又は減給 |
66 | 故意に他人の物を損壊すること | 減給又は戒告 |
69 | 公共の場所又は公共の乗物において、酒に酔って公衆に迷惑をかけるような著しく粗野又は乱暴な言動を行うこと | 減給又は戒告 |
子育て世帯の感情としては「免職相当、少なくとも2度と教壇に立たせるべきでは無い」と感じます。が、規定においては裁量権の上限に近い処分を行ったと言えそうです。
では、「停職3月」という懲戒処分が行われたのは、他にどの様な事例があるのでしょうか。
・女性職員に対して執拗にLINEメッセージを送信、数十回も無断で動画を撮影した
・教育次長(市教委ナンバー2)が女性職員にカラオケ店でセクハラをした
・勤務中に敷地内で常習的に喫煙した
・禁止されているうマイカー通勤を繰り返した
・決裁を経ずに公文書を不正に作成し、市長や上司の公印を無断で押印した
大阪市職員に対する懲戒処分は決して少なくありません。毎月の様に行われており、「またか」と感じてしまっています。
生涯給与は1000万円以上のマイナス!出世コースから脱落
では、停職処分によって、当該教諭はどれだけの不利益を被るのでしょうか。「停職期間中は給与が支給されない」だけでは済みません。
桜宮高校での体罰による自殺事件等を受け、大阪市は「体罰・暴力行為の防止及び発生時の対応に関する指針・児童生徒の問題行動への対応に関する指針」を作成しました。
この中に「処分等の給与等への影響一覧(H25 年4月現在)」という項目があります。
分かりやすいのは「生涯獲得賃金への影響」です。これによると、30歳の府費教諭が停職1月の懲戒処分を受けた場合、生涯獲得賃金が「430万円以上」も減少すると試算されています。
児童への体罰等で処分を受けたのは、38歳の首席教諭です。次の次は教頭、その後は学校長や市教委指導主事等の枢要ポストを歩む可能性もあったでしょう。
生涯獲得賃金への影響は、少なくとも1000万円前後に達するでしょう。それ以上に「不祥事で出世コースから脱落した」という喪失感を強く感じているのではないでしょうか。
教員・志望者から敬遠される大阪?
教員による不祥事は後を絶ちません。その一因として指摘されているのが「優秀な人材の流出、受験生からの敬遠」です。
今週発売されたAERA(2017年6月12日号)に「維新の大阪から教員が逃げていく」という記事が掲載されています。
https://twitter.com/bigcamellia/status/871941999170957313
記事では、良心的な教育者が大阪の教育に距離を置き始めている実情にも触れている。
私立高校の理事長が「大阪府立高校をやめたベテランの優秀な教員が流れてくるので(自分たちの学校経営としては)助かっている」と話したという。
また、教員養成大学の教員が「教え子を大阪の公立学校には送り込みたくない」として、指導している教員志望の学生に対して、大阪府・大阪市以外での教員採用試験の受験を勧めている事例が多数あることも指摘されている。
記事では触れられていないが、維新の府政・大阪市政になってから、教員志望者が大阪府・大阪市の教員採用試験の受験を避け、近隣府県の教員採用試験を受験する傾向が強まっていることも事実である。
大阪生まれ大阪育ちで大阪で教員になりたいと思っていても、維新が教育現場を締め付けている限りは夢をあきらめざるをえないとして、こういう状況になっている。また現職の教員も、条件がある人は他県や私立に流出する事例も増加している。
当該首席教諭が採用されたのは、2002-4年頃だと推測されます。当時は就職氷河期の真っ最中で、民間企業・公務員試験のいずれも過酷な倍率だったでしょう。
しかし、優秀な教員が徐々に抜け、同時に将来有望な学生から避けられつつある現在、残っている教員の質への影響は避けられません。
大阪市の吉村市長は子育て世帯・現役世代への重点投資を掲げています。保育施設の大規模整備・4-5歳児教育費無償化はその一例です。
しかし、多くの子育て世帯が願っているのは、「ほぼ全ての子供が通学する公立小中学校の充実」です。優秀な教員の確保・施設の整備・教育カリキュラムの充実はその根幹です。
対策を拱いていると、子供の教育に関心がある世帯から大阪市外へ続々と転出してしまいかねません。市内中心部へは子育て世帯の流入が相次いでいますが、実は子供がいる世帯の転出が少なくありません。
今回の暴行事件から、大阪市立学校が抱える課題が垣間見えてきます。