多数の私的契約児の存在・必要量の半分にも満たない食事・保育士の水増し&業務外労働の強制が明らかになったのが、「わんずまざー保育園」(こども園・姫路市・小幡育子園長)です。

スプーン1杯のおかず・私的契約・保育士水増し・・・わんずまざー保育園(こども園・姫路市・小幡育子園長)
【わんずまざー保育園】紛糾する説明会・定員外園児からも給食費徴収・闇ベビーシッター

こうした辞退の露呈を避ける為に周到な隠蔽工作を行うと共に、保育士に対して罰金・無給勤務を科す裏契約を交わしていた事が明らかになりました。

周到に隠蔽か 姫路市の抜き打ち監査で判明

兵庫県姫路市の私立認定こども園「わんずまざー保育園」は19日、数多くの法令違反を市から指摘された。待機児童解消に全国で設立された認定こども園だが、行政の監督には限界があり、市の担当者は「事業者指導を今後さらに厳しく運用していく」と監視を強める考えだ。

市は昨年1月に「園児数が多い」とのうわさを基に、園側を問いただしたが、その時は書類に不審な点はなかったという。しかし、当時から市には届け出をしていない定員外の園児がおり、市は「用意周到に矛盾点が出ないようにしていたのではないか」と話す。

今年2月初旬、事前通知をした後、2015年4月の認定後初の定期監査を行った時も、園児数は定員以下。だが、給食量の少なさや、室内温度が14度前後と低いことなど不審点があり、約20日後に抜き打ち監査を行い、「不正」が判明した。

市が把握する園児46人以外の22人は園長との直接契約。70人前後の児童に対して35~45人分の副食で外部業者に発注し、3歳未満児は半分から3分の1の量しかなかった。片付けの省力化を図るため、主食・主菜・汁などを一つの器に入れて0歳児に食べさせたり、その日のメニューにアレルギーがある子に前日までの余った給食を使い回していたこともあったという。市の担当者は「監査に立ち合った元保育施設関係者が涙ぐむほど、お粗末だった」と話す。

保育士は法定より人数が少なく激務となった他、市の指摘よると、学童保育や園長個人が別途運営する夜間のベビーシッター業も兼務していたという。市側は「ここまでとは……。見抜けず非常に残念」と話していた。

http://mainichi.jp/articles/20170320/k00/00e/040/180000c

姫路のこども園 保育士欠勤や遅刻で罰金、無給勤務

 不適切な保育実態が明らかになった兵庫県姫路市の私立認定こども園「わんずまざー保育園」が、保育士と不当な雇用契約を結んでいたことが20日、市などへの取材で分かった。給付金を受けるため市に提出した雇用契約書とは別に、欠勤や遅刻をすれば罰金や無給勤務を科す“裏契約”を交わしていた。市は労働基準法違反などの疑いもあるとみている。

 同園はこども園の認定を受けた2015年度以降、運営のため、年間約5千万円の公費を受給。保育士の人件費も含まれている。

 市などによると、同園はこども園への移行に伴い、市に雇用期間や賃金を記した契約書を提出。一方で一部の保育士と内容の違う契約書を交わしていた。

 “裏契約書”には、欠勤や遅刻、早退をした月は給与から1万円減額すると記載。無断欠勤すれば無給のボランティア勤務7日間、30分以上の遅刻なら2日間などとした。保護者を待たせた場合は「10日間のボランティア勤務、お客さま宅に謝罪」ともあった。

 また、祝日などで保育士の休日数が園の規定よりも多い月は、日数に応じて給与がカットされていたという。

 裏契約書は16年度になくなったが、その後も雇用状況は変わらなかったという。

 同園の保育士は「1日働いても無給で理不尽に感じたが、園の方針で従うしかなかった」と証言した。

 同園を巡っては、兵庫県と市の特別監査で、保育士数を実際よりも多く報告して給付金を水増し請求するなどの不正行為が判明した。県は近く、こども園の認定を取り消す方針。

https://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201703/0010018793.shtml

極めて厳しい環境で園児・保育士が過ごしていたのは明白です。姫路市や兵庫県は認定取り消しのみならず、小幡育子園長が二度と保育に携われない様な断固とした措置を講ずるべきでしょう。

こうした施設が認定こども園へ移行して年間約5000万円に上る公費を受給できた背景には、新たに参入する保育所等の審査が不十分だと指摘されています。

実は姫路市では、似た様な事案が過去に発生しています。記憶に新しい「夢工房事件」です。

社会福祉法人「夢工房」 私物化の軌跡(調査報告書より)

姫路市の保育行政・審査基準等に重大な問題が生じている可能性は否定しきれません。反面、重大な問題を有する保育所等を指導・監督している点については、有効な監督等を行っているとも言えるかもしれません。

しかし、保育所等への指導は事後的なチェックで許されるものではありません。子供の生命を預かる施設であり、重要なのは参入時の事前審査でしょう。「問題ある事業者は市場から淘汰される」という考え方は間違っています。

また、保育所等で不当な労働契約が横行する背景には、施設運営者・保育士、双方に労働法制等に関する知識が薄い点も関係しているでしょう。

運営者や保育士はあくまで保育所運営・保育の専門家ですが、労務・総務等に関する知識や経験が乏しいのは否めません。

大学(特に社会科学系)で幅広く学び、ジョブローテーションで広範な業務に従事する事業会社・公務員とは、どうしても前提となる知識や経験量に大きな差があります。

毎年行われている保育に関する研修において、労務に関するコマを設けて基本的な知識を学習するのは一つの方法でしょう。