優先すべきは未利用地・施設等の活用
では、「別の場所」「筋が良い案」とは何でしょうか。同会議ではそれらも議論されていた様子です。NHKニュースでは、その旨のペーパーが映し出されていました。
ここには「優先6課題の検討 未利用地等市有財産活用」として、未利用地や遊休地・未利用施設・小中学校の余裕教室・都市公園等の活用が記されていました。
区役所等の活用も記載されていたと思いますが、優先度は下の方だったのではないでしょうか。未利用地や遊休地・未利用施設から利用を考えるのは自然です。
そうした土地・施設には、保育所を設置できる物も少なくないでしょう。代表例は、北部児童相談センターの設置を断念した「前いきいきエイジングセンター」です(詳細はこちら)。「2 未利用施設」に該当します。
延床面積は4000平方メートルあり、屋内プールやホールも備えられています。保育所設備としては豪華過ぎるきらいはありますが、多くの設備をそのまま利用でき、保育の用に資するのは大きなメリットです。
同センターの周囲は待機児童問題が市内で最も深刻なエリアの一つです。保育所が設置されれば、初年度から多くの希望が集まるのは間違いありません。
市長は12月19日の会見で「売却を試みたい」と話していました。しかし、売却する前に保育所への転用を入念に検討願いたいです。
それ以外にも多数の未利用地等が存在しています。こうした情報は「未利用地情報」ページにまとめられています。利活用が既に行われている不動産の中には、保育所用地として貸し付けられている物もあります(民営化による貸付かもしれませんが)。
区役所等の利用は決して否定されるべき物ではありません。しかし、より安価に実現でき、かつ保育所を設置するのに相応しい不動産の活用を優先的に模索すべきでしょう。
また、都市公園の有効活用も検討されるべきです。大規模な敷地を有する扇町公園・靱公園・大阪城公園等は、待機児童問題が極めて深刻なエリアと重複しています。公園の一角に保育所を設置できれば、恵まれた環境も自然と備わるでしょう。
対策会議ではこれらの意見も出たのではないでしょうか。市長会見だけでは会議の方向性や結論が掴みきれません。
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(12/20追記)
大阪市長がツイートしています。
大阪市の待機児童対策。市内の全24区役所内に保育所設置。市有地、廃校、市営住宅の活用。3歳以上の保育送迎バス、都心地は0〜2歳のために。不動産オーナーの固定資産税の実質減免。都心部の賃料補助拡大。3歳児連携の壁撃破。公募緩和。絶対無理と言われてる待機児童ゼロを任期中に本気でやる。
— 吉村洋文(大阪府知事) (@hiroyoshimura) December 20, 2016
市有地・廃校・市営住宅の活用も同時に行う方針だそうです。
報道では「区役所の活用」が強調されていますが、対策の一つだと感じました。
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バス送迎事業への協力要請・大規模マンション建築時の保育施設整備協議も
なお、同会議では民間事業者へのバス送迎事業への協力要請・大規模マンション建築時の保育施設整備協議を義務化する条例案も確認されたそうです。
また、会議では、保育所を運営する民間事業者に、子どもを送迎するためのバスを運行するよう要請することや、大規模なマンションを建設する際には、保育施設の整備について協議を行うことを義務づけるため、条例案を議会に提出する方針などを確認しました。
区役所内に小規模保育施設・送迎ステーションを設置し、3歳児以上はそこからバスで本園へ登園する青写真が思い浮かびます。
課題は民間事業者の協力が得られるか、という点でしょう。都心部以外に規模が大きい保育所を運営している・登園用バスを有している・3-5歳児の定員充足にやや苦戦している、といった保育所に対し、区役所等から個別にアプローチを行うのではないでしょうか。
また、大規模マンション建築時の保育施設整備協議の義務付けはもっと早く行うべきでした。タワーマンション等が建設されると、保育所や小中学校が局地的に過密化し、施設整備に苦慮している事例は後を絶ちません。
ただ、あくまで「協議の義務づけ」に過ぎません。事業者が拒否した場合は、施設整備協力金の納付を求めるのでしょうか。
例えば江東区では世帯用住戸30戸以上のマンションに対して、「125万円/戸×(世帯用住戸数-29戸)」の公共施設整備協力金の納付を求めています(手引き13ページ)。なお、こうした費用負担に関しては政策研究大学院大学のプログラムで詳しく解説されています(結論はやや否定的)。
個別の施策に賛否はありますが、吉村市長の下、大阪市の待機児童対策は急激に進捗しようとしています。
当事者たる子育て世帯や関心を有する市民の声を聞き、細かな問題点を修正の上、希望するより多くの児童が恵まれた環境を有する保育所へ入所できるのを望みます。