和歌山市で2歳の女の子を虐待死させた疑いで、両親である平晴流容疑者(26)と菜々美容疑者(26)が逮捕されました。一連の出来事を時系列でまとめます。

年月日出来事
2023年3月流菜ちゃんが産まれた。
8月4カ月健診を受診した。体重は少なかったが、他に問題は無かった。
2024年1月10カ月健診を受診しなかった。
3月和歌山市の母子保健担当者(保健師)が自宅を訪問した。体重は概ね適正範囲内の7,175g(下位5%程度に相当)、健康状態や生育状態に問題は無かった。
この頃から虐待が始まったか。
11月1歳6カ月健診を欠席した。なお同健診の受診率は97.6%(未受診56人)だった。未受診者には3カ月以内に自宅を訪問して乳幼児を目視確認する運用が行われている。
12月和歌山市の母子保健担当者(保健師)が自宅を訪問した。健康状態を目視で確認したが、体重は測定しなかった。母親の様子も気になることはなかった。
2025年1月和歌山市保健所の担当者が「1歳6カ月検診を受けて欲しい」と母親の携帯電話へ連絡したが、応答はなかった。
3月再び和歌山市保健所の担当者が母親の携帯電話へ連絡したが、応答はなかった。
7月10日菜々美容疑者から「子どもが熱中症で息をしていない」との119番通報があった。心肺停止状態で搬送され、死亡が確認された。
死因は全身打撲による外傷性ショックだった。顔と頭部に皮下出血があり、内臓も損傷していた。あごに2センチの傷があり、骨折もしていた。 当初は「ジャングルジムから落ちてケガをした」としていたが、後に「背中を押して自宅の床に打ち付けたときにできた」と供述を変更した。
上の子は児童相談所に保護された。
9月26日保護責任者遺棄致死の疑いで、平晴流容疑者(26)と菜々美容疑者(26)が逮捕された。
12月第三子を出産する予定となっている。

和歌山市の対応に問題があったとは言えませんが、もう少し踏み込んだ対応を行っていたら虐待死は防げたかもしれません。

まずは10カ月健診です。同市の1歳6カ月健診の未受診率が約2.4%なので、10カ月健診も同程度でしょう。健診未受診はリスク要因です。

和歌山市保健所の担当者は満1歳の頃に訪問し、体重を測定しました。市は「適正範囲内」としていますが、子育て世帯の感覚としては「満1歳で体重7kgは軽すぎる」が本音です。

病気や未熟児での出産と行った特殊事情があるならまだしも、一般的な成育では満1歳の頃には9-10kg程度となります。7kgは軽すぎます。訪問した保健師からの報告書等に同趣旨の報告はなかったのでしょうか。

続けて1歳6カ月健診も欠席しました。10カ月健診の未受診・体重の軽さを鑑みると、この時点で「黒に近い」心証を持たざるを得ません。更に保健所の担当者が2度にわたって電話に出なかった時点で「黒」です。少なくとも児童相談所や和歌山市の子育てを統括するこども家庭センターと情報共有すべきでした。

4歳だった長男に関する情報も重要です。現時点で幼稚園や保育所等へ通っているという話は報じられていません。4歳で家庭保育を行っている世帯は限られています。就園してなければ、家庭全体が地域の子育て等と接点を持っていなかった事となります。

仮に就園していれば、家庭環境を把握している幼稚園等の担当者が何らかの疑問を持つでしょう。「お兄ちゃんの送迎に、何故か2歳になる妹がいない。」と。

近隣住民から聞き取り等を行ったという話もありません。虐待が行われていれば、子供の大きな泣き声が近隣に響き渡ったはずです。日中にも夜中にも泣き声が響いていたでしょう。大人の怒声も混じっていると考えられます。

情報感度や対応を強化するタイミングはいくつもありました。それらを行わず、今年7月に緊急搬送されるまで傍観していたのでしょうか。亡くなった女の子の命は救えなかったのでしょうか。