待機児童を解消する為に設置されたのが「大阪市待機児童解消特別チーム」です。
11月24日に第6回目の会議が行われます。平成30年度に向けた申込や施設整備状況等が話し合われる予定です。
中には報道で大きく取り上げられそうな議題があります。「マンション内保育所等への住民優先入所制度」です。
大阪市では、第6回大阪市待機児童解消特別チーム会議を、平成29年11月24日(金曜日)に開催します。
本会議は、本市における待機児童を含む入所保留児童の早期解消が急がれる中で、市長をトップとし、こども青少年局の取組に加え、各区において、個々の地域事情を踏まえた対応策を主体的に検討し、実行に移すことで、本市待機児童対策の一層の強化・推進を図るために開催します。
平成29年度予算における新たな待機児童対策にかかる取り組み状況等について
平成30年度保育施設等利用申込み状況及び必要整備量について
保育人材確保等の取り組みについて
大規模マンション内に整備される認可保育所等にかかるマンション住民の優先入所についてhttp://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/kodomo/0000417361.html
優先入所制度の草案たる内容が、10月17日に開催された平成29年度第3回こども・子育て支援会議(教育・保育部会)で話し合われています。
出席者の中には、全国各地で数多くの保育所等を運営する株式会社アイグランの取締役もいました。
3 出席者
(中略)
株式会社アイグラン 取締役 橋本雅文議事
大規模マンション内に整備される保育所等に係るマンション住民の優先入所について
残念ながら会議要旨や議事録は未だ公開されていません。しかし、原案たる大規模マンション住民の優先入所の実施について(案)が掲載されています。
優先入所は新規開所時の1回きり!
制度趣旨から見ていきます。
実施の理由(制度趣旨)
・大規模マンションが建設され住民が入居する際には、その地域の保育ニーズが急増し、待機児童が発生する可能性が高いが、大規模マンションの建設と同時に当該マンション内に保育所等が整備されれば、その地域の待機児童の発生を防止・抑制することができる。
・このような観点から、大規模マンションの建設時に当該マンション内に保育所等を整備するようマンション事業者を促すため、そのインセンティブとして大規模マンションの住民については、当該マンション内に整備される保育所等の優先入所を認めることとしたい。
・また、優先入所を認めることで、保育所等の設置を促進する効果が期待でき、市内全体の急増する保育ニ-ズへの対応の効果が期待される。
・なお、この措置は、待機児童が解消されていない本市の現状を踏まえた緊急措置的なものと位置付ける。
大規模マンション建設に伴う保育ニーズの急増への対応、を打ち出しています。そして、マンション事業者へのインセンティブ(動機付け)として「住民の優先入所を認めたい」としています。
次は対象マンションです。
対象マンション
・対象マンションは平成30年度以降に建設された新築マンションで、70戸以上のもの(大規模マンション条例第2条第1号に規定する「大規模マンション」)とする。
・平成29年度以前に建設された既存のマンションや、70戸未満の小規模マンション内の保育所等は優先入所の対象としない。
・大規模マンションの敷地外にある保育所等は優先入所の対象外とする。
・急増する保育ニーズへの対応という観点から、マンションへの入居が始まってから、1年以内に開設する保育所等に限る。対象者
・マンションを借りている人等も含め、対象マンションの住民であれば優先入所の対象とする
70戸以上の大規模新築マンションに限る方針です。事実上、対象者は一定以上の収入や資産がある世帯に限られるでしょう。所有者に限らず、賃借人も対象とされます。
なお、大阪市から協力要請を行ったマンションに限るか、それ以外のマンションも広く対象とするかは検討課題とされています。
次は実施期間・調整方法です。
実施期間
ア平成30年4月1日から実施(ただし、同日以降建設された、大規模マンション条例第2条第1号に規定する「大規模マンション」が対象)
イ個々の大規模マンションについて住民の優先入所を認める期間
・マンション建設に伴う急増する待機児童発生の防止・抑制という制度趣旨及び緊急措置という位置づけから、マンション建設(保育所等の整備)当初だけとする(保育所等が入所募集を開始した当月のみ)。
・マンション建設(保育所等の整備)当初にマンションの住民が優先入所した後は、通常の保育所等と同様、マンションの住民かどうかを問わずポイント制による利用調整を行う。利用調整の方法
・マンションの住民を別枠で最優先とする。
・マンションの住民を優先するのは、マンション内の保育所等を第1希望とした場合に限定する。
・マンションの住民から入所枠を超える申込があった場合は、マンションの住民の間でポイント制による利用調整を行う。
引っかかるのは「平成30年4月1日から実施」という文言です。まさか平成30年度一斉入所から適用するのでしょうか。
既に一斉入所に掛かる手続は進行しています。調整基準を遡及して変更するのは許されるのでしょうか。また、条例変更が不要とは言え、市会での議論やパブコメを経ずに変更するのは民主主義の観点から問題です。
優先入所制度が適用されるのは、保育所等が開所した際の一斉募集に限られる方針です。それ以降の入所では優先入所制度を適用されません。マンション住民・非住民を区別せずに調整を行うとしています。
また、原案では「第1希望に限る」としています。年度途中の開所であれば第1希望としやすいですが、一斉入所に合わせた開所であれば第1希望とするか悩んでしまいそうです。
インセンティブと公平性の狭間
事業者へのインセンティブと利用調整制度の公平性を図るのに腐心した様子が伝わってくる内容です。
少なくとも1点だけ改善を要する部分があります。それは「どれだけ調整点数が低くても優先入所制度の対象となってしまう」という点です。
具体的には新築大規模マンションに入居したフルタイム+パートタイム勤務世帯(170点)が、非住民たる共働き世帯(200点)より優先されてしまうという点です。
たとえ優先入所制度が導入されたとしても、全ての入居者が無条件に優先されるのは、保育所入所制度の公平性の観点から許容できないでしょう。どこかで線を引く必要があります。
この様な優先入所制度が導入されいる自治体は知りません。大阪市が第1号となるかもしれません。
是非はともかく、議論が注目されます。24日夕方のローカルニュースで大きく報道されるでしょう。
追記:チーム会議で決定された模様です
マンション住民優先入所制度が会議で決定されたそうです。読売新聞が報じています。
こども・子育て支援会議で検討された叩き台案と比べ、優先入所が適用される期間が「開所後3年間(叩き台案では開所時のみ)」と大幅に延長されています。
マンション建築事業者へのインセンティブをより高める内容となっています。マンション内保育所の整備を後押しする効果が強まる一方、入居者を優遇する性質が更に色濃くなります。入居者と非入居者での不公平感は確実に生じます。
今後、市会で議論されるでしょう。不公平批判に対する吉村市長の答弁が待たれます。