理事長一族による私物化が問題視されたのが社会福祉法人夢工房です。
問題発覚から1年を前にして、刷新された経営陣が前理事長・前統括園長夫妻を告訴・告発しました。
さて、本日、前理事長及び前統括園長に対して、刑事上の責任を追及すべく兵庫県警察本部に告訴・告発状を提出し、受理されましたのでご報告します。
これは、前理事長等が当法人を私物化し、私的流用などの不法行為を繰り返していたことに対する刑事上の厳正な処罰を求めるものであります。
新理事体制としては、前理事長等の責任追及を行うため、兵庫県をはじめとする関係行政機関の全面的なご協力やご指導を得て本日にいたったものであり、改めて深く感謝申し上げます。
また、利用者様や保護者の皆様から寄せられました多くのご意見、激励のお言葉に支えられていることに、重ねて御礼申し上げます。
今後は、一日でも早く前理事長等の刑事責任が厳しく処断されるよう、司法機関による捜査に全面的に協力して参ります。
さらに、前理事長等への損害賠償請求を行う民事訴訟のための調査を進めており、今後速やかに提訴したいと考えています。
概要 被告訴・告発者 告訴・告発した罪状 詳細(被害額) 告訴 前理事長 有印私文書偽造・同行使 虚偽の理事会議事録の作成・行使 (1)背任(架空給与) 3,922,060円 前統括園長 (2)業務上横領(私的流用) 3,334,282円 告発 前理事長 (3)詐欺(補助金詐取) 37,898,960円 前統括園長 (4)詐欺(補助金詐取) 37,615,590円 合計 82,770,892円
約2億円の損失額を指摘した第三者委員会による調査報告書と比べると、被害額として告訴・告発した金額は一部に留まっています。親族等から返金された金額を除外し、捜査・起訴するのが容易な部分に絞り込んだのでしょうか。
こうした事案が発生した場合、捜査機関へ告訴・告発するのに長い時間を要しています。この間、被害内容や被害額を一つずつ特定し、自治体等の関係機関と水面下で話を詰めているのでしょう。「兵庫県をはじめとする関係行政機関の全面的なご協力やご指導」という部分に現れています。
不正流用等で保育園から追放された経営者は、悲惨な末路をたどっています。
2年前に保育園の運営費を流用してホスト遊び・高額な飲食等を行って話題になったのが、みるく保育園(東大阪市)です。
元園長・副園長夫婦は、東大阪市による刑事告訴から10カ月後に逮捕されました。
逮捕された当時は離婚しており、それぞれタクシー運転手・飲食店従業員として働いていました。豪華な自宅は競売に掛けられ、第三者が落札しました。2人は全てを失いました。
夢工房の前理事長・前統括園長夫妻はどうなるのでしょうか。
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(2021/6/30追記)
元理事長夫妻に対し、法人へ約1.8億を支払う旨が命じられました。
福祉法人で私的流用、1・8億円の賠償命令 元理事長夫妻に 勤務ない家族に給料、私物購入、着服…
全国で保育園などを運営する社会福祉法人「夢工房」(兵庫県芦屋市)が、法人の資産を私的に流用したなどとして、元理事長夫妻に損害賠償を求めた訴訟の判決が29日、神戸地裁であった。久保井恵子裁判長は被告の夫妻側に計1億7697万円の支払いを命じた。
判決によると、夫は2003年に同法人の理事に就任し、13~16年まで理事長を務めた。妻は13~16年、理事として法人の口座管理などをしていた。
久保井裁判長は、原告の法人側の主張通り、夫妻が資金の私的流用で同法人に損害を与えたと認定。勤務実態がない家族への給料支払いや私物購入、売り上げの着服といった行為があったと判断した。
損害額は、補助金の不正受給に関わる自治体への違約金を含め計約1億6千万円余りに上り、地裁は賠償額の大部分を夫妻で連帯して支払うよう命じた。
夫妻を巡っては、17年、法人などが詐欺などの容疑で兵庫県警に刑事告訴、告発。捜査の結果、神戸地検は19年に夫妻を不起訴処分としている。
https://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/202106/0014457979.shtml
法人側の主張が概ね認められた形ですね。
5年前に同法人は約1億8,600万円が不正流用・受給されていた旨を発表していました。賠償額はこれに相当します。
多数の保育所を運営する社会福祉法人「夢工房」による不適切経理の内容を第三者委員会が調査した結果、少なくとも創業者・経営者一族によって約1億4,000万円が私的流用され、かつ約4,600万円が自治体から不正に受給していた事実が明らかになりました。
それにしても、元理事長夫妻が詐欺罪では不起訴処分になっているのは本当に意外でした。これだけの不正流用等を行っても、刑事処分に問えないのでしょうか。それこそやった者勝ちですね。