大阪市は市長をトップとする待機児童解消特別チームを編成し、対策を講じています。

 大阪市では、待機児童解消を最重要施策として位置付け、待機児童を含む保育を必要とする全ての児童に対応する入所枠を確保に取り組んでいます。(以下略)

http://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000411410.html

第5回会チーム会議では市有地を活用した保育所の設置等、突っ込んだやりとりが行われています。公表されている会議資料から、現状と今後の対策を取り上げます。

新規定員3,600名分確保、500名分を確保見込、1,900名分は難しい

「待機児童ゼロ」を掲げる吉村市長は、約6,000人分の保育所等を新たに設置する目標を示していました。

しかし、第5回会議が開催された8月7日までに確保されたのは3,634人分、8月以降に追加発表される庁舎内保育施設等を含めても約4,100人分に留まる推測が示されました。

特に厳しいのは中央区(予算計上枠に対する不足率見込60%)、浪速区(70%)、鶴見区(70%)です。これらの区は保育所等が不足しています。来春の一斉入所は厳しさが予想されます。

第6次公募で小規模保育を追加募集

設置見込に達していない区等では、更に募集を行っています。最終的には11月中旬に結果が公表される見通しです。

11月は中間発表後です。その為、第6次募集で決定した施設は1次調整の対象とはならず、2次調整で入所募集を行うと考えられます。

市営住宅を利用した小規模保育

大阪市は市内各地にある市営住宅を利用した小規模保育事業者を公募しています。

大阪市小規模保育事業所「市営住宅活用」設置・運営事業者の募集(9月募集)について

http://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000411615.html

対象となるのは郊外にあって入居率が低い市営住宅ではありません。子育て世帯が多く居住し、保育施設が不足している鶴見区・阿倍野区・住吉区の市営住宅が対象です。

特に注目されるのは阿倍野区にある松崎第2住宅です。この地域は待機児童問題は極めて厳しく、入所するのが市内で最も難しい地域の一つです。

同住宅に2箇所の小規模保育を設置する予定としています。部屋番号が続いているので、壁を撤去して1施設として利用するのも可能かもしれません(現状復旧が大変そうですが)。

設置予定は平成30年4月です。入所募集は2次調整で行われそうです。

保育送迎バス事業

待機児童が多い地域から、少し離れた地域へバスで送迎する事業です。

現時点では中央図書館横の公文書館(西区)や天王寺区保健福祉センター分館に小規模保育+送迎ステーションを設置し、もと森之宮移動入浴サービスセンター等(森之宮公園南)に設置する保育所まで送迎する計画を検討しているそうです。

送迎バス事業そのものは一定の合理性があるでしょう。しかし、どうして市内中心部を横断し、待機児童問題が深刻な森ノ宮駅前の保育所へ送迎するのでしょうか。

西区や天王寺区から送迎しなくても、新設保育所は森ノ宮周辺の児童だけで定員に達するでしょう。上町台地から森ノ宮駅に掛けての一体は、保育所が明らかに不足している地域です。

西区から送迎するのであれば西方向、天王寺区は東方向を検討すべきでしょう。こうした方向にある既設保育所は難しかったのでしょうか。

市有財産の活用

これらの市有財産の他にも、保育所等に利用できそうな公有地等が提示されています。

この中でもと西公営所大正橋倉庫(大正区)ともと天王寺公設市場は、事業者への公募手続が始まりました。

市有地を活用した保育所の設置・運営事業者の募集について

http://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000411410.html

いずれの土地も各地区の主要駅に近く、利便性の良い場所です。

特に天王寺公設市場跡地(利用可能面積は約989平方メートル)は、大阪市内で最も地価が高い住宅地の一つである「天王寺区真法院町」にあります。単純に保育所にするだけでは勿体ないぐらいの土地です。

天王寺区南部はタワーマンションが続々と立っており、保育需要が急増している地域です。保育所へ入所できず、困っている家庭が少なくありません。

設定定員80人(以上)では少なすぎます。この土地に大規模な保育所を設置し、多くの児童が楽しく過ごせる場所を作れないものでしょうか。

それ以外では、福島警察署・玉造元町は魅力的な場所です。子育て世帯の為に、早期に活用して欲しいです。

大規模マンション建設時の事前届出制度の導入へ

大阪市内はタワーマンションの建設ラッシュです。しかし、保育所の整備は後手後手に回っています。

そこで、大規模なマンションを建設する際には大阪市に届け出を行い、必要に応じて市と業者が保育施設等の整備に関する協議を行う旨の条例が市会へ提案されました。2カ月ほど前にパブコメが実施された案件です。

「大規模マンション建設における保育施設等の整備協議等に関する条例案の骨子」についてパブコメが実施されます

大きな反対意見はなく、すんなりと可決されそうです。むしろ、より強い制度を求める意見が出るかもしれません。以前、教育こども委員会でとある委員が「これ以上のタワーマンションは勘弁して欲しい」だという旨を呟いていました。

地域型保育保育の連携施設確保は難航

一方、地域型保育事業の支援・代替保育・卒園児の受け皿を担う連携施設の確保は難航しています。

平成29年6月末時点では、連携施設を確保した地域型保育事業は約3割に留まりました。残り7割の施設は連携施設を確保できていません。

連携施設があると言えども、全てが保護者が望む「優先入所」の対象となっているわけではありません。

連携先の約1/3は幼稚園です。優先入所対象の保育所であっても、遠くにあって登園するのが難しい施設が少なくありません。同一法人が運営するやや離れた施設も連携施設とする事業者が少なくありません。

地域型保育事業卒園児の継続利用?

連携施設の設定が思う様に進まない中、卒園児が継続して地域型保育事業を利用できるとする案が提起されています。3歳児のみとする案、そして5歳児まで利用可能とする2案です。

資料は3歳児の受入れは消極的に肯定する一方、5歳児までの案に対しては多数のデメリットを指摘しています。

今後、定員の弾力化枠(1-3人)の範囲内において、転所先が見つからない卒園児に限って受け入れる方向で意見が集約されるのではないでしょうか。

とは言え、0歳児と3歳児は生活リズムが大きく異なります。同い年の遊び相手がいない環境よりも、多くの同年代と交わる方が成長に有益でしょう。

卒園児の継続利用という案が出る背景には、多くの保護者が望む保育所の新設よりも地域型保育事業を重点的に増やした経緯があります。

地域型保育事業の意義はありますが、やはり保育所の新設を第一に行うべきです。保護者ニーズを忘れないで欲しいです。