学校法人森友学園の系列法人たる社会福祉法人肇國舎が運営する「高等森友学園保育園」の運営が、いよいよ瀬戸際になってきました。大阪市が高等森友学園へ改善勧告・6/1事業停止命令予定 保護者反発の続報です。
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大阪市は7月1日に事業停止命令を出す方針を固めました。また、在園している園児42人に対して、「淀川区・西淀川区の保育施設で全員を受け入れられる」として、転園を促す説明を行ったそうです。
保護者「転園は兄弟一緒に」 森友系列保育園の説明会 7月1日に停止命令で
学校法人「森友学園」(大阪市淀川区)系列の社会福祉法人が運営する認可保育園「高等森友学園」(同区)が配置基準を満たす人数の保育士を確保できていない問題で、大阪市は11日、淀川区役所で2回目となる保護者説明会を開いた。7月1日付で事実上の休園にあたる事業停止命令を出す方針を説明。出席した保護者からは、転園に関する質問や要望が相次いだ。
市は説明会で、0~5歳の園児42人の転園先として、淀川区と西淀川区で7カ所計91人の入所枠を確保できたことを報告。転園希望を6月5日まで募り、7月1日から優先的に入所できるよう調整することも伝えた。
市によると、出席した33世帯41人の保護者の多くからは「兄弟一緒の保育園に転園したい」「5歳児の同級生13人をまとめて転園できないか」などと休園を前提とした質問が相次いだ。ただ、説明会終了時点では転園申し込みはなかった。
出席した保護者の女性は取材に「政治家同士のけんかに子供が巻き込まれた印象だ。子供たちがばらばらになるのはつらい」と複雑な心境を語った。
同園は常勤保育士が6人必要だが、現在勤務できるのは非常勤3人のみ。市は4月末に児童福祉法に基づく改善命令を出し、今月10日までに人員を確保するよう指示したが、園側から具体的な改善策は示されなかった。
このため市は今月下旬に園側の弁明を聴取。今月と来月に児童福祉審議会を2回開いて識者の意見を聞いた上で、事実上の休園にあたる事業停止命令を7月1日付で出す方針だ。同園が6月中に保育士を確保できれば停止命令は見送るが、市はその可能性は低いとみている。
吉村洋文市長は、7月以降も人員不足が解消されなければ、数カ月後に認可取り消し処分に踏み切ることも示唆している。
http://www.sankei.com/west/news/170511/wst1705110110-n1.html
最低限必要な保育士を確保できていない以上、保育を継続する資格と能力を有していないのは明らかです。少なくとも本件については、首相夫人等との話は無関係です。事業停止命令はやむを得ないでしょう。
問題となるのは「本当に周辺の保育園へ転園が可能なのか?」という点です。報道によると、大阪市は「淀川区と西淀川区で7カ所計91人の入所枠を確保できた」としています。
大阪市は保育施設への入所可能数を毎月公開しています。淀川区と西淀川区の空き情報より、高等森友保育園から何とか登園できそうな範囲(東は概ね淀川区木川地域、西はJR東西線付近)からピックアップしてみました。
範囲を広めに考えた結果、入所可能数75人(16施設)となりました。大阪市は内部情報から算出したとは言え、公表されている数字と大きく異なる結果です。
特に厳しいのは1-2歳児です。殆どの施設は定員いっぱいまで園児が在籍しており、新たな園児を受け入れられる余裕は殆どありません。この地域にある公立保育所に保育士を追加派遣し、一時的に保育可能数を増やすぐらいしか思いつきません。
また、試算した施設には、自転車で片道20分以上は掛かりそうな地域も含んでいます。居住地域から大きく離れてしまい、日々の登園や通勤に大きな支障が出る場合もあるでしょう。
保護者に同様・不安が広がるのは当然でしょう。「とてもじゃないけど通えるような距離じゃないところ(の保育園)が半分。皆、動揺している」(テレ朝)、「この状況で子供を置いておくのはもう限界だが、市が示した転園先は距離が遠い」(毎日新聞)と話す保護者もいました。
高等森友保育園は以前から虐待疑惑等があり、一部の保護者は淀川区役所・大阪市へ繰り返し相談していていたと報じられています。同園は周囲の他保育所と比べて入所に必要な点数が著しく低く、データ面でもアラートが出ていました(こうした園は市内に他にもあります)。
適切な監査・指導を怠り、事態を悪化させたのは大阪市です。仮に事業停止を命令するとしたら、全園児が概ね納得できる保育施設への転園措置を図るべきでしょう。
保育士が足りなくて追加受入が出来ない施設があれば、森友保育園と同じ様に市職員を派遣する方法もあります。また、今回の転園結果に納得できなくとも、年度途中・平成30年度一斉入所で優先転所措置を講ずる方法もあります。
認可保育所に対する年度途中の事業停止命令は極めて異例です。他の自治体を含めても、こうした処分を行った事例は思い出せません(大半は指導による休園)。
同保育園が保育士を確保するのは困難でしょう。今後、大阪市の審議会・弁明の機会等を経て、事業停止が命じられるものと考えられます。
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保育士の確保に関する改善命令の期限たる5月10日になっても、高等森友学園保育園は保育士を確保できていませんでした。
「森友」保育園、11日に事業停止議論 大阪市
大阪市は10日、保育士が不足している森友学園系列の「高等森友学園保育園」(大阪市淀川区)から改めて聞き取り調査し、運営に必要な保育士が確保できていないと明らかにした。保育園側は採用予定があるなどと説明したが、市は対応が不十分と見ており、11日に事業停止命令も含めて対応を協議する。
同保育園は常勤保育士が6人必要だが、4月以降に退職が相次ぎ、市の調査で5月に勤務できるのは3人だけになったことが明らかになった。市は児童福祉法に基づく改善命令を出し、今月10日までに保育士確保の具体策を示すよう要請。園の対応が不十分と判断した場合、市審議会の意見を踏まえて6月1日にも事業停止を命じる方針を示していた。
市によると、同保育園は職員3人を新たに採用し、現在働いている3人の勤務時間を延長することで基準を満たせるとする改善策を提示した。ただ市は「雇用契約書も示されないなど不十分な内容だ」とみており、11日に吉村洋文市長に報告し、事業停止を命じるかどうかを議論するという。
市は既に、園児が転園を希望すれば他の保育園などで優先的に受け入れられるよう調整しており、11日には保護者説明会を開く予定。
他メディアも一斉に報じています。
・森友学園が運営する認可保育園 保育士確保へ引き続き努力(NHK)
・森友学園系列の保育園 大阪市に十分な対応示せず(テレ朝)
・「森友」保育園の保育士不足を大阪市が確認 11日に対応協議(スポニチ)
籠池園長等は「新たに保育士を採用し、非常勤として勤務している保育士の勤務時間を延長する」と主張しています。少なくとも立入調査までに非常勤職員の勤務時間は延長できたでしょう。
また、採用する職員については「内定証明書」「勤務契約書」等を提示すべきです。同園は都合が悪い事を追及されると「書類が無い」「探している」と逃れてきました。保育士確保でも繰り返しています。
土曜保育、登園したら誰もいなかった
大阪市からの職員派遣を受けても職員数が不足している一例も生じています。土曜保育です。
同園にお子様を通わせている保護者(自称です)のツイッターによると、「土曜保育が行われるはずだった5月6日に登園したが誰もいなかった」とされています。
お弁当作って保育園に行ったら、誰も職員がいない。6日お弁当って書いてるやん。森友学園は本当に最悪。こんな保育園は無くなった方がいい。#拡散希望 #森友学園 #森友保育園 pic.twitter.com/G8VbriSBzN
— 森友保育園 在園児母 (@dOQfLLlbQtKWqY3) May 6, 2017
連休中の土曜日に出勤できる保育士を確保できなかったのでしょうか。それとも当初から休みの予定だったが、園便りを修正し忘れていたのでしょうか。いずれにしても、杜撰極まりないです。
保育の安全において、十分な保育士を配置するのは初歩中の初歩です。これを理解できていない籠池園長に、保育園の経営を行う能力はないでしょう。
報道等によると、籠池園長は保育士資格を有していないそうです。法令上、保育士資格がなくとも保育園長(施設長)を務められます。しかし、本当に資格が無くても良いかは疑問に感じざるを得ません。
お世話になっている保育所では、園長は保育士資格を有しています(以前は主任保育士を務めていた)。人手が手薄な時間帯は保育に携わるなど、状況に応じて機動的な対応を行っている様子が見て取れます。
反面、保育園の運営については、やや頼りない面も感じられます。事務担当の職員がフォローしているので、大きな問題は生じていませんが・・・。
転園先の確保は困難か
事業停止を命じた場合、大きな問題となるのは「園児の転園先」です。大阪市は近隣他園へ優先入所を図る方針です。
しかし、近隣他園の殆どは定員を充足しています。40人以上の転園児童を受け入れられる空き定員は、この地域にありません。
ほんの少しの可能性があるのは、西淀川区内に新設される施設です。
今年10月には西淀川区野里1に「きらら のざと保育園(小規模保育)」が開所する予定です。0-2歳児(合計19人)の保育を行う予定です。計算上、高等森友学園保育園に在籍している全ての0-2歳児を受け入れられます。
来年4月になれば、西淀川区内歌島2に「ソフィア歌島保育園(保育所)」が開所します。転園先を確保するには、この様な新しい施設の開所を待つのが現実的だと感じます。
大阪市や吉村市長は、一貫して高等森友学園保育園を休園・閉園させたい意思を滲ませています。行く末が気掛かりです。
なお、本日11日の夜に、淀川区役所において保護者向けの説明会が行われるそうです。事業停止命令や転園先の見通し等が説明されるものと思われます。