大阪府内の新型コロナウイルス感染症患者は非常に高い水準で推移しています。
11月30日に発表された感染者数は262人でした。1週間前の感染者数より若干減少し、急増する勢いは弱まっています。しかし、患者の絶対数が非常に多い状況に変わりはありません。
これにより、大阪府ではコロナに対応した病床が著しく逼迫しています。日本で最も逼迫しているのは大阪府です。
国が定めるステージⅣの指標の大半を満たしています。満たしていない指標も寸前の数字です。
ステージIV | 指標 | 大阪府(11/30時点) |
①病床使用率(全体) | 50% | 58.3% |
①病床使用率(重症者) | 50% | 60.2% |
②療養者数(10万人あたり) | 25人 | 46.89人 |
③陽性率(1週間) | 10% | 9.2% |
④新規感染者数 | 25人 | 26.55人 |
⑤前週比 | 1 | 0.95 |
⑥経路不明率 | 50% | 59.9% |
陽性率及び前週比以外の指標が全てステージ4を超過しています。特に最も重要とされる病床使用率は60%前後に達しています。ここで言う「病床使用率」とは、「確保予定の病床」が分母とされています。実際に確保されて運用されている病床はより少なくなります。
大阪府は実運用ベースの病床使用率も公表しています。驚くべき数字が記載されています。
・患者受入重症病床運用率(重症患者数÷実運用病床数) 86.7%(124/143)
・患者受入軽症中等症病床運用率(軽症中等症患者数÷実運用病床数) 69.6%(695/998)
・患者受入宿泊療養施設部屋数運用率(宿泊療養者数÷実運用部屋数) 41.8%(650/1555)http://www.pref.osaka.lg.jp/iryo/osakakansensho/corona_model.html
11月30日時点で重症者に対応した病床は約87%が使用されています。空いているのは残り約13%、19病床に過ぎません。担当する医療従事者数や入退院に要する時間等を考慮すると、実質的にはほぼ満床ではないでしょうか。
府内の病院に勤務する呼吸医専門医も「限界が見える」と話しています。
重症病床は実質8割埋まり、限界見える大阪府
大阪では、府の入院フォローアップセンターが主導して、COVID-19患者を各病院に割り振っている状況です。自宅やホテル療養中に悪化した人の入院依頼が昼夜を問わず舞い込んでくる状況で、関係スタッフは疲弊しています。第1~2波の頃は全体的に士気が高かったように思いますが、第3波ともなるとコロナ疲れが目立つようになりました。この精神的摩耗が医療従事者の感染を招いてしまっているのか、周辺の病院やクリニックでの院内感染を耳にすることが増えました。
第2波までは、基礎疾患のある高齢者のクラスターが発生しても、その多くは悪化することなく施設に帰ることができました。しかし、今回の第3波は、両肺全体にすりガラス陰影を呈したやや若年層(50~70歳代)の肺炎が多く、想定よりも高い割合(3~5割)で酸素療法が適用されている状況です。中国で初期から報告されていたように、コントロール不良の糖尿病、循環器疾患、肥満は重症化をもたらす強いリスク因子であると痛感しています。(以下省略)
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/kurahara/202011/568039.html
阪和第二は満床、十三市民は6割利用で拡張へ
軽症中等症病床も厳しい遣り繰りが続いています。同日時点で約70%の病床が使用されています。
昨日のニュースでは、大阪府内にある2箇所のコロナ専用病院が取り上げられていました。住吉区にある阪和第二病院と淀川区にある大阪市立十三市民病院です。阪和第二病院のコロナ病床は満床、十三市民病院も6割以上の病床が使用されています。
大阪府では中等症の患者の受け入れ先の確保も困難となっており府庁にある入院フォローアップセンターは保健所からの連絡を受けて患者の症状にあわせて入院先などを調整しているが、ICUでの処置などが必要な重症者の調整が大変な状態が続き、酸素吸入が必要な中等症の受け入れ先が見つかりづらくなっている。阪和第二病院では6月から軽症・中等症の患者を受け入れていたが11月中旬から病床使用率が急増し、24の専用病床が常に満床となっている。大阪市立十三市民病院では60床を運用しているがきょうの時点で38床が埋まっている。
十三市民病院の病床数を拡大する為、大阪市民病院機構は大阪市立総合医療センター内のAYA世代専用病棟を一時閉鎖し、そこで勤務する看護師を十三市民病院へ一時的に異動させるそうです。
しかし、最近の新型コロナ感染者の急増で医療体制が逼迫(ひっぱく)。重症者を診る同センターや中等症対応のコロナ専門病院の市立十三(じゅうそう)市民病院(大阪市淀川区)で、新型コロナ病床を拡大することになったが看護師が足りないため、同センターを運営する大阪市民病院機構では26日、AYA世代専用病棟を一時閉鎖し、その看護師をあてることにしたという。
こうした動きは氷山の一角でしょう。医療崩壊というのは病院の機能が急激に全停止するのではなく、少しずつ医療水準が低下していく現象なのでしょう。診療日の減少、診療科の一時休止、担当医師の不在、様々なケースが考えられます。
別の病院へ急に異動してコロナ対応に従事する看護師の苦労も大変でしょう。その心労、非常に重いと感じます。
看護師が足りない大阪コロナ重症センター
ただ、大阪府は先見の明もありました。冬場の感染者急増に備え、夏から「大阪コロナ重症センター」の準備を進めていました。しかし課題も浮かび上がっています。「看護師不足」です。
「大阪コロナ重症センター」完成 看護師確保が課題
新型コロナウイルスの重症患者を治療する専門施設「大阪コロナ重症センター」の建物が30日に完成しました。
大阪府は7月から新型コロナウイルスの重症患者を専門的に治療する大阪コロナ重症センターの整備を進めてきました。当初は緊急事態宣言が再び発令された際に運用する予定でしたが、府内の重症患者は今月29日時点で過去最多の110人に上っていて、宣言が出ていない場合でも運用することを決めています。30日に完成した建物には病床が30床あり、すべてに人工呼吸器が配備されています。一方、必要となる看護師約130人のうち確保できているのは半数にも満たない状況です。大阪府は引き続きスタッフの確保に努め、来月中旬以降の運用開始を目指しています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/a6ee20d4b532812f454164ae7504791ceaa566bc
大阪府看護協会のウェブサイトに大阪コロナ重症センターの求人が公開されています。夜勤手当込で月給50万円です。ただ、この条件で「人工呼吸器装着時のケア経験のある」看護師がどれだけ応募するでしょうか。
宿泊療養施設で勤務する看護師も募集が行われてます。24時間勤務で日給5万円です。
賑わう街中
極めて厳しい状況が続く医療現場ですが、一方で街中は例年通りに賑わっています。コロナ禍は過去の物といった様子にすら見えます。
最寄駅や電車内は人間で溢れかえっています。半年ほど前に推奨されたテレワークは殆ど利用されていないかの様な、通勤客の多さです。週末も市内の繁華街は賑やかでした。若い人はもとより、秋口までは少なかった高齢者も繁華街に戻ってきています。
感染者数が増えて医療機関が逼迫しているという話は伝わっている様子ですが、多くの人は「他人事」の様に見えます。急に「外出自粛・外食自粛」と呼びかけられても響きません。
更にはここ数ヶ月はGoToトラベルやGoToイート等で外出を促されていました。現在も殆どの地域で継続されています。高額のクーポンが付与される制度であり、「使わなければ損、外出しなければ損」という雰囲気を作り出しています。
大阪府はブレーキを踏み込もうとしていますが、政府や他の殆どの地域は全力でアクセルを踏んでいます。どうすれば良いか分からず、自然とコロナ禍以前の生活へ戻った方が専らなのではないでしょうか。
ニュース等で報じられる危機的状況と街中の賑わいのギャップ、私自身も戸惑っています。大阪府の感染者数は減少に転じても、高止まりの状態で年を越すのではないでしょうか。GoTo関係のクーポンは全く使っていません。