平成26年4月に開設する予定の認可保育所のおよそ半分を「株式会社立」が占めています。
大阪市で株式会社が運営する認可保育所が開設されるのは初めての事です。
と言うわけで、馴染みのない「株式会社立保育所」について取り上げ、個別の運営法人の運営実績等を検討していきます。

1.「株式会社立保育所」とは

大阪市内の認可保育所の設置主体は社会福祉法人(292)・大阪市(84)・学校法人(10)・財団法人(8)・宗教法人(8)となっています(平成25年4月1日現在)。
ここに新たに「株式会社」が登場します。
以前は通達によって経営主体が自治体や社会福祉法人等に限られていた歴史がありますが、規制緩和等によって株式会社立も認められる様になりました。
しかし、多くの自治体では要綱等によって株式会社立の保育所の参入を排除し続けてきました。
待機児童問題の深刻化や橋下市長の就任により大阪市はこれまでの方針を転換し、株式会社立保育所の開設も認める事となりました。

全国的に見ると、東日本では株式会社立保育所の参入を認めている自治体が増えている一方、西日本では対応が分かれています(資料)。
株式会社立保育所はその名の通り、「保育所の運営を株式会社が行う」ものです。
それ以外は市立や社福法人立等の既存の保育所と何ら変わりません。
保育士の配置基準・保育所の面積基準等はいずれも同一です。

2.「株式会社立保育所」の設置・運営主体
審査の結果、様々な株式会社立保育所の設置が認められました。
各株式会社には様々な沿革・個性・主事業があり、既に行っている育児関連事業にも大きな違いがあります。
それぞれの株式会社の既事業等を考察することにより、来年開設される認可保育所の姿を想像してみます。

株式会社プロケア(北区同心一丁目)
資格試験対策の大手予備校、東京リーガルマインド(LEC)の子会社です。
認可保育所の運営は1園のみですが、横浜保育室(横浜市独自基準の保育室)・東京都認証保育所(東京都独自基準の保育所)や学童クラブ等、幅広い児童向け事業を手がけています。
大手という安心感があります。
新設園の担当窓口は恐らく大阪支社(大阪市北区茶屋町1-27 ABC-MART梅田ビル)でしょう。

株式会社クオリス(北区大淀中三丁目)
介護事業を中心とし、医療福祉や保育事業も手がけています。
横浜市内で2園の認可保育所・横浜保育室を1室運営し、また大阪市内やその近郊で数多くのケアセンターを設置して居宅介護支援・訪問介護サービスを行っています。
本社が生野区にあり、大阪特有の事情や風土等に理解が深そうです。

株式会社セリオ(都島区友淵二丁目)
人材派遣業・職業紹介がメインです。
認可保育所の運営実績はありませんが、茨木市や西宮市で学童保育事業(トレジャーキッズクラブ)を行っています。
学童保育向けのノウハウ等を認可保育所での教育に活用するのではないでしょうか。

株式会社ブロッサム(都島区善源寺一丁目・浪速区元町三丁目)
保育所や託児所事業をメインとしています。
認可保育所の運営実績はありませんが、「さくらさくほいくえん」として東京(認証保育所)・埼玉(家庭保育室)・豊中(認可外施設)を開設しています。
教育方針や園の特徴を知りたい場合は、豊中市のりょくちさくらさくほいくえんを見学するのが良いでしょう。

株式会社日本保育サービス(都島区内代一丁目・西区南堀江一丁目)
JPホールディングス(東証一部上場)の中核子会社です。
業界最大手という安心感があり、スケールメリットも感じられそうです。
首都圏を中心に100カ所異常の保育園と45カ所以上の学童クラブ・児童館を運営しています。
八尾市久宝寺駅前にアスク久宝寺駅前保育園を開設しており、新設園の内装や教育方針は準拠するのでしょう。

アートチャイルドケア(東淀川区豊里四丁目)
引越大手、アートコーポレーションの子会社です。
病院内保育所や事業所内保育所から始まり、加えて現在は多数の認可保育所・認証保育所等を運営しています。
私が利用した事もある、甲子園球場内託児施設「甲子園キッズルーム」の運営も行っています。
様々な保育事業を営んでいる事から、これらのノウハウを活かした保育が期待できそうです。

流石は営利企業たる株式会社といいますか、他法人が設立している保育所ホームページと比較して情報量が多く、顧客に利用を訴えかけているのが伝わってきました。
認可外保育施設から始まった会社が多く、自治体ではなく利用者の側を向き続けているのが一因でしょう。
一方、大阪市立保育所のホームページが見あたらないのには閉口しました。

株式会社立保育所のホームページに共通しているのは「保育士急募」の文字でした。
保育士不足は深刻な様子です。

新設園の保育士は、同グループの既存園からの異動者と新規採用者が主となるでしょう。
株式会社立以外の新設園であっても共通する事柄ですが、「組織が発足した直後のチームワーク不足による事故」は心配です。