平成29年度予算によって幼児教育無償化が4歳児にも拡大されました。幼稚園・保育所等の保育料に関する大阪市ウェブサイトが更新され、新しい保育料表が掲載されています。
保育料は父母の市民税所得割額の合計から算出
原則として保育料は応能負担によって定められています。すなわち「保護者等(原則として父母)の住民税(市民税)所得割の合計額」から自動的に決定されます。
保育所・認定こども園(保育認定)・地域型保育事業の保育料
まずは保育所・認定こども園(保育認定)・地域型保育事業の保育料(以下「保育所等」とします。)から見ていきます。これらの施設の保育料(標準時間)は「3歳未満児は厳しい応能負担、3歳児は応能負担、4-5歳児は教育無償・保育有償」となっています。
3歳未満児(0-2歳児)の保育料は、急激な上昇カーブを描いています。生活保護世帯等は0円ですが、所得割非課税世帯であっても月額8,100円(上限)とされています。
所得割が課税される世帯となると月額2-3万円、中高所得世帯となると更に上がり、上限額は70,600円とされています。低年齢児童、特に0歳児保育には多くの保育士が必要となり、運営経費も高額となっています。ストレートに反映させたものと言えるでしょう。
高所得世帯といえども、月額7万円の保育料は負担となります。多くの認可外保育施設の保育料と同水準です。
一方、3歳児の保育料はやや様子が異なります。中低所得世帯の保育料は3歳未満児と大きな違いはありません。しかし、中所得世帯は3歳未満児より安く、高所得世帯は半分強の水準に抑えられています。
4-5歳児の保育料は教育部分が無償、保育部分が有償とされています。ほぼ全ての所得階層で3歳児保育料の半分弱の水準となっています。
保育所等の保育料の負担感は年齢によって大きく異なります。0-2歳児は応能負担の傾斜が厳しくて中高所得世帯の負担感が強いです。が、3-5歳児は傾斜が非常に緩やかとなり、中高所得世帯の負担感が大きく軽減されています。
なお、この様な歪な保育料表による矛盾も生じています。例えば高所得世帯が0歳児1人を通わせた場合の保育料(70,600円)より、同所得の世帯が4歳児1人・0歳児1人を通わせた場合の保育料(49,000円)の方が安いという現象が生じています。
明らかに不公平です。
市立幼稚園・私立幼稚園(新制度移行園)・認定こども園(教育認定)の保育料
次に大阪市立幼稚園(全園)・認定こども園(1号認定、全園)・私立幼稚園(新制度移行園)(以下「幼稚園等」とします。)を見ていきます。これらの施設を利用する場合の保育料は「3歳児は応能負担、4-5歳児は無償」となっています。
3歳児の幼稚園等保育料は月額0円(生活保護・残留孤児等)から22,200円(市民税536,000円以上)と定められています。住民税が77,101円(第10階層)を越えると、保育料の上昇カーブが急になだらかになっています。
4-5歳児保育料無償化も含めると、高所得世帯に優しい、低所得世帯はやや厳しい、中所得世帯は厳しい設定だと感じられます。
私立幼稚園(旧制度)の保育料
最後は新制度に移行していない私立幼稚園の保育料です。保育料・入園料等は全て各幼稚園が独自に定めています。
代わりに「私立幼稚園就園奨励費」が各世帯へ補助されています。子どもの数・世帯所得等によって補助額(最低10,500円、上限308,000円)が定められています。
但し、補助されるのはあくまで実際に要した部分のみです。差額を家計の足しにはできません。
教育費無償化により、5歳児への就園奨励費は所得に関係なく「一律308,000円」とされました。所得に関係なく補助額が一定額となり、中高所得世帯への経済的効果が非常に大きい仕組みとなりました。
平成29年度からは4歳児にも拡大されます。4歳児の就園奨励費(限度額)も一律308,000円となります。すなわち「3歳児は応能負担、4-5歳児は定額負担」となりました。
4-5歳児教育費無償化の恩恵は中高所得世帯へ集中
吉村市長肝いり政策の一つが「教育費無償化」です。平成29年度からは4-5歳児が対象となり、投入予算額も50億円を超える見通しです。
何かとお金が掛かる子育て世帯の経済的負担を軽減させる政策は素直に歓迎します。しかし、その効果は低所得世帯は薄く、中高所得世帯に集中しています。
簡単な話です。所得によって急激な傾斜が掛かっていた教育費相当部分の保育料(就園奨励費による実質負担部分を含む)を無償化し、負担感が強かった中高所得世帯ほど保育料が軽減された為です。
反面、低所得世帯の負担感は従来と大きな違いはありません。保育料が従来から極めて低く抑えられており、更に低くなっても絶対額に大きな差はありません。
では、中高所得世帯は保育料の差額をどうしているのでしょうか。聞く話によると、「習い事」に通わせている家庭が増えている噂が飛んできました。
子どもの習い事と言えば古くは水泳・ピアノ・そろばん、最近はピアノ・英会話・ダンス・スポーツスクール・公文等、多種多様な教室が存在しています。
こうした家庭外での習い事を通じて、子どもが成長していくのは歓迎すべき事です。しかし、こうした習い事に通わせる余力がない・考えがない低所得世帯との差は、無償化施策によって開く一方です。
大阪市の教育はどこへ?
大阪市は今後、特に経済的にあまり恵まれない子どもの教育とどの様に向き合っていくのでしょうか。
民間に任せるやり方自体は否定しません。しかし、教育における公的責任が後退し、低所得世帯が置き去りにされかねない現状に対し、一抹の不安は感じます。
しかし、福祉施策に重点を置きすぎた結果、中高所得世帯が続々と市外へ転出してしまった過去もあります。タワーマンションブームで回帰しているとは言え、今後の見通しは不透明です。
どこでバランスを取るかが非常に難しいと言えそうです。
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