1.保育士や友人達との関係性や保育の継続性が失われる

保育所へ入所した児童は、毎日の保育を通じて新しい環境へと慣れていくでしょう。
やさしい保育士先生や気の合うお友達との触れ合いを通じ、新しい世界を発見していきます。

しかし、母親の育児休業によって一時退園させられた場合、これまで培ってきた関係性が失われてしまいます。
また、保育士が日々考えて実施している保育が継続されなくなり、子供へ与える影響は少なくないでしょう。

2.再入園が保証されていない

仮に一時退園させられた場合であっても、育児休業からの復職と同時に同じ保育園へ再入園できるのであれば、まだ納得できる方もいる事でしょう。
今回の措置を踏まえ、所沢市では育児休業明けと同時に入園を希望する場合は利用調整指数に100点を加算するとしています。
平成27年度 利用調整指数表の考え方についてでは15点の加算とされており、今回の措置の導入と同時に加算点を大幅に増加したのでしょう。
では、確実に再入園できるのでしょうか。

所沢市での保育所等への利用調整は、保育を必要とする事由による「基本指数」と家庭状況・保育先等による「利用指数」の合計点によって行われています(詳細は平成27年度 利用調整指数表の考え方について)。
主な指数は下記の通りです。

【基本指数】
1日8時間以上の就労が常態:27点~34点
出産:20点
保護者が1ヶ月入院:35点~38点
同居親族等の介護:30点~33点
虐待・DV:120点
ひとり親:50点

【調整指数】
兄弟姉妹同一園への転園希望:6点
育休取得によって一時退園した児童と出生児が育休明けに入園を希望:15点(平成27年4月から100点)
混合保育の対象児童:120点
認可外施設を週5日以上常時利用:7点
地域型保育事業が連携施設を希望:100点
乳児保育園から系列の幼児保育園を希望:100点
家庭保育室からの卒室児:100点

利用調整制度や点数を見る限り、再入園できる可能性は決して高くありません。
確かに100点の加算は大きいです。
しかし、地域型保育事業から連携施設を希望する場合や家庭保育室からの卒室児等であっても同じ100点が加算されます。
また、基本指数は就労時間等によって細かく区切られており、小さな点数差が発生しやすい利用調整となっています。

更に根本的な問題として、そもそも育児休業明けに入園を希望するクラスに空き定員が無ければ入所選考そのものが行われないでしょう。
4月復職ならともかく、それ以外の時期であれば空き定員は殆どないのではないでしょうか。

3.唐突な方針発表

最も大きな非難を集めている点かもしれません。
所沢市の保育園の情報交換が行われている掲示板によると、今回の措置が公表されたのは今年3月という差し迫った時期だった様子です。

一方、所沢市が昨年10月に配布した幼稚園・保育所等の入園のしおりにおいて、今回の措置を示唆する文章が掲載されています。

● 出産に伴う在園児(兄姉)の取扱いについて
◆現在所沢市においても育児休業取得中の保育の継続について一定の条件下においては認めておりますが、所沢市の待機児童・保育状況を考える上では、在園管理と並び大きな課題だと考えております。
従いまして、育児休業取得中の保育の継続について検討を行っていく場合もあります。
尚、新制度においても、(1)次年度に小学校入学を控えるなど、子どもの発達上環境の変化に留意する必要がある場合、(2)保護者の健康状態やその子どもの発達上環境の変化が好ましくないと考えられる場合など、市町村が児童福祉の観点から必要と認める時は、継続入所が可能となる場合があります。

入園のしおり

確かに「育児休業取得中の保育の継続について検討を行っていく場合もあります」という記載はありますが、ここから「平成27年4月から育児休業取得中の0-2歳児クラス在園児は原則として一時退園とする制度を導入する」とは全く読み取れません。

既に上の子が在園している場合、第2子以降の妊娠・出産は上の子との年齢差や育児休業取得の時期など、様々な要素が考慮されるでしょう。
「育児休業を取得しても従来どおりに保育園へ登園できる」というのも大きな要素の一つです。
心配になって妊娠中に保育所・市役所保育課やママ友等に訊ねた方も少なくないでしょう。

従来の取扱いをひっくり返された場合、妊娠中の世帯は途方に暮れます。
妊娠前ならともかく、妊娠中はどうする事も出来ません。
仮にこうした措置は、少なくとも妊娠中の母親が不利益を受けない十分な周知期間を経た後に導入すべきでしょう。

一方、今回の措置が必ずしも無茶苦茶とは言い難い側面もあります。

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